10
「おそい!」
死んだあと、石の祭壇で目が覚めた。
祭壇の前ではアルコが不機嫌な顔で体育座りしている。
やはり、戦士になったのだろう。
だから、僕らも死んだあとに祭壇に招かれている。
「すげー痛かったよ。マジやべえ」
「嘔吐してたからな、この小娘」
「うっせー、言うなっての!」
アルコは死のショックを持ち前の気力で乗り切ったようだ。
僕らもゴブリンの市の痛みに悶え苦しんだあとだけに、その強さは驚くべきものだった。
安堵すると同時に、案内人とアルコという組み合わせの最悪さが笑えてしまう。
「アルコ、大丈夫だった?」
「だいじょーぶなワケないって! なんだよ、死んでも痛みがついてくるのかよ。死んでるのに、ズルくね?」
案内人がジロリとアルコを睨む。
「死んだ後に生き長らえているんだ。それくらいの代償は当然だろう?」
「そうだけど…そもそも、テメーは誰だ」
「案内人よ。私たちはそう呼んでる」
「あまり、案内してくれないけどね」
「ということで、案内させてもらっていいかな?」
案内人がかしこまった風に姿勢を正す。
「巻神アルコ…お前も、この世界の戦士となる。価値ある死を繰り返し、主を倒す、これがお前に課せられた使命だ」
「勝手言いやがって。使命じゃなくて強制だろ? 拒否権ねーくせに」
案内人がニヤリと笑う。
「よく分かってるじゃないか。ま、頑張れ。魔法も使えるようになったみたいだしな。その割に、死に方は無様だったが…」
「て、テメー見てたのか? 高みの見物か!」
「…と、小娘とじゃれあってる場合じゃない」
案内人が、急に真顔になる。
「もうすぐ元の世界に戻る時間だ。俺は細かい説明はしない。お前らで勝手にやれ。ただ、これだけは言っておく。この小娘はお前たちと運命をともにする存在になった。つまり、寿命も共有される」
祭壇の周囲にはろうそくが前回より多く並べられていた。
アルコが加わったことで、失われるろうそくの数が増えることになる。1日に3本…じわじわと真綿で首を絞めるように終わりが近づいてくる。
「ど、どういうことだ?」
「周りのろうそくは僕らの寿命を示している。一人の死で一本のろうそくが消灯する。3人死ねば3本消灯する。すべて消えた時は…」
「き、消えた時は…」
「…よく分かってないんだよね」
「分かってないのかよっ」
「案内人が黙ってるからね。でも、死より辛い何からしい。その結末は避けなきゃいけない」
「お、おう…」
神妙な雰囲気に、アルコが静かになる。
「ろうそくは、あと30本…10日で攻略しないと、ゲームオーバーね」
成宮さんが冷静に告げる。
10日…ゴブリンの強さを考えると、暗い気持ちになる。
「ところでアルコ。現実でのあなただけど…」
「あ?」
「現実でも連絡を取りたいの。作戦を練る事ができるでしょう? あなたはどこの学校に通ってるの?」
「都内だといいんだけど…」
僕たちの問いかけに、アルコは慌てた様子でまくし立てる。
「あーあー! 現実、現実ね! 学校かー、まだお前たちのこと完全に信用したワケじゃないからなー、学校まで教えるのはちょっとっていうか、実際に会うのもどうかなーって」
「ちょ、ちょっとアルコ。真面目な話なのよ?」
「いやー、もうちょっと親睦を深めてたらなあ、惜しいなあー」
「さて、また騒がしくなってきたな。時間だ。現実に戻るがいい」
「まだ話は…!」
成宮さんが焦るが、容赦なくあたりが光りに包まれ、僕らは現実に帰還する。




