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20/22

修行~新たな師匠~

 

 あの戦いから2日経った。

 今は早朝だ。

 固くなった体を体操で解していた。

 オレは今もアリーサさんの家でお世話になっている。

 まだエリリク村に留まっているのは村の人に歓迎されているのもそうだが、オレはここである人物を待っているのだ。




 ◆




 あの後、オレはセフィーに治療してもらい、村に入った。

 村のみんなはずっと起きていて戦いの準備をしていたようだ。

 オレはみんなにバンデッドを倒して戦う必要がもうないことを言った。

 みんなはすぐに信じてはくれなかったがオレの必死の説得とアリーサさんが助力してくれたおかげでとりあえず戦うのを止めさせることはできた。


 アリーサさんが何故説得に協力してくれたのかを聞くと、


「ユートさんは無駄な嘘は言わないお方ですから」


 と笑顔で即答された。

 その妙に信頼されている答えにオレは苦笑する。


 結局ダークエルフとは話し合うという方向でまとまった。

 ダークエルフも利用されただけだと説得したのが効いたのだろうか。

 だがまだ信用できないからと、仲介人としてオレを指名した。

 だからオレもアリーサさん、ラバックさんと共にダークエルフの住居に向かうことにした。


 ダークエルフの住居につくと代表として魔剣を腰に差したケイが出てきた。

 聞くところによるとケイはバンデッドの支配に唯一抗った英雄として迎えられたらしい。

 おかげで周りから羨望の眼差しを受け肩が凝るとか。

 このまま新しい長になりそうだ、とケイに愚痴られた。


 アリーサさんとケイの話は順調に進み、これからお互い助けあって生きていくということになった。

 アリーサさんとケイの友好の握手がライトエルフとダークエルフの関係を一歩前に進ませたことを実感する。

 この結果にはオレも満足だった。


 盗賊団の死体は全員ちゃんと埋葬するらしい。

 オレもその方が良いと思った。

 悪人でも亡骸を放置するのは哀れだ。

 オレもそれを手伝うことを約束した。

 その日のダークエルフとの会談はそれで終わり、オレ達は村に帰った。




 翌日。


 オレは約束通り朝からダークエルフと一緒に盗賊団を埋葬する手伝いをした。

 友好の証としてラバックさんや数人の男のエリリク村の人が手伝ってくれている。

 中には怪我を負わされたジョーイもいた。

 ケイとは一触即発だったがオレが仲裁したこともあり、ジョーイは怪我のことは水に流すと言ってくれた。


 洞窟の中には食料だけじゃなく大量の金銀財宝が見つかった。

 恐らくやつらが王都から奪ってきた物だろう。

 これらは変ないざこざを起こらせないためにライトエルフとダークエルフで平等に分配した。

 オレにも幾分か渡してきたが断らせてもらった。

 別に財宝には興味ないし持ってても邪魔だと思ったからだ。

 ケイはオレのことを無欲だと言っていたがそんなことはないと思う。

 そう言うと笑われたが。


 盗賊団の死体は土の中に埋葬される。

 そしてダークエルフ達の鎮魂歌が歌われる。

 なんだか悲しい歌だった。

 この鎮魂歌は死んだ魂が蘇らないように行われるダークエルフ特有の風習らしい。

 オレも自分で殺めた相手なので歌を教えてもらい、一緒に鎮魂歌を歌う。

 彼らの魂がちゃんと輪廻転生できるように。


 今日はエリリク村で宴をやるそうだ。

 ダークエルフ達と仲良くなったラバックさんはダークエルフみんなを誘っていた。

 ケイはダークエルフを代表してその誘いを受けていた。

 ケイは柄じゃないと言っていたが、こうしてみるとリーダーにぴったりだと思う。


 オレとエリリクの人達は一旦村に帰って宴の準備を始めた。

 女は料理を、男は椅子などを運ぶ運搬作業を。

 みんなイキイキとしていた。

 この光景を見ると争いを止めて本当に良かったと感じる。


 ダークエルフ達は夕方にエリリク村に到着した。

 アリーサさんが代表となってみんなを迎い入れた。

 まだ怖がっていた人もいたが話しているうちにどんどんダークエルフに対抗がなくなっていた。


 そして、宴が始まった。


 大きな焚き火を中心にみんなで酒を飲んで料理を食べて楽しんでいる。

 オレはジョーイとケイに絡まれて酒を無理やり飲まされそうになった。

 まだ未成年だから必死に抵抗したが。


 セフィーはというとライトエルフとダークエルフの子供に絡まれて遊ばれていた。

 若干涙目だった。

 周りの大人からは凄く微笑ましい目で見られていたが。

 この情けない姿を見ると本当に女神なのか疑いたくなる。

 子供にすら勝てない女神......。


 宴も最後になるとみんな踊り始めた。

 カップル同士で踊る人もいればふざけて男同士で踊る人もいた。

 ライトエルフとダークエルフが一緒に踊っているのは、これから互いの種族は助け合って生きていくだろうということを予感させてオレは嬉しくなる。


 困ったのはアリーサさんがオレに踊りの誘いをしてきたことだ。

 そのせいでケイやジョーイは口笛を吹いて茶化すし、アイシャは怒ってオレに突っかかってくるし、ラバックさんは泣いて周りの人に慰められるし、セフィーにはまた睨まれるし。

