開催~いざ王都へ~
久しぶりの投稿です。
今日からまた更新再開しますのでよろしくお願いします。
森の山奥。
周りは無数の木で囲まれており、人間界から離れた場所なのだと感じさせる。
そこでオレと師匠は向かい合って座っていた。
「今日でお主の修行は完了したものとする。お主はこの1年と6ヶ月で間違いなくこの国1番の戦士となった」
「そうでないと困りますよ......地獄のような修行の日々だったんですから......」
思い出したくもないほど激しい修行だった。
毎日、日が明ける前に起こされて準備運動と称し腹筋、腕立て伏せをそれぞれ1000回、終わったら剣を使って素振り2000回。
それを朝食までに終わらさなければ鉄拳が飛んでくる。
朝食を食べたら昼まで色々な武器の使用法や弱点について体で覚えろとばかりに直接叩き込まれる。
昼食を食べたら深夜まで師匠とひたすら模擬戦。
それが終わって水浴びと夜食を食べてやっと就寝できる。
それを毎日続けていたのだ。
師匠は鬼だと思ったね。
よくこの1年半耐えたと自分を褒めてやりたい。
「ふん。あの程度はこなせなければ最強になどなれん」
確かに修行のおかげで1年前とは比較にならないほど強くなったことがハッキリと分かる。
オレは師匠のおかげでこの世界のあらゆる武器の達人になった。
剣、弓は言うに及ばず槍、メイス、ハンマーなど、ありとあらゆる武器を自由自在に扱える。
教え方はめちゃくちゃだったが師匠には本当に感謝している。
「ありがとうごさいます師匠。あなたのおかげでオレは1人では到達できなかった領域まで強くなれました」
「あまり恩を感じる必要はない。何故ならこれも運命なのだ」
「運命?」
「そうだ。お主を弟子にしたのはそう予言されたのだ」
「予言......ですか?」
「ああ。数百年前にある賢者にそう言われてな。私自身、長年忘れていたのだがセフィリアと出会ったことでこの予言を思い出した。だからお主を弟子に取ろうと思ったのだ」
おかしい。
オレがこの世界に来ることは数百年前に分かっていた?
そんなこと知ってるやつなんていないはずだ。
せいぜいセフィーより格上の神くらいだろう。
セフィーはこのことを知らないはずだ。
オレも聞いたことがない。
その予言の賢者とは一体......。
何かきな臭いものを感じる。
「その賢者って一体誰ですか?」
「......悪いがそのことについては教えることができない」
「教えないじゃなくできないですか......?」
「魔法をかけられていてな。言えるのはその者はまだ生きているということだけだ」
「そうですか......」
かなり気になるがその賢者については後回しにしよう。
それに賢者については少し心当たりがある。
脳裏に一瞬黒衣の男を思い浮かべる。
「そのことはいいだろう。今はあまり関係のないことだ。それよりこれからのことだ」
「そうですね。これからオレとセフィーは王都に向かいます。そこで開かれている武芸大会に参加して優勝。王に戦士階級に加えてもらうようお願いします」
目的は忘れていない。
世界を平和にするためにはまず戦うための身分を手に入れる。
そして戦争に参加して争っている国全てを統一にすればセフィーの命は助かる。
オレの力で戦争を終わらせるなんて楽観的かもしれないが修行でそれだけ強くなった自信がある。
今なら1人で万の大軍を相手して勝てる自信だってあるのだ。
「その武芸大会だが、実は開催は今日だ」
「......は?」
オレの思考が停止する。
師匠が何を言っているのか分からない。
「だから、開催は今日だ」
「そんなに軽く2度も言わないでください! てことは大会に間に合わないじゃないですか!?」
しょっぱなから崖っぷちだった。
戦争がどうとか言う以前にその土俵にすら立てれない。
オレは絶望する。
「安心しろ。転移の魔法で王都の前まで飛ばしてやる」
「転移の魔法? なんだぁ......。そんな魔法があるなら驚かさないでくださいよ......。」
「お主の絶望した顔が見てみたくてな。なかなか愉快だったぞ」
修行の時から思ってたがこの爺さんかなりドSだろ。
道理で模擬戦中あんなに笑顔で攻撃してきたわけだ。
「なに、まだ時間はたっぷりある。送る前にお主に渡したい物があってな」
「渡したい物?」
なんだろう?
このドS爺から渡される物なんてろくな物じゃなさそうだが。
「修行を終えたお主に武具を授けよう。それもただの武具じゃない。世界最高の鍛冶師ヴリシャが造った3つの魔法武具だ」
「ま、魔法武具ですか!?」
これは嬉しいサプライズ!
魔法武具があれば百人力だ!
