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悪夢の塔  作者: 相沢メタル
第二章
58/154

18

「なんとか倒せたわね」


 少しだけ息を切らしながら、成宮さんが僕らのもとへ戻ってくる。


「お、お疲れ様。すごい動きだったけど……?」

「実はね……」


 照れた様子で頭をかく。

 前回、僕とアルコがゴブリンに倒されたあと、成宮さんは1人生き残り、戦い続けていたらしい。


「あまりに不利な状況で、避けるのに手一杯だったけどね」


 地上のゴブリンの攻撃と、2階からの弓矢による攻撃を避け続けることで、祝福による強化を早めたという。


「あなたの集中力と体力のように、私も何か鍛えなくちゃ役に立てないと思って」


 そうして素早さと集中力の向上を実感したところで、ゴブリンの攻撃を避けきれず、殺されてしまった……。


「今みたいに一対一じゃないと、勝つのは厳しいんだけどね。でも、少しは役に立てそう」


 少しどころか、遠近両方の戦闘が可能だなんて……。


「むしろ、オマエのほうが役立たず?」


 アルコが心を読んだように杖で小突いてくる。


「そんなことないわ。あなたが一緒にいるだけで、心強いのよ」

「い、いやあ……」

「照れてる場合かっつーの。さ、扉を開けようぜ」


 そうだった。

 ゴブリンの背後にある扉には鍵かかかっていなかった。

 先頭に立ち、扉を開ける。


「これは……」


 見覚えるのある部屋だった。

 中央に祭壇がある。


「ここって泉の部屋……?」


 前回の悪夢で訪れた泉の部屋にそっくりだ。

 ただ、中央の祭壇から水は湧き出ておらず、代わりに部屋の隅にある水飲み場のような場所から水かちょろちょろと流れ出て、溢れた水か床をぬらしていた。


「泉の部屋ぁ? 泉なんてどこにも…ひゃっ!?」

「アルコ! どうしたの!?」

「な、何かが足に触れたんですぅ!!」

「……ですぅ?」


 見ると、アルコの下には……バウニャンがいた。

 どうやら、コイツがアルコの足を舐めたらしい。


「な、なんだよ、コイツぅ!?」

「バウニャンよ」

「いや、聞いたことねーし!?」

「僕が命名したんだ」

「聞いてねーよ! なんで照れてんだ!」


 聞くと、アルコは動物が苦手らしい。

 こんなに可愛らしいのに……それはさておき。


「それで……『ですぅ』って言った?」

「は、バカじゃねーの? このアタシが? 聞き間違いだって! ていうかデスだよデス。死を意味する、な!」

「足に触れたんdeath! ……なるほどぉ?」

「うるせーな、納得しとけ!」


 あまりからかうと、また信頼を失いそうなのでほどほどにしておこう。

 アルコにも、どうやら事情がありそうだ。


「それじゃ、部屋の中を調べましょうか」


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