表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪夢の塔  作者: 相沢メタル
第二章
53/154

13

「えっと…もういいのよね?」

「おう、ウインドカッターに決まったからな」

「サップーハァ!」

「やめろって!」

「あのね…静かにして。真面目な話よ」

「はい…」


 成宮さんの恐ろしい表情に、僕らは静かになる。


「じゃ…進むわよ」

「僕が先頭で、次に…」

「アルコを挟む形で行きましょう。さ、彼に続いて」

「お、おう。VIP待遇だな!」

「静かにね…」

「……」


 アルコが黙ったところで、ゆっくりと扉を開ける。

 ……。

 どうやら、ゴブリンたちはいないようだ。


「ついてきて」


 そのまま通路を進む。できるだけ足音を立てないようにするけど、いつゴブリンが姿を現すかとヒヤヒヤする。


「もうすぐT字路だな…」


 アルコの言う通り、T字路にたどり着く。


「それじゃ、左側にゴブリンがいないか調べようか」

「待って、右側にいるかもしれないわ」


 そういえば、アルコと出会ったとき、ゴブリンは右側の通路まで追いついてきたんだった。

 急にT字路から顔を覗かせるのが怖くなる。


「大丈夫、援護するから」


 僕の内心の不安を察知して、成宮さんが声をかけてくれる。

 そうだ。一人じゃない。アルコだっている…不安になってきた。


「じゃあ、左から覗くよ」


 アルコの話によれば、ゴブリンたちは左側にいたらしい。

 右側に残っている可能性もあるが、覚悟を決めるしかない。

 そっとT字路に駆け寄り、曲がり角の左側に顔を出す。

 …何もいない。まさか右側に?

 不安になって右側を見るが、そちらにもゴブリンらしき影は見えない。通路は薄暗いので、確実にいないとも言い切れないけど…。


「いねーみたいだな」

「そうね…足音も聞こえないわ」


 そうか、足音を聞けばよかったのか。今度から、目だけでなく音も意識しよう。


 T字路に全員集まり、周囲を調べる。


「やっぱりゴブリンはいないみたいね」

「どこかに移動したのか、アイツら?」

「左側の通路…この先にいるのかな」


 T字路を左折したその先。アルコが言うにはゴブリンたちが溜まっていた場所。

 ひとまず、そこまで進んでみることにした。


「相変わらず薄暗いね」

「ダンジョンって感じするよなー」

「しーっ」


 つい、不安になって会話を始めてしまう。

 それに乗ってくるアルコも、きっと不安なんだろう。

 成宮さんは不安じゃないんだろうか?

 そう考えたとき――


「ギィギィ…」

「ギャッギャッ」


 通路の先の少し開けた場所で、ゴブリンたちが座り込んで何やら話していた。

 扉のない小部屋といった感じだ。

 ゴブリンは、アルコが言っていたより数は少ない。

 1、2…3体しかいないようだ。それぞれが武器を持っているけど、弓矢を持つゴブリンはいないようだった。


「何を話しているのかしらね…」

「分かんねーけど、アットホームな会話とは思えねーな…」


 アルコが言っていた、たくさんのゴブリンたちはどこに行ったんだろう?

 すると、ゴブリンたちが立ち上がり、壁に向かって歩き始めた。


「…穴が開いてるわね」


 よく見ると、ゴブリンたちの行き先の壁、その地面に近い場所に穴が開いていた。

 ちょうどゴブリンが通れるサイズの、人間が通るには小さな穴が。

 ゴブリンたちは次々に穴に入っていき、ついにはいなくなった。

 戻ってこないのを確認し、僕たちは通路から移動する。


「行っちまったな」

「戻ってこないか注意しておこう」


 部屋の中を見ると、穴の他には扉が1つあるだけだった。

 床には何やらゴブリンたちが残していった、得体の知れない死体が落ちていた。


「気持ち悪…」

「穴の中を進むのは危険ね…扉に鍵は付いてないみたい」

「穴の先は気になるけど、扉の先に進んでみよう」


 扉を開けると、その先には通路が待っていた。

 通路をゆっくりと進むと、次第に天井が高くなっていく。


「これって…」

「先が予想できるぜ…」


 予想通り、通路の先には両開きの扉。左手には階段があった。


「ゴブリンたちがいる部屋の反対側に来たってことね」

「階段の先は、二階につながっていそうだね」

「どうするんだ?」


 さて、どうしよう。

 ゴブリンたちがいる大広間の反対側ということは、両開きの扉を開けるのは待ったほうが良さそうだ。

 階段の行き先は二階に通じる扉がありそうだけど、確かとは言えない。


「手間が省けたかもね。階段から調べましょう」

「まあ、そうだよな」


 結果の分かっている両開きの扉は後回しにして、階段を昇ることにする。

 松明の灯りがないため注意深く進むと、階段を折り曲がった先に再び松明が置かれており、扉がぼうっと姿を現す。

 やっぱり扉か。予想通りとはいえ、がっくりする。


「鍵がかかってるわね」


 これまた予想通り鍵がかかっている。

 そりゃそうだ。これが開いたら、弓使いのゴブリンたちは大慌てだろう。


「となると…」

「やっぱり大広間を攻略しないとダメね」

「でも、ゴブリンたちの身軽さは脅威だよ」

「何か方法があるはずよ…きっと、何か…」

「あー、えーと、いいかな諸君」


 アルコが毎度のように偉そうにする。


「何か案があるの?」

「ふふん、慌てるでないヒカリくん」

「なんで教授っぽい口調…?」

「アタシにな、いい考えがあるんだ」

「それってどういう…」

「あのな…」


 アルコの作戦を聞いた僕と成宮さんは戸惑った。


「そんなの上手くいくわけない…!」

「いや、でも相手はナメクジとは違って知性があるし…」

「でも…いや…確かにアルコの魔法なら…」

「悩むなよ、ヒカリ。どうせ死んでも次があるんだろ? アタシに任せておけって」

「まだ会ったばかりなんですけど…?」


 アルコの作戦は完璧とはいえないけれど、他に案もない僕らは、その作戦に賭けることにした。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