 かなりカオスな状況になっていた。


 結局断るのも失礼だと考えてアリーサさんとは踊った。

 踊っている最中に聞いたのだがアリーサさんはまだ27歳だという。

 つまり12歳でアイシャを産んだとか。

 元現代人のオレの価値観では完全にアウトだと思った。


 踊っている最中アリーサさんはやたらアプローチをかけてきた。

 正直アリーサさんがこんなに積極的な女性だとは思わなかった。

 精神年齢は30歳なオレにとってアリーサさんは普通にストライクゾーンなので耐えるのも必死だ。

 セフィーのプレッシャーがなければ誘惑に負けていたかも。


 最後はセフィーと踊った。

 身長差があるのでかなり不細工な踊りだったが、オレは静かに踊りを楽しんだ。

 セフィーも楽しんでくれたと思う。

 無邪気に笑ってステップを踏んでいたし。

 でも時々オレの足を踏むのはやめてほしかった。

 セフィーはアリーサさんと違って踊りは上手くないんだな、と言ったら思いきり踏まれた。

 解せぬ。




 こうして宴も終わり、片付けもしてダークエルフたちはかえっていった。

 それを見送った後、オレ達は自分の家に帰り眠りについた。




 ◆




 こうしてオレは朝早く起きて体を解していた。

 まだ誰も目覚めていない時間だ。

 なんとなく今日は早く起きようと思ったのだ。

 ()()だが、あの男がそろそろ帰ってくる。

 オレは体を解した後、立って入口のところで待っていると奥から人影が見えた。


 その人物はオレと以前戦った、僧侶のレックスだった。


「お主は──」

「おはようございます。そろそろ来ると思ってました」

「ほう......。何故だ?」

「直感......ですかね」


 そのオレの言葉にレックスは笑う。


「そうか。直感か。なるほどなるほど。で、お主は私に何用だ?」


 これから言うことは相手にとっては意外かもしれない。

 なんせ1度殺されかけた相手に頼むことではないからだ。

 オレは息を吸う。


「まず以前勝手に供物を食べたことを謝ります。その後、治療してくれてありがとうございます。......そして、ここからが本題なのですが」


 レックスが顎で続きを促す。


「オレを────弟子にしてください!」


 オレはジャパニーズDOGEZAをする。

 ダグザ、レックス、バンデッドと戦って自分がまだまだなのだとかなり痛感した。

 このままでは世界を救うどころか最強の男になることさえ不可能だ。

 だからオレは身近にいて、且つオレが知る限り圧倒的な強さを持つレックスに師匠になってもらおうと思ったのだ。


「ほう。私に弟子入りを頼むか」


 土下座は無視された。

 少し悲しいが文化が伝わらないなら仕方ない。

 それで返答は────!


「まあ、よかろう。弟子入りを認めてやる」


 答えはイエスだった!

 正直、心証はかなり良くないだろうから賭けだったのだ。

 受けてくれたのは意外だ。


「受けてくれるんですか! やったぁ~!」


 これからはレックス師匠と呼ぼう!


「ただし条件がある」


 え?

 条件とはなんだろう。

 叶えられるなら叶えたいが。


「弟子入りするならセフィリアも一緒だ。でないと弟子入りは許可しない」


 セフィーの弟子入りが条件?

 なんだかよく分からない条件を出してきた。

 ......。

 まさか、師匠って......。


「あ、あの師匠。つかぬことをお聞きしますが、まさか師匠はロリコンなのですか?」

「ろりこん......? どういう意味か知らんが恐らくお前の考えていることとは違う。セフィリアの魔法もまだまだ未熟だから手解きをしてやろうと思ったまでよ。後、まだ師匠じゃない」


 良かった......!

 師匠がロリコンじゃなくて......!


