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終息~ある男の終わり~

二章は今日中に終わらせるつもりです。

なのではやめに投稿しておきます。

 

「がはッ!」


 オレは背中の木にぶつかり殴られたような痛みを感じた。

 一瞬飛んだ意識はその痛みで回復した。

 全身が熱い。

 炎に飲み込まれ、その勢いで吹き飛んだらしい。

 あたりの木が炎で焼かれている。

 大きなダメージを受ける前に吹き飛んだおかげか火傷は少なかったのは幸いだった。


「ちっ、生き延びたか」


 バンデッドが不満そうな顔をしていた。

 一撃で殺すつもりだったのだろう。

 オレも死ぬかと思った。

 あれが以前ケイが言っていた奪ったという魔法武具か。

 その強力さにオレは冷や汗をかく。


「逃げろユート! そいつには敵わない!」

「だけど今バンデッドを倒さないと争いが止められなくなる!」

「馬鹿野郎! 勝てる相手じゃない! お前も魔剣の恐ろしさを肌で感じただろ!」


 確かにあの剣相手に勝つのは難しい。

 こちらは近づかないといけないのに相手は剣を振るだけで遠くから攻撃できるのだ。

 反則もいいところだろう。

 だが逃げるわけにはいかない。  


「ケイ、お前だけでも逃げろ」

「......お前は戦うのか?」

「ああ。オレは逃げない」

「くそっ! 勝手にしろ!」


 ケイは走って逃げていく。


「話してる途中なにもしなかったが待っててくれたのか?」

「ふん。気まぐれだ。あの程度の男が生き延びようとなにもできんからな。それよりお前を殺した後、どうするか考えている途中だ。その体を獣に食わせるか、それとも俺様に逆らったらどうなるかの見せしめとして首を晒すか。首を見せて絶望するあの女を犯すのもいいな。貴様はどれがいい?」


 その言葉にオレは怒りで震える。

 どうしようもない下衆だ。

 こいつだけは許せない。


「どれも御免だッ!」


 オレは一直線に走る。

 やつが刀身を赤くさせるのが見えた。

 オレは横にステップする。

 オレの横に炎の塊が飛んできた。

 それはオレの後ろの木にあたり爆発した。


「(炎の波だけじゃなく玉にもできるのかよッ! 出鱈目すぎるッ!)」


 魔法武具の強力さをあらためて実感する。

 こんな武器があったら普通の武器じゃ相手にならない。

 オレは必死にどうやったら近づくか考える。

 だが考える暇もなく炎の玉が次々飛んでくる。


「くっそッ!」


 1つの場所に留まらず必死に炎の玉を掻い潜る。

 あたりは火だらけだ。

 そこで1つ妙案が浮かぶ。


「おい! 火事になってもいいのか! お前の住居まで火が燃え移る可能性があるぞ!」


 これで炎で攻撃するのを控えてくれと願い、忠告する。


「他に移ればいいだけだ。たとえばライトエルフの村とかな!」


 相手は攻撃の手を止めてくれない。

 オレを舌打ちする。


「(これじゃじり貧だ。遠距離から撃ってくるなら弓で対抗するしかない!)」


 オレは弓矢を捨てた場所まで走ろうとする。

 しかし後ろから炎の波が押し寄せてきた。

 オレは慌てて木の影に隠れる。

 炎は木を燃やす。


「逃がすと思ったか! 貴様はここで死ね!」


 やつはオレをここから離れさせる気はないらしい。


 万事休すか──!


 そう思った直後、1本の矢が飛んできた。

 その矢はバンデッドの左目に刺さった。


「がああああああああああ!! 目があああああああああああ!!」


 バンデッドは痛みで悶えている。

 今がチャンス──!

 オレは全速力でバンデッドに近づく!


「ぐうっ! 貴様ァ!」


 バンデッドが慌てて刀身を赤く発光させ、炎を出そうとする。

 だがもう間合いに入っている。

 オレの方が一手速かった。

 オレの剣はバンデッドの剣とぶつかり、炎を出させなかった。


「ここまで近づけばもう炎を出す余裕はないな!」

「おのれクソガキがあああああああああああ!!」


 オレはバンデッドを倒そうと一心不乱に剣を振るう。

 左目の見えないバンデッドの死角に入り、体術も混ぜる。

 だが一向に押せない。

 むしろバンデッドが徐々に優勢になっている。

 オレの体にバンデッドの剣が掠める。


「舐めるなよ! 伊達に何十年も盗賊をやっていると思うな!」


 炎を出せなくてもバンデッドは強かった。

 戦闘技術はオレを上回っている。

 バンデッドの蹴りがオレの腹を抉る。

 オレは唾液を吐き出す。

 バンデッドが笑ってオレを切り裂こうと魔剣を振りかぶる。


 だがそこにまた邪魔が入る。

 矢がバンデッドの肩に刺さった。


 バンデッドに隙ができた!

 オレはすかさずバンデッドの腕を切り落とす──!

