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悪夢の塔  作者: 相沢メタル
第二章
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「ちょっと…指を差さないでくれる?」

「はーん? この指が気になるのかよ? ほれほれ、ほっぺたぷにぷにしちまうぞ」

「やめてったら!」


 この巻神という少女、口だけでなく性格も難あり、だ。見た目も性格も、どうも成宮さんとは正反対、水と油という感じがする。

 とはいえ、聞きたいことは色々あるわけで…。


「えーと、いいかな。巻神…アルコさん?」

「だーかーらー、さんとかキモいって! アルコでいーよ。てか、そう呼べ」


 ぐるりとこちらに振り向き、ずびしと指さしてくる。


「じゃあ…アルコ、色々聞きたいことがあるんだ」

「ダメだな」

「どうしてよ!」


 珍しい。

 さっきから成宮さんが怒りっぱなしだ。

 漫才のボケとツッコミのような感じに似ている。


「アタシは名乗ったんだ、次はアンタらの番…だろ?」

「まあ…そうね。私は成宮ひかり」

「なーんか、いかにもな名前だなぁ。マジメそー」

「あ、あのねぇ!」

「ま、まあまあ、落ち着いて」


 一触即発の雰囲気を漂わせつつ、自己紹介を済ませる。


「なーるほどね。成宮は…ヒカリ、だな。そっちのボーイは…オマエ、だな」

「オマエ…」

「ボク、でもいいんだけど?」

「オマエでいいよ…」

「私も呼び捨てなのね?」

「アタシもアルコって呼んでよ。で、ヒカリね。なんか似合ってるし?」

「あ、ありがとう」


 性格が悪いというより、表裏がなくて、表現がストレートなだけかもしれない。


「やっぱボクのほうがいいか? 顔も女っぽいしー」


 …前言撤回。


「アルコさ…いや、アルコ。これまでのことを教えてくれる?」

「こっちも気になること盛り沢山だけど、長くなりそうだから後回し。まずはこっちから話すかんな」


 巻神アルコが言うには…。


 目覚めると扉が3つある部屋で横たわっていた。服装は奴隷のようにボロボロで、かなり焦ったらしい。

 しばらくして落ち着いたら、部屋と扉を調べ始めたけど、中央の扉は鍵がかかっていて開かなかった。

 まずは左側の扉を開けて部屋を調べたものの、穴の空いた杖以外、何も落ちてなかったらしい。

 杖とか本物かよ、すげー。でも、いらねー。

 …と思ったらしいけど、転ばぬ先のなんとやら、一応持っていくことにして、今度は右側の部屋を調べたと。

 右側の部屋には木箱があって、すわ宝箱と大喜び。罠のことも考えず、勢い良く開けたら中には緑色のローブと、丸い石が1つ転がっていた。

 緑のローブは古臭くて、なんだかヤダなと思いつつ、着ておくか、と思った次の瞬間にはローブを装着していた。


「まるで魔法みたいにな!」


 丸い石は明らかに杖にはまりそうなので、はめこんでみたら、ぴたりとはまり、今もそのままらしい。


「意味わかんねーままだけど」


 と、杖と石の関係は不明である、と。

 木箱の中身は以上で、このままじゃ先に進めないと焦ったものの、ローブの中に鍵が入ってて、それで中央の扉を開けたという。


「なるほど…私たちの境遇に比べると、なんだか用意がいいわね…看守もいないし」


「それで、僕たちに遭遇したのかな?」

「ん…だいたいそんな感じだな」


 なんだろう?

 目を泳がせて、そわそわしている。

 何か隠しているのか?


「じゃ、今度はそっちの番…あ」


 アルコが驚きと恐れの入り混じった表情を浮かべる。

 その視線は僕らの背後に向けられていた。

 振り向くと――


「ご、ゴブリン?」


 ファンタジーでよく目にする、あの緑色のおぞましい子鬼。子供の頃からゲームで慣れ親しんだ醜悪な存在が、廊下の曲がり角にいた。

 むき出しになったボロボロの歯や、目やにが溜まり黄色く汚濁した目。どこから調達したのか、何枚も重ねられたボロボロの布の服は、ところどころ赤黒く、何者かの血がこびりついていた。

 目を合わせるだけで怖気が走る。ゲームの中の存在と、実際に目にするのとでは大違いだ。


 ゴブリンたちはこちらに気がついていない。

 この暗がりのせいか、目が悪いのか。

 とにかく、まだ間に合う。


「アルコ、扉の向こうに」


 成宮さんが極力落ち着いた声でささやく。


「あ…う、うん」


 アルコは、怖がりながらも、素直に従う。


――カツン。


 杖が扉にあたり、小さな、それでもゴブリンが気がつくには十分な音が響いた。


「ギッ?」


 ゴブリンたちがこちらを見る。

 その顔に獲物を発見した喜びが広がる。

 まずい。


「早く!」


 焦るべきではないけど、思わず急かしてしまう。

 アルコは成宮さんに背中を押され、ワタワタと扉の向こうに姿を消した。

 僕も盾を構えつつ後退する。


――カツンッ!


 盾に何かが当たる。

 地面に転がるそれを見る。


「矢…か!」


 道具を使うということは、知恵があるということだ。

 ナメクジとは違う底しれぬ恐怖を感じた時、成宮さんに服を引っられた。


「逃げるわよ」

「さ、さっさとしろ!」


 アルコの悪態に苦笑しながら、扉の向こうに逃げ込んだ。

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