41
「すっかり忘れてたわ……」
「そうだね。忘れてた」
「おいおい」
呆れた様子の案内人が説明する。
「お前たちが限界を超えるためには、祝福の力が必要だろう? 今のままでは勝てない相手も、祝福を受けて鍛錬すれば、いずれ勝つことも叶う……かもしれん」
「最後のところは曖昧なのかよ!」
「強くなったからといって、勝てるとは限らんからな」
「ふーん? で、その祝福は誰に与えてくれるんだ?」
「お前たちが自由に選ぶがいい。お前たちの命、ろうそくの数は一蓮托生なのだから」
「へー……じゃ、ヒカリに任せた」
「ちょっと……」
顎に手をやり、考え込む。
バランスを考えれば、アルコが祝福を受けるのが順当だろう。でも、黒竜との戦いに勝つためには……?
「これといって決定打がないわね」
「じゃあ、ヒカリでいいんじゃね?」
「いえ、黒竜にはファイアアローがまったく効いてなかった。少し強くなった程度じゃ、結果は変わりそうにないわ」
「僕の剣も、あの鱗の前ではあまり効果がない気がする。試してはいないけど」
「あとはアタシの魔法か……黒竜には対策は思いついてないんだけど、面白いことは思いついててさ」
「面白いこと?」
「へへ、内緒……ていうか、うまくいくとは限らねーし」
「なによそれ……ふぅ、でも、祝福はアルコに与えるのが良さそうね。私達よりは可能性がありそう」
「ありがとーございます」
「では、アルコに授けることにしよう」
案内人から光が溢れ出し、それがアルコの胸の前に移動、胸の中に吸い込まれる。
「おお、ファンタジー……なんも変化はないけど?」
「強くなる可能性の拡張だからな、今の時点ではこれまでと変わらん」
「とにかく、たくさん敵を倒せばいいんだろ?」
「倒さずとも、戦うだけで経験は積まれていく。精進するんだな……では祝福も済んだことだ、あちらの世界に送ってやろう」
世界が歪み、暗闇に包まれていく。
※
目覚めると、バウニャンの間の抜けた顔が目の前にあった。
泉の部屋だ。
おそらく、ゴブリンの巣穴の途中にあった部屋だろう。
「それで、面白いことって?」
「焦るなって。な、ヒカリの付けてるネックレスあるだろ?」
「これ?」
成宮さんが顎を上げ首元をさらすと、赤い石のはめ込まれたネックレスが見えた。
ファイアアローを撃つための力、炎の力を溜め込むためのネックレスだ。
「そう、それそれ。でさ、ちょっと貸してくんない?」
「ええ? いいけど……あっ、もしかして」
「へへーん、分かっちゃった?」
「え、え、どういうこと?」
「合体魔法……と言えばいいのかしら」
「合体魔法……そうか」
ネックレスの炎の力、アルコの杖が持つ風の力。これを同時に放ったら?
「黒竜が倒せるかは分からないけどな。それでも、なかなかの威力が期待できそうだろ?」
「魔法の力は私達自身の力じゃないものね」
「そ。オマエが前回愚痴ってたろ? 力不足だって。あの後、現実に戻ってから思いついたんだよな。魔法はアタシたちの力じゃない。だったら、好きに使ってもいーじゃんってね」
「なるほど」
「ということで……」
ネックレスを付けたアルコが杖をビシリと構える。
「小手調べに、ヤドカリ退治といこうぜ!」




