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悪夢の塔  作者: 相沢メタル
第二章
61/154

21

 部屋を出てすぐそばには階段がある。

 おそらく、この先にはゴブリンたちがいるのだろう。

 できるだけ物音を立てないように、そっと足を踏み下ろしながら階段をゆっくり下っていく。

 階段は当然整備されているはずもなく、ところどころ欠けており、足を持ち上げた直後にぱらぱらと崩れることがあった。その音は小さいものの、足を滑らせ階段を転げ落ちる恐怖と戦う必要があった。


「……。」


 ゴブリンとの遭遇と、階段の不安定さから、僕らは自然口を閉ざし、無言のまま慎重に階段を降りていった。

 ついに階段を降り終えたとき、そこには背の低い獣だけが、つまりゴブリンが通り抜けられる横穴と、人間でも通れる通路があった。


「この穴って」

「2階に来る前に、ゴブリンたちが抜けていった穴ね」


 つまり、高さとしては1階に戻ってきたということか。ゴブリンの横穴に用はない、通路の奥を目指そう。


「まて、何かあるぜ」


 横穴を調べていたアルコが引っ張り出したのは、ゴブリンのものであろうズタ袋だった。


「きったねー……とりあえず、中身を出すからな」


 袋の紐を解きひっくり返すと、ばらばらと中身がこぼれ落ちる。

 中に入っていたのは壊れた斧やナタの一部と、乾いた肉のようなもの、枯れた草……そして、不気味な人形だ。

 ゴブリンの人形ではなく、姿形からすると人間を模したものに見える。ただ、顔はのっぺらぼつでつるんとしていて、心臓のある部分には穴が空いていた。手足は崩れて失われていた。


「気味が悪いわね……とはいえ重要な代物かも知れないし……」

「僕が持つよ。いいかな?」


 2人が頷いたのを確認して、腰に括りつける。


「うわー、マジで呪いの人形って感じ」

「その人形、夜中に喋ったりしないわよね?」


 人形を持たなくてすんでホッとしたのか、女性陣はなかなか非道な反応を示してきた。


「この袋はどーするよ。なんか汚いから、捨てるか?」

「それも持っていきましょう。こっちは私が持つわ」

「え、使えそうにねーけど」

「泉の部屋で洗えばいいでしょ。人形もそうだけど、そろそろ手荷物が増えてきて、せっかく何かを見つけても諦めることになりかねないし」

「それは勿体無いね」


 他に何もないことを確認して通路の奥を目指す。

 通路を進むとすぐに扉が見つかった。鉄で出来た両開きの扉だ。


「ヌシの部屋ってヤツ?」

「いや……もっと禍々しい扉だったよ。絶対に違うとは言えないけど」

「何にせよ、注意していきましょう」


 僕、成宮さん、アルコの順に並び、盾を構えながら扉を腕と体で押し開けていく。


――ひゅっ!


「おっと」


 構えた盾に、木の矢があたり、跳ね返って床に落ちる。

 そこには弓やナタを構えた大勢のゴブリンと、薄汚れた焦げ茶色のローブを被った赤目のゴブリンがいた。


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