 バンデッドが悲鳴をあげる。

 オレは止めを刺そうと首に剣を振る。


「ぐ、くっそぉ!」

「待て!」


 だがバンデッドはそれを避けた。

 バンデッドは慌ててオレの目の前から逃げ出す。


「おい、やつを追うぞ!」


 ケイがこちらに走ってきた。


「やっぱりさっきの援護はケイだったか。逃げたんじゃなかったのか?」

「ふん、やつが逃げたと勘違いしたら油断すると思ったんだ。やつはナチュラルだ。視力の良いエルフじゃないと特定されない位置から攻撃したのさ」

「そうか。おかげで助かった。ケイがいなかったらやられていたよ」

「気にするな。それより見失う前に追うぞ」

「ああ。あいつを野放しにはできない」


 オレは切り落とした腕から三日月型の魔剣を奪い、逃走したバンデッドを追った。




 ◆




 バンデッドはダークエルフの住居とは全く別のところに向かった。

 バンデッドは大きな洞窟に入っていく。

 そこは明らかにやばい雰囲気が漂っていた。


「入るぞ」


 ケイが洞窟に入っていく。

 オレもそれに続く。

 中は真っ暗だった。


「暗いな......」

「これ松明代わりにできないか?」


 オレは先ほど奪った魔剣を見せる。

 確か赤く発光してたしいけるはずだ。


「魔剣発動の合言葉は『ヴォルカニック』だ。そうすれば赤くなる」

「よし。『ヴォルカニック』」


 すると赤く光り出した。


「後は自分の意思で炎を出すことも炎の形を変えることもできる」

「へー、便利だな」


 オレは魔剣を松明代わりにして洞窟を進む。

 どうやら一本道のようだ。

 少し進むと広い場所に出た。

 そこには大量の野菜や干し肉が置かれてあった。


「ここは......」

「まさかやつが食料を溜め込んでいたところか!?」


 どうやらここから食料を運んでいたらしい。

 オレは先に行く道を見つけた。


「まだ道があるみたいだ。バンデッドは恐らくこっちに向かった」

「くそっ! こんなところに食料を溜め込んでた洞窟があるとは!」


 道をどんどん進んでいくと更に広い場所に出る。

 その真ん中にバンデッドがいた。


「やっと見つけたぜ! もう逃げられないぞ!」


 ケイが弓を構える。

 だがバンデッドは追い詰められているはずなのに薄く笑っている。

 オレは警戒する。

 狡猾なバンデッドがこんなに簡単に諦めるとは思えない。


「のこのことここに誘き出されやがって。オレの左目と左腕の怨みだ。黒髭盗賊団の恐ろしさを思い知らせてやれ!」


 バンデッドの言葉を合図に周りが松明でどんどん照らされていく。

 そこには十数人の人間がいた。

 まさかずっとここに隠れていたのか!?


「さぁ、殺れ!」


 剣を持ってこちらに向かってくる。

 だがオレは笑みを浮かべる。


「おい、バンデッド」

「あん?」

「これなんだ?」


 オレは魔剣を見せる。

 それにバンデッドが驚愕する。


「そ、それは俺の──」

「炎魔剣『ヴォルカニック』! 敵を一掃しろ!」


 ヴォルカニックを横に凪ぎ払うと炎が波のように男達を飲み込んだ。

 男達は炎で吹き飛ばされる。

 それを数度続ける。

 そして生き残っているのはバンデッド1人になった。


「そ、そんな......」

「残念だったな。お前の負けだ」


 するとバンデッドは急に膝まずき泣きわめいた。


「許してくれぇ~! 今までのことは本気じゃなかったんだぁ~! 謝るから命だけは助けてぇ~!」

「お、おい」


 オレはその代わりようにびびる。

 その必死な様に殺すまでもないんじゃないか、と一瞬考える。

 だがこの男が改心するとは思えない。


 オレは少し悩んだが、誓い通りにバンデッドを殺すことにする。

 オレの覚悟が伝わったのか、ケイは何も言わず成り行きを見守ってくれた。


「ひっ! た、頼みます! どうか命だけは!」

「......駄目だ。お前を生かしたらまた同じことが起きるかもしれない。オレはお前を殺す」

「う、うわああああああああ!!」


 バンデッドが逃げ出そうとする。

 だがオレはそれより早く魔剣でバンデッドの首を切り裂いた。

 バンデッドの首が飛び、二度と喋ることはなかった。


「......お疲れ様。正直、見逃すと思ってたよ」

「......」

「ま、正解だったと思うぜ? バンデッドみたいな人間はまた同じことをやらかしてたさ。だから気に病む必要はない」

「ああ、わかってる」


 オレとケイはそうしてその場を後にした。

 こうしてバンデッドとの戦いに幕を閉じたのだった。




 ◆




 ケイがダークエルフ達にバンデッドはいなくなったことを話した。

 最初はみんな半信半疑だったが、オレが魔剣を見せると信じたようだ。

 みんな嬉しそうだった。

 ダークエルフ達はお礼がしたいと言ってきたが、オレはいち早く帰ってこのことを報告したかったのでやんわりと断った。


 ケイはダークエルフ達のところに残るらしい。

 炎魔剣ヴォルカニックは元々ダークエルフの物なのでケイに渡した。

 オレはケイに別れを告げてエリリクの村へ駆け足で戻る。

 戦いの疲労できつかったが、早くこのことを伝えたかったのだ。


 村の付近まで近づくと空は太陽が登り始めていた。

 オレは村の出入口に近づく。


 入口にはセフィーがいた。

 セフィーはオレの姿を見つけると安心したように微笑んだ。

 オレもそれに微笑み返す。


「約束は守ってくれましたね」

「ずっと待っててくれたのか?」

「あなたは必ず傷だらけで帰ってきますからね。無鉄砲なあなたには私が治療してあげないと駄目でしょう?」

「ははは。なら今回も傷だらけだから頼むよ」

「ええ、いいですとも。私はあなたのパートナーなのですから」


 オレとセフィーはお互いに歩み寄る。

 こうしてエルフ同士の戦いは終息を迎えたのだった。

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