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悪夢の塔  作者: 相沢メタル
第二章
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 すぐに騒がしくなるアルコを注意しながら、ゴブリンと遭遇した扉から離れ、通路をまっすぐに進む。

 何もない状態がしばらく続き、このまま行き止まりだったらどうしよう…そう考えていた矢先、左に折れた曲がり角に出会った。


「アルコは下がってて」

「僕が見てこよう」


 緊張感が伝わったのか、アルコは神妙な顔で、僕と成宮さんの背後へおずおずと下がった。

 曲がり角へ静かに駆け寄り、その先を調べる。


「ナメクジだ」


 前のダンジョンで遭遇した中型のナメクジがいた。

 ただし、今回はこちらを向いていたため、気づかれてしまった。


「おっ、おい! なんだよ、ありゃ。な、ナメクジか? すげーでけえぞ!?」

「アルコ、静かに。そのまま下がってて。大丈夫、なんとかするから」

「お、おう。なんとかしろ! …できるのか?」

「成宮さん、援護お願い」

「分かった。ごめん、少し時間を稼いで」


 騒ぐアルコを尻目に、冷静に連携をとる。

 大丈夫だ。もう倒し方は分かってる。それに、主に比べれば脅威じゃない。

 成宮さんの時間を稼ぐために、接近し、剣で斬りかかる。

 どうせ、刃は通らない…ところが、ずぶ、と剣がナメクジの肉に沈んだ。


「剣が…効くようになってる?」


 祝福の効果だろうか。

 そういえば、案内人が「体力も磨かれた」と言っていた。

 力…攻撃力が上昇していると考えて良さそうだ。

 とは言え、少しだけ刃が通るようになった程度で、致命傷は与えられない。

 ナメクジが怒った様子で接近してくる。


「準備できた…いくわよ!」


 成宮さんがファイアアローを構えていることを確認し、壁際に身を寄せる。


――しゅぼおっ。


 「ぬばあぁっ」


 ファイアアローがナメクジにぶち当たり、身を焦がす。

 たまらずナメクジが体内を露出する。

 その隙を逃さず、剣を体内に突き立てると、ナメクジは少し痙攣した後、動かなくなった。


「ふう…上手くいったわね」

「成宮さんのファイアアローのおかげだよ」

「そんなことないわ。危険に身を晒しているのはあなただもの」


 二人で勝利を喜びあっていると、アルコがパタパタと近寄ってくる。


「おいおいおい! な、なんだよ今の!」

「ナメクジだね。モンスターサイズの」

「ち、ちげーし! そこも気になるけど! そうじゃなくて、火! 矢だよ!」

「ファイアアローよ」

「しれっと言うなって! なに? 魔法? ファンタジー過ぎんだろ…」


 ひとしきりアルコが興奮した後、魔法を手に入れた経緯とファイアアローの効果について説明した。


「はあ…魔法の石とネックレスってわけか」

「そうね、見つけたのは偶然」

「ファイアアローの使い方も、主との戦いで思いついたんだよ」

「ふむ…するってーとなんだ。アタシが持ってるこの杖、それと見つけた石。これも魔法が使えるのかな?」


 アルコが悪夢に訪れて最初に見つけたのは杖だった。

 そして、次に発見した木箱から緑のローブと石を発見していた。

 今、石は杖にはめられている。


「おそらく…条件を満たせば、魔法が使える…かも知れない」

「マジか…じょ、条件ってなんだろう?」

「うーん、ファイアアローは松明の火を吸い取ってるけど…」

「まず、その石がどういう力を秘めているのか分からないとね」


 成宮さんの回答にアルコががっくりとうなだれる。


「偶然に頼るしかないってか…ああ! 早く使ってみてー!」

「好奇心はさておき、杖の秘密は早めに解明しておきたいわね。きっと、戦いが楽になるはず」

「これならどうだ? えいっ、えいっ!」


 アルコが松明に杖を近づけるが、石はなんの反応も示さない。

 どうやら、火に関係する魔法ではないらしい。


「残念だけど、すぐには分からないと思うわ。先に進みましょう」

「ちえっ」


 口を尖らせつつもアルコは自分から最後尾に移動した。

 ナメクジとの戦闘で、少しばかり信用を得たらしい。

 ナメクジの死骸を避けて、先に進む。

 しばらく進むと、再び左に折れる曲がり角があった。

 連携を取り、角の先を覗くと、今度は何もいなかった。

 代わりに、通路は少し開けた小部屋に続いていた。


「何もいない…みたいだね」

「前から思ってたけど、悪夢って、夢の中なのに寒々しいわよね。この部屋も何もないせいか、寒く感じる…」

「痛みも感じるんだろ? ホントに寒いんじゃねーの、この中」

「まあ、そうなんだけど…どこまでが夢で、どこまでが現実の感覚なのか分からなくなっちゃってね」

「ふうん。まだ死んでねーから、リアルな夢って感じしか分かんねーな…」


 アルコの物言いに、僕と成宮さんが苦笑した時、突然それは起こった。


――ガコオォン!


 地響きと大きな金属音がしたかと思うと、さっき入ってきた小部屋の入り口が鉄格子で塞がれていた。


「罠!?」


 急いで鉄格子を調べるが、取っ手もなく、どうにも開きそうにない。


「他に出口はねーのか!?」


 部屋を突っ切り、反対側を目指すと出口があった。

 しかし、こちらも鉄格子が塞いでいる。

 部屋を調べるが他に出口は無さそうだった。


「どうする…? 鉄格子を壊す方法は…」

「待って、他に出口がないか、探して…あっ!」

「こ、これって!?」


 突然部屋の四隅が光ったかと思うと、魔法陣が浮かび上がった。

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