魔法武具の強力さはバンデッドとの戦いで良く理解している。
敵が使うととても太刀打ちできなく、自分が使うと複数相手でも難なく倒せた強力な武器。
それを3つももらえるとは。
師匠の手が光る。
すると何も持っていなかった師匠の手に金色の通常より大きい弓が現れた。
確かこれも転移の魔法だったか。
修行中も何度か武器を出現させてた。
「この弓は雷魔弓『ヴァイシュナヴァ』だ。雷を操る雷竜ヴァイシュナの角を削って造られた。この弓は常に雷を貯めており、弓に矢をつがえるとその矢は雷の属性を纏う。矢は疾風のごとき速さで相手を刺し貫き、感電させる」
師匠がその黄金の弓をオレに差し出す。
オレはその弓を受け取った。
次に現れたのは真っ白な長い刀身と柄に黒い宝玉が嵌め込まれてある長剣だった。
「名前は黒魔剣『アスラ』。刀身は世界一堅いと言われる鉱石オリハルコンを丹念に精製して造った。この剣はヴリシャから切れないものはないとまで言わせるほどの切れ味を持つ。そして柄には暗黒竜ヴォーティガンの魔臓を精製して宝玉にした物を嵌め込んでいる。この宝玉から常に黒色の魔力が溢れており、『アスラ』の名を唱えることで魔力が刀身に流れ、暗黒の衝撃波を放つことができる。ただし1度撃つと魔力が切れるので再度魔力が溜まるのに時間がかかる。そのため撃つタイミングはよくよく考えよ」
師匠は剣を鞘に入れてオレに渡す。
鞘にはベルトがあり肩にかけれるようになっている。
刀身が長い剣だから持ち運びがしやすいようにしているのだろう。
「最後は身を守るための鎧と兜だ」
師匠がそう言うとオレの目の前に真っ黒な全身を覆う鎧とフルフェイス型の兜が現れた。
「その鎧と兜はヴォーティガンの鱗で出来ており、魔法か魔力が宿った武器以外では傷つけることはできない。それを着ている限りお主は無敵になる」
師匠はオレにこれらの強大な魔法武具を授けてくれた。
鬼に金棒とはこのことだ。
この装備を使えば負けるのは万に1つもない。
師匠の好意に甘え、全てを譲り受ける。
「師匠、ありがとうございます。これだけの魔法武具があれば百人力です」
「そして武具ではないが、もう1つ便利な物を与えよう」
師匠は小さい袋を取り出した。
見る限りではこれといって特徴がないが。
「この袋の中には私の転移の魔法が込めてある。中は異次元と繋がっており物の大きさ関係なくなんでも収納することが可能だ。今渡した武具は目立つだろう? だからこれを渡しておく。取り出す時は取り出したい物を思い浮かべるだけでいい」
「では、ありがたく受け取ります」
師匠から袋を受け取る。
オレはさっそく今渡された剣、弓、鎧、兜を袋に入れてみる。
するとどうみても入らない大きさなのに全て収まった。
かなり便利そうだ!
これがあればなんでも持ち運べる。
「私から渡す物は以上だ。では準備ができたら声をかけろ。王都の前まで送ってやる」
「何から何まで、師匠には感謝しかありません」
師匠に感謝の意を示すために頭を下げる。
その後、寝床である洞窟にいるセフィーを呼びに行くことにした。
◆
セフィーも今日が大会開催だと知らず驚いていたが転移の魔法は知っていたのかオレほど驚かなかった。
もう少し慌てた姿を見てみたかったんだが。
「では師匠。お願いします」
「あい分かった」
師匠が転移させるためかオレ達の体に触れる。
「ありがとうレックス。あなたのおかげで悠斗も強くなりましたし、私も魔法の指導をしてくれたおかげである程度戦えるようになりました」
「......セフィリア。これからが特に大変だろうがユートを支えてやれ。ユートを助けられるのはセフィリアしかいないのだからな」
「はい、分かっています」
「それならよい。2人とも、達者でな」
「師匠もお元気で」
そうして別れを済ましたオレ達は光に包まれた。
◆
オレ達は気がついたら森の外に出ていた。
オレ達がいる場所の近くにはたくさんの人がいる。
そして目の前には巨大な城壁がそびえ立っていた。
ここが王都『アトランティス』なのだろう。
オレとセフィーは王都に繋がっている橋を渡ることにする。
この王都の下には綺麗に清んだ湖があり、王都に渡るには架けられている1本の橋を渡る必要がある。
湖の上に立つ都というのはなかなかに乙なものだ。
『水の都』と呼ばれるのも納得ができる美しさだった。
セフィーも目を奪われているのか、ボーッとしながら歩いている。
美しい景色を眺めながら橋を渡っていると城壁の近くにまで来た。
城壁には1つのトンネルがあり、王都に入るにはそこを通るしかないようだ。
オレ達はその城壁を通過する。
そして『セブヒルム国』の王都『アトランティス』に足を踏み入れた。
王都の景色が目に飛び込んでくる。
見渡すだけでも家がたくさんあり、店もいたるところにあってその店員が大声で客引きしている。
王都は多くの人で賑わっており、馬車があちこち走っている。
「ここからが本当の戦いが始まるんだな」
「はい。ここから世界を救うための戦いが始まります」
オレが転生した目的は女神を救うためにこの世界を平和にすること。
今まではそれについて何の進展もなかったが今日初めて前に進める。
オレは高揚感で思わず拳を握る。
そして城壁を抜けた先に白い旗が掲げられている。
その旗には文字が記されていた。
『第43回アトランティス武芸大会開催!』




