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悪夢の塔  作者: 相沢メタル
第二章
96/154

56

「という感じに、結局殺されちゃったんだけどさ」

「まてまて、情報量が多すぎるぞ」


 アルコと成宮さんは難しい顔をして頭を抱えている。

 放課後の公園。火曜日、平日。隣のベンチでは老人の夫婦がのんびりと眠そうに過ごし、砂場やブランコでは子どもたちがきゃっきゃと楽しげに笑っている。

 いつになったら、ああやってのんびりと過ごせるのか。

 情報を整理してみる。

 二人はあの時点で絶命していた。だから、僕があの後どうなったかを知らない。だから説明した。

 二人が殺されたあと、黒竜と一対一になって、殺されそうになって、怒りに身を任せようとしたら緑の光に包まれて、反撃したけどやっぱり殺されてしまったこと。


「黒竜はトカゲっぽいなって思ってたんだけど、やっぱりトカゲだよね。尻尾が再生するなんてさ」

「まあ、それはいいとして……確かに尻尾を切り落とせたのね?」

「無我夢中だったからはっきりとは覚えてないんだけどね。普通にずばっと切れたよ」

「それが本当なら、黒竜の本体もいけるんじゃねえか?」

「うーん、どうかしら?」


 頭の中で黒竜の姿を思い描く。

 黒くて巨大な図体。刺々しいウロコ。尻尾は長く、サソリのようにくねくねと自由自在に動き、近づく者を貫こうとする。

 ああ、そうか。尻尾はウロコに覆われてなかったな。だからくねくね動くのか。


「くねくねしてるからね」

「あ? くねくね?」

「そうね、くねくねよ。ウロコが無い部位ってこと」

「ああ、くねくねってそういう? 確かに、ウロコが手薄だった気がするな。だから、剣が通ったのか。なーんだ、ぬか喜びだったってことかよ?」

「いや、刺々しいウロコこそ無い部位だけど、生身が露出してるわけじゃないし、そこそこの防御性能はあると思うよ」

「じゃあ、やっぱりオマエにものすげえ力が宿ってたってこと?」


 ものすげえのだろうか。

 二人に話すまでは、ものすげえ、と思っていた。でも、こうして尻尾の構造を思い出すと、そうでもなかった気もしてくる。


「いえ、ものすごいわよ」

「ものすげえ?」

「……ものすごいの。思い出して。黒竜の突進を防いだんでしょ?」

「あ……う、うん。そうだ」


 初めて遭遇した時に食らった突進攻撃。盾を構えていても、勢いを殺せずに吹き飛ばされてしまった。それが防げたってことは、


「攻撃力じゃないわね、強化されたのは。純粋な力よ」

「筋肉が鍛えられたような感じはしなかったけど」

「だから、その緑の光に秘密があるんでしょ?」

「というか、腰の人形だな」


 思わず腰を見る。

 ズボンのポケットしか見えない。

 あちらの世界で手に入れた人形。


「今までピンチに陥ってもなんの音沙汰もなかったのにな。今回はどういう心境の変化だ?」

「感情に呼応したのかも」

「怒りに、ってことかな」

「そうだと言える根拠はないけれど。でも、それだと厄介ね」

「どうして?」

「スイッチが怒りの感情、それも普段訪れないような爆発的な怒りだとすると……再現性は低いと言わざるを得ない」

「……確かに。もう一度やれ、と言われても難しそうだ」

「もう一回、アタシたち二人が殺されたらどうだ?」

「それは……いやだよ、そんな仮定は」

「そうだな、わるい」


 とはいえ、あの感覚、あの感情を任意に引き起こすのは無理だろう。気は進まないけど、二人が殺された瞬間を思い返してみる――だめだ、集中できない。無意識のうちに心がかき乱され、思い返すことを忌避してしまう。


「今は無理だと思うわ」


 今は?

 いつか可能になる時が来るのだろうか。


「あなたの変化も気になるけど……問題は黒竜をどう倒すかよね」


 アルコのファイアストームは狙い通り有効だったし、ウロコを下へ剣も突き刺せた。けど、その後の展開は予想できなかった。

 たとえ次回もファイアストームを浴びせたとしても、また水の中に逃げられたらいたずらにアルコが消耗するだけだ。


「それについては、クールダウンがあると思うの」

「クールダウン?」

「水中に逃げるまでの間、身動きを取らなかった瞬間があったわよね?」


 そう言えば。そこを攻撃して、ウロコを剥がしたのだ。


「おそらく、熱によるダメージそのものよりも、ウロコが急激に冷やされることを嫌ったんじゃないかと思うの。だから、しばらくは水中に逃げることはない……かもしれない」

「かもしれない……か、それでもファイアストームが無駄にならなそうで安心したぜ」

「せっかくバウニャンと戦ってまで習得したんだもんね」

「有効活用しないとな」


 となると、作戦は前回と変わらないのだろうか。

 ファイアストームを浴びせ、ウロコを剥がし、隙間に剣を突き刺す。


「水中に逃げられたら……ごめんなさい。プランはないわ。とにかく、逃げ回って策を練るしか」

「いいよ、それで。まだ4日あるだろ、期限」

「4日しか、とも言えるけど、まだトライアンドエラーは可能だね」

「だろ。とにかく、命がけで試行錯誤するしかねーって」

「そうね。あとは人形の力……それがうまく働けば」


 もう一度腰を見る。

 そこに人形はない。

 けど、効力を知った今、さっきより確かな存在を感じた。

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