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悪夢の塔  作者: 相沢メタル
第一章
34/154

34

「な、なんとか倒せたわね…」

「うん…!」


 崩れ落ちた剣士は、もう動きそうになかった。

 魔法陣を見ると、赤黒い色に戻っている。どうやら、機能を停止したらしい。


「さっきの戦いだけど…あなたの動きが熟練者のそれに見えたわ。相手の呼吸を掴んでた」

「それでも、相手のほうが上手だったけどね。成宮さんの弓矢がなければ、いずれやられていたと思う」

「それでも、すごい動きだった。申し訳ないけど、特訓を始めたばかりのあなたが繰り出せる動きとは思えなかった」


 剣士の剣が迫ったあのとき、敵の動きが遅く感じられた。

 いや、よく見えるようになっていた。


「相手の動きが…極度の集中状態に入ると、そういったことがあるとは聞いたことがあるけど…まさか」

「祝福の効果…か」


 そうに違いない。

 祝福の効果で、限界を超えた集中力が発揮されたのだ。これまでよりも強力だったのは、剣士との戦いで経験がみるみる溜まったのかも知れない。


「だとすると、侮れないわね、祝福の効果は。これがあるとないとじゃ、戦闘難易度が大きく変わる」

「そうだね。ただ、万能でもないかも」

「どういうこと?」

「すごく集中力が高まった瞬間があって、その後も集中力は持続してたんだけど、だんだん普段に戻っていった気もするんだよね」

「持続時間が限られている…?」

「分からない。単純に、脳の疲れとか、体力不足かも知れない。集中するのって、疲れるでしょ?」

「なるほど…でも、祝福を受けたら色々鍛えてみたほうが良いことに違いはないか」


 祝福の効果については、おいおい案内人に聞いてみてもいいかもしれない。

 そう結論づけて、剣士の装備を調べることにする。


「うーん、こいつの剣を使えないかと思ったけど、鞘がないわね…」

「盾も欲しいけど…これも持ち運び方がわからないな。…一応持っていってみようかな」

「大丈夫? 盾って重くないのかしら」

「ん…よいしょっと。ううん、ちょっと重いかも。種類によるのかな?木の盾とかなら軽いだろうし。これは鉄製みたいだね」

「防御力は期待できるけど、身軽さが損なわれるわね…」


 盾と剣を構えて軽く動き回ってみる。

 盾を持った左半身が随分重い。母さんの手伝いで、目一杯の買い物袋を持ったときぐらいあるかも。ペットボトル2本と、さらに細かな品物…そう考えると、5キロ以上はありそうだ。

 剣を振るうとき、どうしても大振りになり、振り終わった後は姿勢を正すのに時間がかかる。意識していないと、前かがみになりがちだ。

 盾を構えてみると、かなり視界が奪われることが分かった。盾の大きさは小学校のプールの時間に使ったビート板、あれよりも少し大きいくらいだけど、構えると左側と左下の視界が覆われる。

 これは、まだ僕には早いかもしれない…。


「ちょっと使いづらいかもしれないから、問題があったら捨てようと思う。ただ、今後のことを考えると慣れておきたいけど」

「分かった」


 部屋についても調べる。

 魔法陣と部屋の四隅にある松明。

 それと、鉄製の扉。

 どうやら、扉以外のに気になるところはなさそうだ。


「それじゃ、先に進もうか」

「ええ」


 剣士の部屋を後にする。

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