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床のスイッチを見分けながら、ゆっくりと通路を進む。
「なかなか見つからないわね」
「あ、そこにあるよ」
「え? …ホントだ」
「おっと、ここにも」
「すごいわね、こんなに小さいのに」
見慣れてきたせいなのか、それとも思わぬ才能があったのか、僕のほうが床のスイッチを見つけるのが上手かった。普段、日常でこうした特技に気がつくことはなかったのに…。
「この調子なら、問題なく進めそう」
「ん…そうだね。あ、また」
小さなスイッチを避けつつ奥に向かう。
「どうやらスイッチを探すのはあなたに任せて、私は周囲の警戒に専念したほうがよさそうね」
「そうだね…お願いできるかな」
役割分担が決まったところで、各自の作業に専念する。
しばらく進んだ時だった。
「ね…何か音がしない?」
「え…?」
集中していて、気が付かなかったが、確かに水滴が落ちるような音がする。少し粘度のある、どちらかというと「ぼちゃっ」という音だ。
「前の方から聞こえるけど…あ、すぐそばでも聞こえた」
「雨漏りでもしてるのかな?」
2人揃って天井を見上げると――そこにはびっしりとナメクジが張り付いていた。
「き、きゃあ…!」
「す、ストップ」
悲鳴をあげようとした成宮さんの口を手で塞ぐ。
無言のまま、成宮さんが涙目でぷるぷる首をふる。
天井のナメクジたちは、小型犬程度の大きさだった。さっき戦ったナメクジよりは小さいけど、同じような能力を持っているなら、非常に危険だ。
「ゆっくり、かつ急いで進もう。できるだけ静かに」
「わ、分かったわ。ごめんね、取り乱して」
再びスイッチを探す作業に戻るが、天井が気になって集中できない。青色の体内と黄色の触手が思い出されて、意識が中断される。
――ぼとり。
音が背後を振り返ると、ナメクジが落ちていた。
――ぼとり。
今度は横に。
「な、成宮さん…」
「ええ…」
「急ぐよ!」
もう時間がない。床に這いつくばり、血眼でスイッチを探す。襲いかかってこようとするナメクジを成宮さんが果敢に蹴飛ばして追いやる。
「ここもスイッチ…ここにも…!」
「あっち行け!」
「ここは…あぶない、スイッチだ…う、側にもう1つ…!」
「えいっ、えいっ!」
限りなく速度を増した亀のように進み、ようやくスイッチのない地帯にたどり着く。
「これで終わり? 周囲の壁にも槍の穴は空いてないみたい!」
「そうとなれば…!」
立ち上がり、急いでその場を後にする。
恐ろしくて、背後は振り返れない。
――――
通路の先には右に曲がった角があり、そこを曲がった突き当りには扉と、更に右への曲がり角があった。
頭の中で経路を確認する。
↑→→→→扉
↑ ↓
↑
罠
罠
罠
↑
扉には鍵はかかっておらず、中には木箱が1つ置かれていた。
「役に立つものが入ってるといいんだけど…」
木箱を開けると、中には3つのアイテムが入っていた。
1つ目は小さなナイフ。
「私が持ってていいかな?」
僕は既に剣を持っていたので、ナイフを成宮さんに渡す。
2つ目は不思議な輝きを見せる少し小さな石。
「きれいな石だね」
「ほんとね…なにかの鉱石かしら」
「これも持っててもらおうかな」
ほんの小さな石なので、成宮さんに持っててもらうことにする。
きれいな石だからか。どことなく嬉しそうだ。
3つ目は…銅製の鍵だった。
「これって…」
「たぶん」
部屋を調べ終わり、扉の外へ。
罠の通路に用はないし、危険なので南下する。
すると、通路の奥に見知った扉を発見する。
これからのことを予想して、互いにうなずく。
扉には鍵がかかっていたが、先ほど手に入れた鍵で難なく開く。
――がちゃり。
扉を開けると…そこは始めのT字路だった。




