逃走~脅威の盗賊~
私の都合でちょっと午後12時あたりは厳しくなってきました。
これからは18時過ぎに投稿することにします。
オレは太陽が昇る前に起きて剣を準備した。
避けるつもりとはいえ争いになる可能性がある。
その場合オレが囮になってアリーサさんを逃がすつもりだ。
アリーサさんが傷ついたらそれこそ争いを止めるなんて不可能になる。
アリーサさんを無事に送り返し、争いも止めるのがオレの使命だ。
目的を確認してオレはアリーサさんの家を出る。
外はまだ陽が完全に昇ってなく薄暗い。
家の前にはアリーサさんとセフィーがいた。
どうやらオレを待っていたようだ。
「おはようございますアリーサさん。それにセフィーも」
「おはようございますユートさん。では参りましょう」
「ええ。セフィーはここでアイシャのことを頼む」
「分かりました。ですが危ないと思ったらすぐ逃げること。いいですね?」
「分かってるさ」
セフィーとの会話を切り、オレはアリーサさんと共に森に向かった。
◆
昨日ケイと戦った場所につく。
確かケイがいた場所の更に奥だったか。
教わった通りに道を進む。
「今更ですが、ありがとうございます。私達のために危険な場所までついてきてくれて」
「いいですよ、そんなこと。困ったらお互い様です」
「......本当は怖いのです。もし話し合いの余地なく攻撃してきたらと思うと。でもアイシャの前では強い母でいないと──」
アリーサさんが泣き出しそうな顔でそう言う。
アリーサさんの弱音を初めて聞いた気がする。
今までアリーサさんは気丈に振る舞っていたけど、村長という肩書きがアリーサさんをそう振る舞わせていただけなのかもしれない。
オレはアリーサさんを励まそうと笑いかけて言った。
「そりゃそうですよ。敵の真っ只中に入るんですから怖くない人なんていません。オレだって怖いですよ」
「ユートさんも怖いのですか? そうは見えませんが」
「見た目だけですよ。内心はビクビク震えてます。敵と会ったらチビってしまうかも」
「ふふふ、ユートさんったら嘘ばっかり。レックス様と戦ったお方です。怖くてもそんなチビ......こほん」
「今、チビるって言いませんでした?」
「言ってません!」
「本当に?」
「本当です!」
オレはその子供みたいなやり取りに笑う。
オレの笑いにつられてか、アリーサさんも可笑しくなったのか笑みを浮かべる。
どうやらオレの冗談で緊張は解れたみたいだ。
オレ達はまた前に進むことにする。
◆
10分程度歩いてたら前方に人影が現れた。
その姿はケイと同じダークエルフだった。
「あんたら何用だ? ここから先は俺達の縄張りだぞ」
アリーサさんが前に出る。
「私はエリリク村の村長、アリーサです。あなた達の長に用があります。ここに呼んできてください」
なるほど。
下手に敵の住居に入らずいつでも逃げれるようにここで話をさせるつもりか。
「村長? ライトエルフの村長がボスに何の用だ」
「あなたに話す必要はありません。長を呼びなさい」
「なんだとこの女!」
ダークエルフの男が怒りで顔を歪めてアリーサさんに近づいてくる。
オレはアリーサさんの前に出て剣を抜き、男に突きつける。
「それ以上は近寄るな」
「......ちっ!」
「こっちは争いに来たんじゃない。お前がボスとやらを呼んでくればいいだけだ」
ダークエルフの男は渋々ながらも呼びにいった。
オレは安心して剣を鞘にしまう。
◆
少しの間アリーサさんと待っていると、前方から複数のダークエルフを引き連れた顔に大きな切り傷がある髭面の男が出てきた。
恐らくこいつがバンデッドとかいう男だろう。
「貴様らか。俺様を呼んだのは」
「ええ、そうです。あなたが現在のダークエルフ達の長でよろしいのですか?」
「いかにも。俺様はバンデッド! この国を股に掛ける『黒髭盗賊団』の団長よ!」
「盗賊団、ですか?」
「なんだ知らんのか? いや、こんな僻地に住んでたら知らんのも当たり前か。王都では有名なんだがな。まあ、そんなことはどうでもいい。一体何の用で来た?」
「......あなたの仲間のダークエルフの1人が昨日私達の仲間に攻撃してきました」
「ほう、それは災難だったな! そのダークエルフはきちんとこちらで処罰しよう」
こいつ、しらばっくれるつもりか?
オレはバンデッドに不快感を覚える。
アリーサさんも流石にこの男の態度を不快に思ったらしくムッとしている。
「そのダークエルフから聞きました。あなたに命令されてやったのだと。知らないフリをしても通りませんよ」
「おっと、バレちまってたか。今のは単なるお遊びだ、水に流せ」
「っ! 下手したらこちらの仲間が死んでたのかもしれないのですよ! それをあなたは──」
「そんなどうでもいいことでいちいち怒るな。結局あんたは俺様にどうして欲しいんだ? 謝罪でもしてほしいのか?」
バンデッドはゲラゲラ笑ってこちらの要求を聞いてくる。
安い挑発だと分かってはいるがこの男の態度はとても許せるものではなかった。
オレはいつでも抜けるように手を剣の柄に添える。
「くっ──! ......要求はもう2度と私達に攻撃的な行動を取らず縄張りにも入ってこないことです。あなたの前の長とはそういう条件でここに住むことを許しました。あなたにも守ってもらいます」
「ふむ。それは無理だな」
「なっ──!」
「俺様は誰の指図も受けないし欲しいものは力づくで奪うだけだ。こんな風にな!」
バンデッドは腕を伸ばしアリーサさんを捕まえようとする。
オレは剣を抜きバンデッドの腕に切りかかる。
バンデッドは読んでいたのかすぐに腕を引っ込めた。
アリーサさんの前に出て庇う。
「アリーサさん、話し合いができる相手じゃない! ここから逃げよう!」
「その女は好みだ。逃がしはせん。お前ら! 女は引っ捕らえろ! 男は殺せ!」
その命令を合図にダークエルフの男達は弓を構えて矢を放ってきた。
オレは直撃する矢だけを剣で叩き切っていく。
後ろでアリーサさんが悲鳴をあげた。
振り返ると隠れていたのか、ダークエルフの男がアリーサさんを地面に倒し捕まえていた。
「アリーサさん!」
「ユートさん逃げてください!」
「逃がさんぞ。お前ら、ぐずぐずしてないでさっさと男を殺せ!」
矢がどんどん激しくなる。
オレは全て防ぐのは不可能だと考えて矢を無視してアリーサさんを捕まえているダークエルフに向かった。
オレの体に何本か矢が刺さり、そこから血が溢れた。
痛みに耐えてダークエルフを切りつける。
ダークエルフは悲鳴をあげ、アリーサさんを解放した。
オレはアリーサさんの手を引いて急いで逃げた。
後ろから「追え!」という声がした。
◆
あれからアリーサさんの指示に従いながら森をあちこち周り追っ手を振り払おうとした。
追っ手は森林でオレ達を見失いなんとか逃げ切った。
今はアリーサさんに案内してもらいながら川沿いに移動しているが疲労と傷で体力は限界だ。
オレは目眩がしてついに倒れる。
「!? ユートさん!」
アリーサさんの心配する声を聞いたのを最後に意識は途切れた。




