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眠りにつき、石の祭壇を訪れる。
随分とロウソクは減ってしまった。
「残り21本……あと一週間しかないわね」
あと一週間で黒竜を倒せないと、僕らは……どうなってしまうんだろう。
「前回、祝福を授けたからな。今回は話すことはない」
案内人がそう告げると、世界が暗転した。
※
バウニャンの息づかいが聞こえる。
泉の部屋だ。
僕らは起き上がり、まず手荷物を確認する。
異常はない。
アルコのプランを再確認する。
「ネックレスは引き続きアルコに渡しておくわ。ここで、火の魔法を試してみましょうか」
「ちょっと狭いけど……ぶっつけ本番は危険か」
「よし、離れてろ。バウニャンもな」
「バウニャン、こっちよ」
成宮さんがバウニャンを抱える。
バウニャンは素直にへっへっと舌を出している。
アルコが松明に近づき、杖を構える。
風の魔法は封じておくため、杖は回さない。
ネックレスについた石が紅く発光し始める。
「よし! いくぞ。ええと……とにかくファイアー!」
アルコの叫び声とともに、杖の先から火炎放射器のように炎が吹き出す。
「おわわわ! 思ったよりすげえ!」
炎は壁を焦がし、しばらくするとネックレスの光が収まるとともに吹き出すのをやめた。
アルコは立ち尽くしている。
「アルコ、調子はどう?」
くるりと振り返る。
「へへ、大丈夫。ウインドカッターよりは疲れるかな。もう一発撃つのは厳しいかも」
「よし、泉の水を飲もうか」
ぐびぐびとアルコが部屋にあふれる水を飲む。
「うん、回復した……かな。目に見えないから断定はできねーけど、さっきより気分はよくなった。ところでさ……」
「なにか異常が?」
「名前、どうするかね。火の魔法の」
「火炎放射器とかどう?」
「却下。そんな魔法の名前があってたまるか」
「ファイアつながりかしらね」
「それはそうだな」
「ファイア……スクリュー」
「回転してないしなー」
「ファイアブラストはどうかしら。ブラストには突風とか爆風って意味があるけれど」
「ふむ。採用! それでいこう」
新しい魔法の名前も決まったところで、僕らはヤドカリ地帯へと向かった。




