短編
既視感の毎日
生活を変えたいとまでは言わないけど
景色を変えたい
見慣れた帰り道 聞き慣れた声
今日はお給料日、8月の30日
全部貯金して旅に出よう
何故だかここに居たくない
どこに向かうんだろう、私の人生
何のために生きてるかはわからない
けど答えはそれほど必要じゃなかった
行きたい所が沢山ある…
突然電話が鳴る
店長からだった
「あー、三谷?、悪いんだけど来月から人数減らすから来なくていいよ」
「はい」
次のアルバイトを探すよりも先に頭に浮かんだ事があった、旅に出たい
良くも悪くも旅に出やすい環境だった
失うものもないし、お金が尽きるまで
行きたい所に行ってみよう
まずは京都に行ってみたい
伏見稲荷大社を目指そう
旅の開始地点は私の住む静岡
電車で行ったらすぐ着くだろう
出発は明日、胸が高鳴った
一体どんな旅になるんだろう
考えを巡らせている間に眠りに落ちた
そしてその明日がやってきた
眼が覚めると同時に倦怠感が襲う
「やっぱり旅は辞めよう」
昨日はどうかしてた
旅に出る前に生活を安定させないと…
とにかく働かないと…
それからは淡々とアルバイトをこなし
自分の人生を受け入れていた
相変わらずの既視感
やっぱりどこかに行きたい
景色を変えたい
新しいアルバイトを始め一年が経とうとしていた
そんなある日
「三谷さんこの日入れない?」
やっぱり店長の声は聞き馴染みがある…
前々から思っていた
「その日は予定が…」
「予定?はぁ、まったく…ん?電話か…」
店長が弱々しく電話に出た
「もしもし?面接?あーはいでは明日履歴書を…」
確か前にもこんな事があった気がする
「とにかく帰ろう…」今日は8月の29日
明日は確かお給料日だ