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悪夢の塔  作者: 相沢メタル
第一章
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第5話 『僕は彼女に一緒に戦おうと告げた』

 予想もしなかった彼女の言葉に、布団を跳ね飛ばし、カーテンを勢い良く開ける。


「ど、ど、どうして!?」


 こちらの剣幕に、質問した本人も驚いた顔をしている。


「やっぱり……当たりみたいね」

「あ、当たりだけど、こんな突拍子(とっぴょうし)もない……」


 毎晩、同じ悪夢を見て、同じように斬り殺される。

 人に言ったら笑われる、悪ければ狂人扱いされるたぐいの話。

 当然、友人のみならず、家族にも話したことはない。

 なぜ、彼女は僕のことを知っているのだろう。


 もしかして、ちょ、超能――、


「超能力じゃないわよ」


 先に釘を刺されてしまった。

 だとしたら、どうして。

 いや、まさか、彼女も同じ?

 あたふたとする僕を見て、彼女がくすっと笑う。


「ごめんなさい、笑い事じゃないわよね」


 一言謝ったあと、真面目な顔に切り替える。


「私もね……あの夢……悪夢を見ているの」

「悪夢……殺され続ける悪夢?」


 成宮さんが、こくんと頷く。

 そう言うだろうと予想はしていたのに、はっきりと口に出されるとやっぱり驚いてしまう。

 成宮さんも悪夢を見ていた事実と、同じ悪夢を見ているという不可思議な現象。


「クラスメイトが、同じ時期に、同じように元気を無くしていったから、気になっていたの」


 単なる体調不良ではない、深刻な憔悴(しょうすい)具合から、僕にただ事ではない何かが起きていると推測したのだという。

「僕はともかくとして、成宮さ……成宮ひかりさんにはそんなそぶりはなかったけど?」

「どうしてフルネームなの?」


 口元に手をあてて笑う。


「いや、なんとなく、ほら、話したことないし」

「私はあなたを知ってるわよ」


 思わずどきりとして、


「同じクラスメイトでしょ」


 がっくりと脱力する。


「じゃあ、成宮……ええと、成宮さんは具合が悪そうに見えなかったけど?」

「私の場合は単なる見栄かな」

「見栄?」

「体調が悪そうにしていると、周りを心配させちゃうでしょ?」


 それは見栄じゃなくて、気配りだと思うけど。

 思えば、彼女にはそういうところがあった。

 誰かが頼まなくても、苦労をかって出る性格。


「話を戻すけど、同じ悪夢ということは、鎧の……男は出てくる?」

「ええ、出てくるわ」

「その……毎回、剣で斬りつけられるよね?」

「ええ、残念ながら殺されてる」


 彼女と同じ夢を見ているという事実が信じられなくて、1つ1つゆっくりと確認していく。

 返答がある度に、自分の中の不安が溶けていくのを感じる。

 僕が狂っていたわけじゃない。

 ここに、同じ苦しみを持った人がいる。


「それにしても、本当に気が付かなかったよ。僕なんて、生きるのがイヤになってきてたってのに」

「そうね……私の場合、負けるもんかって思ってるのが大きいかな」

「負けるもんかって……勝つつもり?」


 僕の質問に、成宮さんは不思議そうな顔をする。


「そうよ? だって、悔しいじゃない。なんとか武器を奪い取ろうとするんだけど、難しいのよね……」


 驚いた。

 逃げることしか考えてなかった。

 鎧の男に勝つ、だって?

 そんなこと、可能なんだろうか。


「成宮さん」


 意思の強そうな目が、見返してくる。

 彼女となら、悪夢を終わらせることができるかもしれない。


「僕と、一緒に」


 戦って欲しい、と言うところでチャイムが鳴る。

 成宮さんは時計を確認した後、何も言わずに立ち上がり、保健室の扉へと歩いていく。

 追いすがろうとして、急に自分がみじめに感じられた。

 僕は彼女と対等だろうか。

 彼女は抗おうとしている。

 僕は諦めて、逃げ続けていた。


「ねえ」


 彼女の声。

 顔を上げる。


「放課後、屋上で待ってる」


 僕はとにかく頷く。


「一緒に戦いましょう」


 僕が望む言葉を、彼女から与えてくれた。

 だから、僕も精一杯応える。


「うん、一緒に戦おう」


 彼女は照れたように笑い、保健室を出ていった。

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