【クールな勇者とやさしい魔王4】新人教育の始め方
※単独でも読める物を目標に書いていますが、シリーズを通して読んで頂けたら嬉しいです。
シリーズURL⇒http://ncode.syosetu.com/s6551d/
例によって例のごとく、ノリと勢いだけで書きました!
けど、今回もまた今までとはちがった面が書けたと自負しておりますので、そんな二人の会話劇を楽しんでください。
「ふっふっふっふっふ」
「気持ち悪い笑い方してどうしたの?」
「気持ち悪いとはなんじゃ!?オヌシの言葉は鋭すぎる!
まぁ、よい。ワシは今機嫌が良い。
スライムなぞと思っておったが、アヤツ中々やりよるなと思っての」
「あぁ、彼女ね。
やっぱり種族的な所があるのかな?」
「かもしれんの。
あの飲み込みの早さは気持ちイイものがある。
もう独り立ちさせてもよいのではないか?」
「それはまだやめた方がいいよ」
「ほぉ、その心は?」
「今の所、彼女は失敗らしい失敗を経験してない。
前にボクがスライムは自分達が弱者だと忘れないって言ったの憶えてるかな?
それは間違いじゃないけど、それでも天狗になったっておかしくない。
力を過信するともし失敗した時に何も出来なくて、次は失敗を恐れる様になる。
そうなっちゃったら、今までの苦労と時間が無駄になってしまう」
「ふむ。それはよくない。
失敗できる時に失敗させねばならんという事か。
じゃが、それはちと難しいのではないか?
そうそう都合よく失敗しても良い案件など転がっておらん。
加えて、今の国力では一つのミスが致命傷になりかねん」
「そうだね。だから今は、多くの経験をさせる事が大事なんだ」
「んん?それは失敗の経験という事か?」
「違う違う。成功にしろ、失敗にしろ、だよ。経験は大きな財産になる。
食糧を提供する代わりに労働力を求められたとしよう。
そしたら、今の国力でどれだけの魔族を派遣できるか?
こちらの出す対価に見合った物が得られるか?
交渉でどこまで譲歩が引き出せるか?
パッと思いつくだけで、これだけの情報を処理する事になる。
実際の現場では、その時々の空気も加味しなくちゃならない」
「じゃな。それに外交の相手は一国ではない。
他に好条件を出す国があるやもしれん」
「そうだね。
だから時にはハッタリとかが重要になるんだけど、今はいいや。
それで、首尾よく好条件で話を纏められたとしよう。
それは成功したっていう自信に繋がる。
それだけじゃなく、類似案件は多いから応用ができる様になる」
「つまりあれか?
以前はこうやって成功したから、今回もやってみようという事か?
じゃが、それだと一辺倒過ぎて逆に応用が利かなくならんか?」
「確かにキミの言う事にも一理ある。
けど、それはまず経験しなければわからない事なんだ。
経験があれば選べる手段が増える。
仮に一つがダメでも他にも使える手札があるって事なんだ。
そうして蓄積された経験は必ず彼女の役に立つはずだよ」
「なるほどのぉ。
ワシは『なんとなく』でやっておったが、そういう駆け引きも大切じゃな」
「『なんとなく』でできちゃうキミが変なんだよ・・・」
「呆れんでくれんかのー!
それにワシだって失敗ばかりなんじゃぞ?
だからやりたくもない戦争なぞをやるハメになった。
その無念は今でも忘れられん・・・」
「その想いは大切だよ。キミがキミであるという証にもなるんじゃないかな?
だからボクはキミに協力するし、国に掛け合って戦争を終わらせたんだ」
「なんじゃと!?
たまに数日姿を見ぬと思っていたが、その様な事をしておったのか!?」
「あれ?言ってなかったっけ?」
「聞いておらんわ!
大丈夫か?祖国で変に扱われんかったか?」
「大丈夫だよ。その話も昨日でどうにか納得させられたから」
「そ、そうか?じゃが、魔王討伐に向かった勇者が魔族との親和を唱える。
それがどれだけ危険かオヌシならば容易に想像できたであろう?
なぜその様な危険な事をしたんじゃ?」
「言わなきゃダメかな?」
「その様に愛らしく小首を傾げても騙されんぞ。
オヌシがそんな態度を取る時は何か隠している時じゃ」
「ソンナコトナイヨ?」
「なら、目を見て言わぬか!
何かあるならば力になる。それが友じゃろう!」
「なんだか今日は食い下がるね」
「当たり前じゃろう。オヌシがどう思っているかはわからん。
わからんが、今やオヌシはこの国になくてはならん存在じゃ。
ワシら魔族に人族のアレソレを教えてくれる貴重な存在なんじゃ。
そんなオヌシに何かあったらと思うとゾッとする」
「それだけなの?」
「ん?なんじゃ?ワシ、なんか変な事を言ったか?」
「・・・いいよ。
それで、話を戻すけど経験は大切だって事は理解してもらえたかな?」
「む?なにやら、強引に話を逸らされた気もするが、まぁ良いか。
オヌシの言う様に結果に限らず経験の重要性は理解した。
じゃが、それは独り立ちさせない理由にはならんじゃろ?」
「それは違うよ。いいかい?
鳥だって初めは飛ぶ事ができないんだ。
親鳥が飛び方を見せて、こうやるんだよって教えてあげる。
それを真似して繰り返す事によって、雛鳥は飛べる様になるんだ。
ボクの言いたい事、わかるかな?」
「アヤツが雛鳥でワシらが親鳥という事か。
つまり、まずは学ばせる事が肝要。そういう事じゃな?」
「そういう事。ボクだって彼女の事は買ってるんだ。
だから、彼女が自分の翼で自由に飛べる様に教えてあげたい」
「オヌシの考えはよくわかった。
じゃが、魔族にはそこまで多くの時間が残されていない事も忘れんでくれ」
「わかってるよ。だから、その時間を伸ばす為に頑張ってるんじゃないか。
それじゃ、ボクはちょっと用事があるからもう行くよ」
「うむ!アヤツが羽ばたける様、ワシらで道筋を作ろう!
さて、次はどんな事を仕込んでやろうか?
なんじゃな?何かを教えるというのも中々に悪くないな」
「・・・・・・・・・いつつ。やっぱり痣になってるかな?
まぁボクが痛いだけで戦争を終わらせられたんだ。安いものさ。
けど、キミにとってボクはどんな存在なのかな?
国を再興させるために必要な人材?
利用価値があるから?だから友達になってくれたのかな?
キミがそんな人じゃないってわかってるけど、わからないよ・・・」
ここまでお読みくださり、まことにありがとうございます。
さてさて、いつも通りにノリと勢いだけで書き上げている本作ですが、今回はちょっとシリアスよりな展開になり、書いた自分でもびっくりです(^_^;)
今後、二人の関係がどうなっていくのか、先はそう長くはないと予定しておりますので、お付き合いいただけましたら幸いです。