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悪夢の塔  作者: 相沢メタル
第一章
26/154

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 祭壇にたどり着くと、案内人は満足そうな表情を浮かべていた。


「なかなか励んでいるようだな」

「おかげさまで、毎晩死んでるわよ」

「はっは! 死ねる時間があるだけいいじゃないか。ま、今日も頑張れよ」


 ろうそくの数は確実に減っている。

 ナメクジにやられている場合じゃない。決意を新たにし、あちらの世界へ向かう。


―――――


 小部屋で目覚めたあとは、成宮さんと現状を確認しあう。装備品も、毎回回復しているのか、弓矢が損傷していたり、矢の数が減っていることはない。


「それじゃ、行くわよ」


 ナメクジの通路を目指す。

 扉を開け、暗闇通路を背にし、曲がり角へ。


「援護よろしく」

「気をつけてね」


 成宮さんは後方に下がり待機。

 僕は剣を構えて曲がり角を曲がる。

 いつものように、ナメクジが背を向けていた。

 斬りつけても効果がないことは分かっているので、剣を脇に抱えるようにして、思いっきり突き刺してみる…が、やはり剣が横に滑って、切ることができない。


「みゅるっ」


 ナメクジがこちらに気が付き、その巨体を器用にこちらに向ける。

 僕の役目はひとまずここまで、後ずさりし、ナメクジをおびき寄せる。

 曲がり角からナメクジが顔を出したところを、成宮さんの矢が襲いかかる。


「みゅいいい!!」


 成宮さんが放ったのは、燃え盛る木の矢だ。

 周辺の松明から伝い燃やした矢、これがナメクジの体にぶちあたる。

 これまで通り、突き刺すことはないが…。


「効果あり、ね」


 周囲を刺激臭が漂い始める。ナメクジの体が焼け、変色し始めている。茶色かった部分が溶けたのか、体内と似た青みがかかった色がうっすら見える。


――ぼっ! ぼっ!


 成宮さんが続けて矢を放つ。ナメクジは苦しそうに身をよじるが、狭い通路とデカい図体のせいで避けることができない。

 ときおり接近しようとしてくるが、火の痛みにひるんで近づけないようだ。


「ぎゅるぎゅるぎゅる…」


 唸るようなこれまで聞いたことがない鳴き声をあげる。そろそろ仕掛けてくるか?


「矢も尽きてきたわ…お願いね」

「大丈夫」


「ぎゅいいっ!」


 かばあっ!

 ナメクジが身を起こして、起死回生の粘液放出を狙う。

 待ってました。

 青い体内に向けて、剣を突き刺す。

 するり、と剣はナメクジの体に吸い込まれていく。


「みゅ、みゅっ、みゅいいい!」


 断末魔に苦しみながら、次第に静かになる。

 ゆっくりと剣を引く。どろりとした青色の液体が垂れるが、剣が溶けたりはしてない。

 ナメクジは、どさりと倒れ、口から黄色い触手をだらりと吐き出し、動かなくなった。


「賭けには勝ったみたいだ」

「弓矢は残り一本…ぎりぎりだったけどね」


 ナメクジを倒した僕らは、安堵の笑みを浮かべあった。

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