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悪夢の塔  作者: 相沢メタル
第一章
35/154

35

 鉄製の扉を開けると、松明が煌々と照らす通路と、その先に豪奢な赤い扉があった。

 扉以外に脇道はない。どうやら、扉の先に進むしかないらしい。

 それにしても、この扉…。


「今までで一番凝った作りの扉ね」

「化物みたいな模様に、これは…金なのかな。複雑な文様で飾り付けられてるね」

「扉自体も赤色で派手だし…これって」

「たぶん。ここが主の部屋」


 案内人が言っていた、主はここにいるに違いない。そうでなくても、強力な何者かがこの先に待っている気がする。心してかからなければ。


「準備はいいかな?」


 成宮さんが手持ちの装備を確認し、頷く。


「じゃ、開けるよ…」


 ゆっくりと扉を開ける。扉が開いた隙間から、ひんやりとした空気が流れ込んでくる。

 扉を開け、二人でそろそろと中に入る。

 大きな部屋だった。

 天井は暗さのせいで高さが伺いしれない。

 部屋自体のサイズは学校の体育館…とまではいかないが、それと近い広さだ。

 扉近くの壁には松明が等間隔で付けられており、それが部屋の中を一周しているようだ。

 壁際は明るいが、部屋の中央は暗くて何かあるのか分からない。


――がちゃり。


 いきなり背後で金属音が鳴る。

 背後の扉からだ。


「ダメ…鍵がかかってる」


 成宮さんが調べると、扉は閉じられてしまったらしい。中に入ると閉じ込められる仕組みだったのか。これはますます主の存在を意識する。


「気をつけながら、進もう」


 部屋の中央に行ってみるしかない。

 暗さに怯えながら、ゆっくりと近づく。


――ちゃぷり。


 大きな水たまりがあることに気がつく。

 足が沈むほどじゃない、単なる水たまり…ただし、バスケットコート半分ほどのサイズ。


「下がろう」


 不穏なものを感じ、二人で後退したその時――


「ぶおぉぉぉぉんむ」


 野太い、サイレンの音を低音にし、限りなく音量を上げたような奇声をあげ、天井から巨大な化物が降ってきた。


「こ、コイツは…」

「デカすぎるわ…」


 天井から降ってきたのは巨大ナメクジ。

 そのデカさは電車1車両ほど。

 シルエットも、通路で遭遇したヤツより醜い。

 まるで体を維持するのに失敗したかのように、あまった肉が体を覆うように全体にぶら下がっている。


「コイツが主…か!」


 僕らは恐れおののきながら、武器を構えた。

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