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鉄製の扉を開けると、松明が煌々と照らす通路と、その先に豪奢な赤い扉があった。
扉以外に脇道はない。どうやら、扉の先に進むしかないらしい。
それにしても、この扉…。
「今までで一番凝った作りの扉ね」
「化物みたいな模様に、これは…金なのかな。複雑な文様で飾り付けられてるね」
「扉自体も赤色で派手だし…これって」
「たぶん。ここが主の部屋」
案内人が言っていた、主はここにいるに違いない。そうでなくても、強力な何者かがこの先に待っている気がする。心してかからなければ。
「準備はいいかな?」
成宮さんが手持ちの装備を確認し、頷く。
「じゃ、開けるよ…」
ゆっくりと扉を開ける。扉が開いた隙間から、ひんやりとした空気が流れ込んでくる。
扉を開け、二人でそろそろと中に入る。
大きな部屋だった。
天井は暗さのせいで高さが伺いしれない。
部屋自体のサイズは学校の体育館…とまではいかないが、それと近い広さだ。
扉近くの壁には松明が等間隔で付けられており、それが部屋の中を一周しているようだ。
壁際は明るいが、部屋の中央は暗くて何かあるのか分からない。
――がちゃり。
いきなり背後で金属音が鳴る。
背後の扉からだ。
「ダメ…鍵がかかってる」
成宮さんが調べると、扉は閉じられてしまったらしい。中に入ると閉じ込められる仕組みだったのか。これはますます主の存在を意識する。
「気をつけながら、進もう」
部屋の中央に行ってみるしかない。
暗さに怯えながら、ゆっくりと近づく。
――ちゃぷり。
大きな水たまりがあることに気がつく。
足が沈むほどじゃない、単なる水たまり…ただし、バスケットコート半分ほどのサイズ。
「下がろう」
不穏なものを感じ、二人で後退したその時――
「ぶおぉぉぉぉんむ」
野太い、サイレンの音を低音にし、限りなく音量を上げたような奇声をあげ、天井から巨大な化物が降ってきた。
「こ、コイツは…」
「デカすぎるわ…」
天井から降ってきたのは巨大ナメクジ。
そのデカさは電車1車両ほど。
シルエットも、通路で遭遇したヤツより醜い。
まるで体を維持するのに失敗したかのように、あまった肉が体を覆うように全体にぶら下がっている。
「コイツが主…か!」
僕らは恐れおののきながら、武器を構えた。




