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悪夢の塔  作者: 相沢メタル
第二章
73/154

33

 ゴブリンは素早くアルコに接近する。

 隊列は僕を先頭に成宮さん、アルコと続く。

 隊列を入れ替えるのは困難だ。けど、魔法を使えないアルコではゴブリンに対処できそうにない。


「アルコ、しゃがんで!」

「は、はひぃっ」


 成宮さんの指示に従い、アルコが身を伏せる。


「そのまま、落ち着いて、ゴブリンに向かって杖を突き出して!」


 アルコの力で杖を繰り出そうとも、ゴブリンを倒すことはできない。まして、身を伏せている姿勢じゃ……。


「大丈夫、まかせて」


 成宮さんの静かな声。

 接近するゴブリン。

 アルコが杖を突き出す。

 ゴブリンはそれを避けようと跳躍……その先には弓を構えた成宮さんが待っていた。


「ぎいっ!」


 成宮さんに気がついたゴブリンは跳躍の軌道を変えようとするが間に合わない。

 成宮さんの放った矢に貫かれる。


「フォローお願いね」

「え?」


 矢で撃ち抜かれたゴブリンは、そのまま僕の頭上に落ちてきた。

 慌てて盾で弾き飛ばして、床に転がったところに剣で止めを刺す。


「ありがとう。ただの矢じゃ、致命傷にはならないから」

「あー、びっくりしたぜ」


 なんとかピンチは脱したようだ。

 本当に成宮さんには助けられてばかりいるな……もっと頑張らないと。


「とりあえずゴブリンはいないみたいだけど……一応、隊列を変えておきましょうか」

「でも、入れ替えるのも厳しい狭さだぜ?」

「またしゃがんでもらえる?」

「あ……そういうこと」


 アルコがしゃがみ、その上を成宮さんが乗り越える。これで僕と成宮さんでアルコを挟みこむ隊列になった。


「これなら、前後どちらからゴブリンが襲ってきても対処できそうね」

「なんとか倒せるように努力するよ」

「大丈夫、この狭さなら、タイミングをみて縦に斬りつけるだけだから。あなたの集中力なら、なんてことないはず」

「善処します……」


 確かに召喚された剣士や、主ナメクジと戦った実績はある。少しは自信を持ってもいいのだろうか。

 これからの戦闘に思いを馳せていると、また分岐路に遭遇した。

 相談し、今度は左側から先に進むことにする。

 通路をしばらく進むと、多少拓けた空間になっていて、また左右に分岐していた。


「またかよ……」

「でも、ほら」


 左右には分かれていたものの、松明に照らされて、どちらの先にも扉が見えた。

 どちらも開けることには変わりないので、多数決で決めることにする。

 結果、アルコと成宮さんが一致して、右の扉へ進むことになった。


「ほら、最初は右を選んで、次は左を選んだから。交互のほうがなんとなく気持ちがいいでしょう?」

「だよな」


 僕は、最初の分岐路を右に行った先でゴブリンの巣穴にたどり着いたため、あまり気持ちよくはないけどね……。

 多数決に従って右に進み、扉を開ける。

 すると、そこには見知った生き物がいた。


「わあ……バウニャンじゃない」

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