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杖についての謎が解明した後、部屋の出入り口を調べると、道を塞いでいた鉄格子が上がり、先に進めるようになっていた。
「部屋ごと罠だったのね…」
「まあ、ゴブリンのことを考えると、こっちに進むしかなかったけどね」
魔法陣は光を絶やし、部屋の中にもめぼしい物は無かった。
ここまで一方通行で背後に戻る理由もない。
「先に進もう」
入ってきた入り口から見て、正面の出入り口を進む。次第に天井が高くなり、松明の火が届かないせいで、天井は真っ暗になり、高さが分からなくなる。
地上に違いかと思ったけど、案外地下深くだったらしい。
魔法によって空間が歪められていなければ、だけど。
しばらく進むと、重厚な鉄製の扉が姿を現した。その脇には階段があり、上まで続いているらしいけど、暗さのせいで様子が分からなかった。
「鍵は付いてないみたいね」
扉は両開きの開き戸で、重厚な見た目に反して鍵は付いておらず、今すぐにでも開けられそうだ。
「どっちに進むんだ?」
「そうね…こういう扉の先には何かしら良くないことが待ってることが多いのよね…でも、階段は…」
「明かりがないとね。危険だと思う。天上にナメクジが張り付いていたこともあったし」
「げ、ナメクジ? さっきの通路みたいなデカいやつが?」
「いや、これくらいの小さいやつだけど」
パイナップル程度のサイズに手を広げると、アルコは嫌悪感をあらわにした表情を浮かべた。
「じゅーぶんデカいって!」
そういやそうか。
大きなナメクジと遭遇しすぎて、感覚が麻痺しているらしい。
「暗い道は危険ね。扉の先に危険が待っていても、明るければ何とかなると思うわ」
「そうだね。扉の先に進んでみよう」
扉に手をかけると、かなりの重さだった。
情けないけど、成宮さんに手助けしてもらって、ゆっくりと扉を押し開けていく。
「おい! めちゃくちゃ広いぞ!」
開いた扉の隙間から、アルコが部屋の中に躍り込む。
「ちょっと、アルコ…!」
「大丈夫だよ、何もいないみたいだ…う?」
アルコの頭に矢が突き刺さる。深々と。
アルコがうしろに倒れ伏す。
「アルコぉっ!」
矢が放たれたのは上から。
仰ぎ見ると、武装したゴブリンたちがこちらをニヤニヤと見下ろしていた。




