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悪夢の塔  作者: 相沢メタル
第二章
50/154

10

「おそい!」


 死んだあと、石の祭壇で目が覚めた。

 祭壇の前ではアルコが不機嫌な顔で体育座りしている。

 やはり、戦士になったのだろう。

 だから、僕らも死んだあとに祭壇に招かれている。


「すげー痛かったよ。マジやべえ」

「嘔吐してたからな、この小娘」

「うっせー、言うなっての!」


 アルコは死のショックを持ち前の気力で乗り切ったようだ。

 僕らもゴブリンの市の痛みに悶え苦しんだあとだけに、その強さは驚くべきものだった。

 安堵すると同時に、案内人とアルコという組み合わせの最悪さが笑えてしまう。


「アルコ、大丈夫だった?」

「だいじょーぶなワケないって! なんだよ、死んでも痛みがついてくるのかよ。死んでるのに、ズルくね?」


 案内人がジロリとアルコを睨む。


「死んだ後に生き長らえているんだ。それくらいの代償は当然だろう?」

「そうだけど…そもそも、テメーは誰だ」

「案内人よ。私たちはそう呼んでる」

「あまり、案内してくれないけどね」

「ということで、案内させてもらっていいかな?」


 案内人がかしこまった風に姿勢を正す。


「巻神アルコ…お前も、この世界の戦士となる。価値ある死を繰り返し、主を倒す、これがお前に課せられた使命だ」

「勝手言いやがって。使命じゃなくて強制だろ? 拒否権ねーくせに」


 案内人がニヤリと笑う。


「よく分かってるじゃないか。ま、頑張れ。魔法も使えるようになったみたいだしな。その割に、死に方は無様だったが…」

「て、テメー見てたのか? 高みの見物か!」

「…と、小娘とじゃれあってる場合じゃない」


 案内人が、急に真顔になる。


「もうすぐ元の世界に戻る時間だ。俺は細かい説明はしない。お前らで勝手にやれ。ただ、これだけは言っておく。この小娘はお前たちと運命をともにする存在になった。つまり、寿命も共有される」


 祭壇の周囲にはろうそくが前回より多く並べられていた。

 アルコが加わったことで、失われるろうそくの数が増えることになる。1日に3本…じわじわと真綿で首を絞めるように終わりが近づいてくる。


「ど、どういうことだ?」

「周りのろうそくは僕らの寿命を示している。一人の死で一本のろうそくが消灯する。3人死ねば3本消灯する。すべて消えた時は…」

「き、消えた時は…」

「…よく分かってないんだよね」

「分かってないのかよっ」

「案内人が黙ってるからね。でも、死より辛い何からしい。その結末は避けなきゃいけない」

「お、おう…」


 神妙な雰囲気に、アルコが静かになる。


「ろうそくは、あと30本…10日で攻略しないと、ゲームオーバーね」


 成宮さんが冷静に告げる。

 10日…ゴブリンの強さを考えると、暗い気持ちになる。


「ところでアルコ。現実でのあなただけど…」

「あ?」

「現実でも連絡を取りたいの。作戦を練る事ができるでしょう? あなたはどこの学校に通ってるの?」

「都内だといいんだけど…」


 僕たちの問いかけに、アルコは慌てた様子でまくし立てる。


「あーあー! 現実、現実ね! 学校かー、まだお前たちのこと完全に信用したワケじゃないからなー、学校まで教えるのはちょっとっていうか、実際に会うのもどうかなーって」

「ちょ、ちょっとアルコ。真面目な話なのよ?」

「いやー、もうちょっと親睦を深めてたらなあ、惜しいなあー」

「さて、また騒がしくなってきたな。時間だ。現実に戻るがいい」

「まだ話は…!」


 成宮さんが焦るが、容赦なくあたりが光りに包まれ、僕らは現実に帰還する。




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