多数戦~森林での戦い~
タイトルを変えました。
もうすぐ二章が終わるので、ストック作るためにまた投稿を三日ほど空けるかもしれません。
では。
森の奥まで入り、約束の場所につく。
暗闇の中あたりを見渡すと木に体を預けているケイがいた。
ケイもこちらに気づいて顔を上げる。
「来たか。なら早速──って、なんで疲れた顔してるんだ?」
「ちょっと、な」
アリーサさんとのキスしたところをセフィーに見られたが、必死に弁明したおかげでなんとか誤解は解けた。
誤解が解けてもセフィーは怒ってたけど。
なんであんなに怒ってたんだろう。
いや、今はそんなこと考えてる場合じゃない。
オレはこれからのことを考えて気を引き締める。
「で、今から奇襲を仕掛けに行くのか?」
「ああ。今くらいの時間なら見張り以外はほとんど寝入ってるはずだ」
「なら行こう。ところでお前が持ってるその弓は?」
ケイは弓と矢が数本入った矢筒装備していた。
ケイの弓と矢は戦った時に回収しなかったのだが......。
「これか? 倉庫に入って借りさせてもらった。俺達ダークエルフが使ってる弓より良くできていて感心したよ」
「そうだったのか。......後でちゃんと返しておけよ」
「生きてたら、な」
「必ず生きて帰るさ。ケイもな」
ケイはその言葉に笑みを返しダークエルフの住居へ歩き出す。
オレもその後を追っていく。
◆
ケイは少し進んだ後、立ち止まる。
森林で塞がれているところを指差す。
「ここだ」
「ここって、木と草が生え揃っていて通れなる場所じゃないぞ?」
「とりあえず俺の後をついてこい」
そうしてケイは草の中に入っていく。
ガサガサという草を掻き分ける音がする。
オレも置いていかれないように急いで後をつける。
少し進むと森林を抜けて一本道のあるところについた。
「へー、こんな道があったのか。確かにこれは見つけられないな」
「こっちだ。この道を進んでいけばバンデッドの背後を取れる」
「背後に回ったらどうするんだ?」
「矢でバンデッドを狙う。だがやつは注意深い。もし1回でも外すとすぐに気づく。勝負は1回限りだ」
「......ああ」
オレはケイの言葉に頷く。
弓の腕に自信はある。
問題は心だ。
オレが初めての殺人で動揺せず、バンデッドを仕留めることがてきるかが今回の要だ。
オレとケイはできるだけ音を立てずダークエルフの住居へ進んだ。
◆
ダークエルフの住居はまだ松明が点いてあった。
ここは木で囲まれており、獣対策のためか周りを柵で囲っているようだ。
オレとケイはその柵をゆっくり越えて気づかれないように身を潜める。
オレはバンデッドを目で探す。
あたりには不思議なほどダークエルフの姿は見えなかった。
「......いたぞ」
ケイが小さな声でバンデッドの行方を伝えてくる。
オレはケイの視線を辿ると朝に見たのと同じ服を着ているバンデッドの後ろ姿が見えた。
木で作った椅子に座って動いていない。
どうやら眠っているようだ。
「今がチャンスだ。弓を構えろ。俺とお前で同時に射るぞ」
「ああ」
オレとケイは互いに弓を構え、矢をつがえた。
心臓がドキドキ鳴っているのが聞こえる。
オレはゆっくり深呼吸をする。
矢の震えを抑えて標的を見つめる。
後ろからなので即死させるには頭を狙うしかない。
「撃て!」
ケイの合図と同時にオレ達は矢をバンデッドの頭部目掛けて放った。
ケイの矢は逸れたがオレの矢は一直線にバンデッドの頭部を射抜いた。
「やった!」
オレは奇襲が成功して喜ぶ。
だがすぐ違和感に気づく。
「......ケイ。頭を射抜いたのに何故やつの頭から血が流れていないんだ──?」
「......奇襲は失敗だ。どうやら読まれていたらしい」
「その通りだクソガキども」
唐突に後ろから声をかけられる。
オレは慌てて振り向くと、後ろにはバンデッドとダークエルフ達がいた。
「バンデッド!? ならオレが射抜いたのは!?」
「あれは木で作ったただの人形さ。服を着せたら後ろ姿だけだと人形だとわからないだろ?」
「くっ!」
オレは矢を取り出しもう1度放った。
しかしバンデッドは難なく避ける。
「逃げるぞ!」
ケイとオレはダークエルフの住居を抜けて、柵を飛び越え、来た方向とは逆の森に突っ走った。
後ろからバンデッド達が追って矢を放ってくる。
どうやら今度は逃がしてもらえなさそうだ。
アリーサさんの時とは違い攻撃に容赦がない。
「どうする!? このままじゃいずれやられるぞ!」
「......奇襲が失敗した時点で俺達の負けだ。このまま逃げるぞ」
「くそっ!」
オレは飛んでくる矢を避けながら矢を相手に返す。
何人かのダークエルフには当たるがまだ追ってくる。
......仕方ない。
オレは覚悟を決めた。
弓と矢筒を放り捨て、剣を抜く。
「何もせず殺されてたまるか!」
「おい! 何をするつもりだ! 馬鹿なことはやめろ!」
ケイの制止を無視してダークエルフの集団に突っ込む。
相手は突っ込んできたオレに驚いている。
数の差は圧倒的だから当然の反応だろう。
ダークエルフ達が矢を放ってくる。
オレは冷静に当たる矢を避け、または切り裂く。
木が邪魔になっているおかげで命中する矢を見極めるのは容易だ。
相手が一斉に矢を放ってきたので木を盾にする。
そして一気に前に出る!
相手が剣の間合いに入った──!
「はぁッ!」
殺さないように弓だけを狙う。
集団といってもみんな弓しか持っていない。
ここまで近づけばこっちのものだ!
弓をどんどん叩き壊す。
前方の敵が矢をつがえている!
咄嗟にしゃがむ。
矢が放たれた音がしてオレの頭上を飛んでいく。
今のは危なかった。
すぐに立ち上がり矢を放った男の弓を切る。
オレの獅子奮迅の活躍に恐れをなしたのか、ダークエルフが次々逃げ出し始める。
残っているダークエルフ達も矢を放っているが恐怖からか狙いが甘い。
オレは体を捻って最小限の回避だけで一瞬で間合いに入り、弓を切りつける。
最後の1人も逃げ出した。
オレは一息つく。
足音がしたので振り向くとケイが驚いた顔でこちらに歩み寄っていた。
「よく全員倒せたな。10人はくだらない数だったろ?」
「地の利だな。もっと広い場所だとここまで上手くいかなかったな。障害物が多い場所だと弓より剣の方が有利だ」
「そこまで考えて戦ったのか?」
「まさか! 死にたくないから必死だったし地の利も偶然だよ」
「それでもあれだけの数を1人で倒すなんて普通は無理だと思うんだが......」
ケイが呆れた顔で笑う。
しかし目が後ろにいくとすぐに焦った顔をした。
オレは不思議に思って後ろを振り返る。
「ガキのくせによくあれだけの数を倒せたな。褒めてやるよ」
バンデッドがいた。
バンデッドは腰に差してある剣を抜いていく。
その剣は三日月型に反っている不思議な形をしていた。
オレは剣を構える。
バンデッドが笑って口を開く。
「目覚めよ、炎魔剣『ヴォルカニック』」
「逃げろ!!」
ケイの叫び声が聞こえた。
三日月型の剣が真っ赤になるのと同時に刀身から炎が現れる。
その炎はオレに向かってきてオレを飲み込んだ────────。