「そういうことなら説得してきます! 師匠は待っていてください!」


 オレは全速力でアリーサさんの家に向かう。




 ◆




 セフィーを起こして師匠の元に連れてくる。

 セフィーはまだ眠たいみたいで少し機嫌が悪い。


「なんですか。私に用って」

「ユートが私に弟子入りを懇願してきたからな。お主も弟子入りすることを条件に弟子入りを受けることにしたのだ」

「弟子入りって......。私は構わないのですがユートは時間がないのですよ?」


 この言葉にオレは疑問を浮かべる。


「時間ならたっぷりあるだろ?」

「随分前に戦士階級になる方法があると言いましたよね?」

「そういえばそんなことも言ってたような......」

「今その方法を教えましょう。この国では一定の期間で王都で武芸大会が開かれるのです。優勝者には王に願い事を1つ叶えてもらえるのです。そこでユートは身分を隠して参加して、敵をバッタバッタ薙ぎ倒して王に『戦士階級の身分をくれ!』と願うのです!」


 オレは感心する。

 その方法なら確かに戦士階級に戻れるかもしれない。

 だがオレはある疑問に気がつく。


「それと時間がないって何の関係があるんだ?」

「その一定の期間というのが5年毎なのです。私が旅をしていた時に開かれていた大会の開催時期は8年前ですから、次は今から2年後に開かれます。だから修行期間も2年、王都まで旅をすることを考えると下手すると1年と少しかないのです」

「たった1年ちょっとだけ!?」


 たったそれだけで強くなれたとしても今から大きく成長できるとは思えなかった。

 本当に時間がなかった。

 オレは諦めて弟子になるのを諦めるか考える。

 すると。


「時間など心配する必要はない」


 オレとセフィーが同時に「え?」と言う。

 師匠が獣のような笑みでこう語る。


「2年。いや、1年あれば十分だ。それだけあればお前をこの国、いや世界最強の戦士に育てることすら可能だ」

「本当ですか!?」

「私を誰だと思っとる。お前に戦士の技術全てを授けてやろう」


 セフィーは半信半疑の目で師匠を見つめてる。

 だが師匠がここまで言うのならオレは師匠についていくことにした。


「では早速準備をしろ。修行はここより更に深い森の奥でやる。これからは森での過酷な修行が待っていると思え」

「はい! 分かりました師匠!」

「なんだか悠斗のキャラ変わってません......?」


 オレはセフィーを連れてアリーサさんの家に戻る。

 これからのことを考えるとワクワクが止まらなかった。




 ◆




 オレとセフィーは必要なものを準備した。

 オレが村を出ていくと聞き、村のみんなが集まってくれた。

 みんな口々に別れを惜しむ言葉をする。

 アリーサさんが前に出る。


「ユートさん、短い間でしたが本当にありがとうございます。あなたにかける言葉はそれ以外見つかりません。もしまたこちらに寄ることがあったら歓迎しますので是非立ち寄ってください。......私も、待っていますので」

「はい、アリーサさんもみんなも元気で。ケイやダークエルフのみんなにもよろしく言っておいてください」

「ええ。では、お元気で。エリリクの民は常にあなたのご健勝を祈っています」


 アリーサさんが話し終えるとアイシャが前に出て言った。


「あんたは気に食わなかったけど、争いを止めてくれたのは感謝するわ。だから......ありがとう、()()()


 驚いた。

 初めてアイシャから名前を呼ばれたのだ。

 オレもアイシャに笑顔で返す。


「オレもこの村での暮らしは楽しかったよ。だからありがとうな、アイシャ」


 アイシャはふんっと鼻を鳴らしてそっぽを向く。

 それは照れ隠しのようでなんだが可愛くてオレは笑った。


 そうして師匠とオレとセフィーはエリリクの村を後にした。




 ◆




「それにしても全員がエルフって不思議な村だったなぁ」


 オレはエリリクの村への感想を呟く。

 それに師匠が答えてくれた。


「単一種族だけの村は珍しいか?」

「ええまあ。オレの村はナチュラルが多かったですけどエルフもいましから」

「何も村だけではないぞ? 単一種族で構成された国だってあるのだ」

「そんな国もあるのですか?」


 オレは期待に胸を膨らませた。

 この世界についてはまだまだ知らないことも多い。

 時には無常だと思うこともあるが、この世界をオレは好きになっていた。

 全てが終わったらこの世界をセフィーと一緒に旅をするのもいいかもしれない。

 セフィーは嫌がりそうだが。


 オレはセフィーに笑いかける。

 セフィーはそんなオレを見て怪訝な顔をする。


「なんですか、急に笑ったりして」

「いーや、なんにも」

「? 変な人ですね。悠斗は」


 その言葉にオレはまた笑いだす。

 旅をするにもまだまだ先の話だ。

 とりあえず今は強くならないと、な。

 新たな決意をしてオレとセフィーは師匠に連れられて森の奥に入っていった。

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