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悪夢の塔  作者: 相沢メタル
第二章
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「悪夢から開放されたと思ったのにね」


 ここは放課後の学校、その屋上だ。

 雲は高く、空は紫がかった青みを帯びている。

 少し、肌寒くなってきた。


「悪夢を見続けさせて、一体何をさせたいんだろう。案内人は知らないみたいだけど…」

「どうかしら、怪しいわよ、アイツ」


 アイツ呼ばわりだ。まあ、胡散臭いやつだし。


「それに、どうして悪夢を見る様になったか。これも気になるわ。原因があるなら、それを解決すれば悪夢も見なくなるかも…」


 成宮さんは柵にもたれ、空を仰いでため息をつく。


「なんてね…しばらくは悪夢と付き合うしかなさそうな予感がする。次の主で終わり、という気もしないし…」


 それは同意。どうも、まだまだステージは続きそうだ。

 祝福は成長システムなわけで、成長させるからにはその発揮場所もセットだろう。

 祝福が限界になったら、悪夢も終わるのか…?

 それはどれだけの日々、ステージが必要なのか…。


 気持ちが暗くなる。

 せっかく主を倒したというのに、達成感がない。


「後楽園のギューミンカフェにでも…行く?」


 僕の提案に、成宮さんはほんの少し微笑む。


「そうね…でも、ちょっと疲れちゃったから、今日は早めに帰ろうと思うの」

「そっか…特訓も無しだね」

「ごめんね。でも、特訓はもう必要ないかも知れないわね」


 悪夢の中の実践で、十分成長できるということだろうか。

 まだまだ学びたいことはいっぱいあるんだけどな…でも、迷惑をかけるわけにはいかない。


「それじゃ、今日も8時に」

「そうね…8時に」


 そう言って、僕らは夜を迎えた。


―――――


 少し心配だったけど、約束通り8時に祭壇前で落ち合えた。

 体がこの時間に寝ることに馴れているせいもある。

 案内人は相変わらずこちらをからかってきたけど、放っておいて悪夢の世界に降り立った。


「ここは…」


 泉はなく、バウニャンもいない。 

 看守のいた小部屋…に構造は近い。

 ただ、石畳から雑草がはみ出していたり、ところどころ土が露出していることから、地上に近い…あるいは地上と地続きのように思える。

 前回がかなりの地下だとすれば、今回はもう少し浅い印象だ。


「草が生えてるわね…」


 しゃがみこんで、草に触れる。


「うん、普通の草だ。現実と同じ…たぶん」


 悪夢の世界について何も知らない僕らは、たかだか草を見て驚く。

 現実とどこまで似通っているのか…けど、モンスターは非現実的な存在だ。ゲームの世界でなら目にするけど、もっと生生しくて、恐ろしくて凶暴で手に負えない。


「さて…新しい場所、新しいスタート地点だけど…」


 小部屋には扉が3つ。

 正面、左手の壁、右手の壁に。

 背後はただの壁で、何も無いようだった。


「正面の扉は鍵付きみたいね…あら?」


 成宮さんが驚いた声をあげる。

 どうしたんだろうと、近づくと、驚いた理由がわかった。


「鍵が…開いてるね」

「ええ…前回の悪夢じゃ、そんな扉無かったのに」


 前回と違う悪夢だから?

 そうとも言えるけど、それじゃ鍵の意味がない。

 先に進めるからありがたい…でも、鍵はどこにあるんだろう?


「鍵付き扉の先は、多少なりとも重要な場所だと思うから、ひとまず周囲の扉を調べようと思うの」

「異議なし。まずは…左側から」


 前回、自分の小部屋が左側にあったこともあって、なんとなく左側を調べたかった。


 左右の扉はどちらも鍵が付いていない。

 左側の扉をそっと開ける。

 

「…何もないね」


 部屋のサイズは小部屋より少し狭いぐらい。

 土の露出した石畳があるだけで、めぼしい物は見当たらない。


「鍵がかかっていた様子もないし…いえ、床に落ちていたなら分からないけど…気になるところは無さそうね…」


 何もなかったことに安堵と落胆を感じつつ、部屋を後にする。

 次は右側の部屋だ。


 鍵のかかっていない扉を静かに開ける。

 そこには…。


「木箱…ね」


 そこには、木箱が置かれていた。

 ただし、空っぽの。

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