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悪夢の塔  作者: 相沢メタル
第二章
81/154

41

「すっかり忘れてたわ……」

「そうだね。忘れてた」

「おいおい」


 呆れた様子の案内人が説明する。


「お前たちが限界を超えるためには、祝福の力が必要だろう? 今のままでは勝てない相手も、祝福を受けて鍛錬すれば、いずれ勝つことも叶う……かもしれん」

「最後のところは曖昧なのかよ!」

「強くなったからといって、勝てるとは限らんからな」

「ふーん? で、その祝福は誰に与えてくれるんだ?」

「お前たちが自由に選ぶがいい。お前たちの命、ろうそくの数は一蓮托生なのだから」

「へー……じゃ、ヒカリに任せた」

「ちょっと……」


 顎に手をやり、考え込む。

 バランスを考えれば、アルコが祝福を受けるのが順当だろう。でも、黒竜との戦いに勝つためには……?


「これといって決定打がないわね」

「じゃあ、ヒカリでいいんじゃね?」

「いえ、黒竜にはファイアアローがまったく効いてなかった。少し強くなった程度じゃ、結果は変わりそうにないわ」

「僕の剣も、あの鱗の前ではあまり効果がない気がする。試してはいないけど」

「あとはアタシの魔法か……黒竜には対策は思いついてないんだけど、面白いことは思いついててさ」

「面白いこと?」

「へへ、内緒……ていうか、うまくいくとは限らねーし」

「なによそれ……ふぅ、でも、祝福はアルコに与えるのが良さそうね。私達よりは可能性がありそう」

「ありがとーございます」

「では、アルコに授けることにしよう」


 案内人から光が溢れ出し、それがアルコの胸の前に移動、胸の中に吸い込まれる。


「おお、ファンタジー……なんも変化はないけど?」

「強くなる可能性の拡張だからな、今の時点ではこれまでと変わらん」

「とにかく、たくさん敵を倒せばいいんだろ?」

「倒さずとも、戦うだけで経験は積まれていく。精進するんだな……では祝福も済んだことだ、あちらの世界に送ってやろう」


 世界が歪み、暗闇に包まれていく。



 目覚めると、バウニャンの間の抜けた顔が目の前にあった。

 泉の部屋だ。

 おそらく、ゴブリンの巣穴の途中にあった部屋だろう。


「それで、面白いことって?」

「焦るなって。な、ヒカリの付けてるネックレスあるだろ?」

「これ?」


 成宮さんが顎を上げ首元をさらすと、赤い石のはめ込まれたネックレスが見えた。

 ファイアアローを撃つための力、炎の力を溜め込むためのネックレスだ。


「そう、それそれ。でさ、ちょっと貸してくんない?」

「ええ? いいけど……あっ、もしかして」

「へへーん、分かっちゃった?」

「え、え、どういうこと?」

「合体魔法……と言えばいいのかしら」

「合体魔法……そうか」


 ネックレスの炎の力、アルコの杖が持つ風の力。これを同時に放ったら?


「黒竜が倒せるかは分からないけどな。それでも、なかなかの威力が期待できそうだろ?」

「魔法の力は私達自身の力じゃないものね」

「そ。オマエが前回愚痴ってたろ? 力不足だって。あの後、現実に戻ってから思いついたんだよな。魔法はアタシたちの力じゃない。だったら、好きに使ってもいーじゃんってね」

「なるほど」

「ということで……」


 ネックレスを付けたアルコが杖をビシリと構える。


「小手調べに、ヤドカリ退治といこうぜ!」

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