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祭壇にたどり着くと、案内人は満足そうな表情を浮かべていた。
「なかなか励んでいるようだな」
「おかげさまで、毎晩死んでるわよ」
「はっは! 死ねる時間があるだけいいじゃないか。ま、今日も頑張れよ」
ろうそくの数は確実に減っている。
ナメクジにやられている場合じゃない。決意を新たにし、あちらの世界へ向かう。
―――――
小部屋で目覚めたあとは、成宮さんと現状を確認しあう。装備品も、毎回回復しているのか、弓矢が損傷していたり、矢の数が減っていることはない。
「それじゃ、行くわよ」
ナメクジの通路を目指す。
扉を開け、暗闇通路を背にし、曲がり角へ。
「援護よろしく」
「気をつけてね」
成宮さんは後方に下がり待機。
僕は剣を構えて曲がり角を曲がる。
いつものように、ナメクジが背を向けていた。
斬りつけても効果がないことは分かっているので、剣を脇に抱えるようにして、思いっきり突き刺してみる…が、やはり剣が横に滑って、切ることができない。
「みゅるっ」
ナメクジがこちらに気が付き、その巨体を器用にこちらに向ける。
僕の役目はひとまずここまで、後ずさりし、ナメクジをおびき寄せる。
曲がり角からナメクジが顔を出したところを、成宮さんの矢が襲いかかる。
「みゅいいい!!」
成宮さんが放ったのは、燃え盛る木の矢だ。
周辺の松明から伝い燃やした矢、これがナメクジの体にぶちあたる。
これまで通り、突き刺すことはないが…。
「効果あり、ね」
周囲を刺激臭が漂い始める。ナメクジの体が焼け、変色し始めている。茶色かった部分が溶けたのか、体内と似た青みがかかった色がうっすら見える。
――ぼっ! ぼっ!
成宮さんが続けて矢を放つ。ナメクジは苦しそうに身をよじるが、狭い通路とデカい図体のせいで避けることができない。
ときおり接近しようとしてくるが、火の痛みにひるんで近づけないようだ。
「ぎゅるぎゅるぎゅる…」
唸るようなこれまで聞いたことがない鳴き声をあげる。そろそろ仕掛けてくるか?
「矢も尽きてきたわ…お願いね」
「大丈夫」
「ぎゅいいっ!」
かばあっ!
ナメクジが身を起こして、起死回生の粘液放出を狙う。
待ってました。
青い体内に向けて、剣を突き刺す。
するり、と剣はナメクジの体に吸い込まれていく。
「みゅ、みゅっ、みゅいいい!」
断末魔に苦しみながら、次第に静かになる。
ゆっくりと剣を引く。どろりとした青色の液体が垂れるが、剣が溶けたりはしてない。
ナメクジは、どさりと倒れ、口から黄色い触手をだらりと吐き出し、動かなくなった。
「賭けには勝ったみたいだ」
「弓矢は残り一本…ぎりぎりだったけどね」
ナメクジを倒した僕らは、安堵の笑みを浮かべあった。




