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「祝福? 主を倒したのに?」
「あれは、主じゃなかったのか?」
僕らの焦った様子に、案内人はニヤニヤと楽しそうだ。
「そうだな、あれは主だ。感心したぞ、こんなに早く倒せるとは。ろうそくも余ってるじゃないか。祝福の効果もまだ余地がありそうだな」
「感心しなくて結構。説明だけ頂戴」
「祝福はいいのか?」
「ぐっ…必要よ、残念ながらね。でも、説明のあと」
「ま、いいだろう」
案内人は、尊大な態度のまま話し続ける。
「お前たちが倒したのは…第一の主だ」
「だ、第一?」
「そういうこと…」
成宮さんが額に手をやり天を仰ぐ。
第一? つまり、それって…
「次の主がいる、ということだな。前回より手強い。当然、あちらの世界もより手強くなる」
「ステージ1ってことか…」
「それで、何ステージあるの? この悪夢は」
「そいつは教えられないな」
「どうして」
「教えたら楽しみが減る…はは、怒るな。冗談だ。俺も知らんのだ。先々の事はな」
「でも、案内人なんでしょう?」
「俺が知るのは大体のルールだけだな。むしろお前たちについてのほうが詳しいぞ」
「死を覗いてるんでしょう?」
「覗いてるとは言葉が悪いな。よりよき死を迎えるよう、監視してるんだよ」
「より言葉が悪い気がするけど…」
「ところで次の祝福のことだが…その前に」
案内人が僕を指差す。
「お前、祝福の効果を実感しているか?」
「集中力については…」
「それだけじゃない。体力もだ」
「そうか…」
ナメクジに対して剣を投擲した。
姿勢は集中力によるものかもしれないけど、現実の筋力じゃ、届くわけがない。
「剣士とナメクジとの戦いで、成長してたのね」
「激戦だったからね」
「うむ、すばらしい」
ぱちぱち、と案内人が拍手する。
「そんな激戦も、祝福を受けていないと無駄だ。強くなれないからな…さて、次の祝福はどちらが受ける?」
「そりゃ…成宮さんだよ」
「待って。彼が祝福を受けた場合、更に強くなれるの?」
「もちろん。可能性の力だからな」
成宮さんがあごに手を当て考え込む。
「バランスを取るか、突き抜けるか…」
「バランスを取る、でいいんじゃないかな。どちらか片方がやられても不利になりにくいし」
「魔法があるから、祝福がなくても大丈夫かな…とも思ったけど、片方がやられることを考えると…そうね、今回は私が受けさせてもらうね」
「どうぞどうぞ」
成宮さんが案内人の前に立つ。
「結論はでたのか?」
「今回は私が祝福を受けるわ」
「よかろう。では…」
成宮さんの胸に光が吸い込まれる。
「これが祝福…実感ないのね」
「はは、まだ可能性を広げただけだからな。何も変わってない。目に見えるものでもないしな」
「ふうん…どう可能性をのばしていくか考えないとね。また放課後、よろしくね」
成宮さんがウインクする。
どきまぎと親指を立てて、了解のポーズを取る。
「さて、そろそろ現実に帰るがいい」
「知りたいことは何もわからず、悪夢が続くのね…」
「きっと、終わりはあるよ」
「そうね…そう願うわ…」
僕らはいつしか眠りについていた。
そして、現実に戻る。




