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悪夢の塔  作者: 相沢メタル
第一章
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「祝福? 主を倒したのに?」

「あれは、主じゃなかったのか?」


 僕らの焦った様子に、案内人はニヤニヤと楽しそうだ。


「そうだな、あれは主だ。感心したぞ、こんなに早く倒せるとは。ろうそくも余ってるじゃないか。祝福の効果もまだ余地がありそうだな」

「感心しなくて結構。説明だけ頂戴」

「祝福はいいのか?」

「ぐっ…必要よ、残念ながらね。でも、説明のあと」

「ま、いいだろう」


 案内人は、尊大な態度のまま話し続ける。


「お前たちが倒したのは…第一の主だ」

「だ、第一?」

「そういうこと…」


 成宮さんが額に手をやり天を仰ぐ。

 第一? つまり、それって…


「次の主がいる、ということだな。前回より手強い。当然、あちらの世界もより手強くなる」

「ステージ1ってことか…」

「それで、何ステージあるの? この悪夢は」

「そいつは教えられないな」

「どうして」

「教えたら楽しみが減る…はは、怒るな。冗談だ。俺も知らんのだ。先々の事はな」

「でも、案内人なんでしょう?」

「俺が知るのは大体のルールだけだな。むしろお前たちについてのほうが詳しいぞ」

「死を覗いてるんでしょう?」

「覗いてるとは言葉が悪いな。よりよき死を迎えるよう、監視してるんだよ」

「より言葉が悪い気がするけど…」

「ところで次の祝福のことだが…その前に」


 案内人が僕を指差す。


「お前、祝福の効果を実感しているか?」

「集中力については…」

「それだけじゃない。体力もだ」

「そうか…」


 ナメクジに対して剣を投擲した。

 姿勢は集中力によるものかもしれないけど、現実の筋力じゃ、届くわけがない。


「剣士とナメクジとの戦いで、成長してたのね」

「激戦だったからね」

「うむ、すばらしい」


 ぱちぱち、と案内人が拍手する。


「そんな激戦も、祝福を受けていないと無駄だ。強くなれないからな…さて、次の祝福はどちらが受ける?」

「そりゃ…成宮さんだよ」

「待って。彼が祝福を受けた場合、更に強くなれるの?」

「もちろん。可能性の力だからな」


 成宮さんがあごに手を当て考え込む。


「バランスを取るか、突き抜けるか…」

「バランスを取る、でいいんじゃないかな。どちらか片方がやられても不利になりにくいし」

「魔法があるから、祝福がなくても大丈夫かな…とも思ったけど、片方がやられることを考えると…そうね、今回は私が受けさせてもらうね」

「どうぞどうぞ」


 成宮さんが案内人の前に立つ。


「結論はでたのか?」

「今回は私が祝福を受けるわ」

「よかろう。では…」


 成宮さんの胸に光が吸い込まれる。


「これが祝福…実感ないのね」

「はは、まだ可能性を広げただけだからな。何も変わってない。目に見えるものでもないしな」

「ふうん…どう可能性をのばしていくか考えないとね。また放課後、よろしくね」


 成宮さんがウインクする。

 どきまぎと親指を立てて、了解のポーズを取る。


「さて、そろそろ現実に帰るがいい」

「知りたいことは何もわからず、悪夢が続くのね…」

「きっと、終わりはあるよ」

「そうね…そう願うわ…」


 僕らはいつしか眠りについていた。

 そして、現実に戻る。

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