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悪夢の塔  作者: 相沢メタル
第一章
24/154

24

「こ、こいつは…」

「うう…き、気持ちわるい…」


 目の前にいたのは巨大な…ナメクジのような怪物だった。殻がないので、カタツムリではなさそうだ。全身が濃い茶色で、松明の明かりに照らされてぬらぬらと光っている。勝手にナメクジは体が透けている印象を持っていたけど、巨大な肉塊という感じで、透けるどころかどっしりと重そうだった。

 そいつが、恐らく背を向けている。現実のナメクジ同様に、顔が判別できればだけど。

 ナメクジの向こうには通路が続いている。


「どうにかしてやり過ごせないかしら…」


 一旦曲がり角の先から頭を引っ込めて作戦を練る。


「脇を通り過ぎるのは難しいね、ほとんど通路を埋め尽くしてる」

「接触するのをためらわなければ、乗り越して行けないこともなさそうだけど…できれば避けたい」

「触れると害があるかも知れないしね…って、おわぁ!」


 いつの間にか、触手のようなものが迫っていた。先には目玉のようなこぶし大の塊がついている。


「くそっ、気づかれた!」


 思わず剣で叩き切ろうとするが…切れない。思いのほか弾力があり、剣が弾かれてしまった。


「この剣、切れ味が悪いのか!?」

「落ち着いて、相手の体が特殊なのよ!」


 曲がり角からこちらに全身を表した巨大ナメクジに対して、成宮さんが矢を射るが、これも弾かれてしまう。


「どこかに弱点はないのか…!」

「ここはいちど引いたほうが…なに!?」


 混乱している僕達を尻目に、ナメクジは着実に近づいてきていた。


「みゅるみゅるみゅるっ!」


 どこからか甲高い雄叫びを上げると、ばくんと上体を反らす。

 するとそこには巨大な穴が開いていて、その中は焦げ茶の体に似つかわしくない、原色に近い青色の体内が覗いていた。

 そして、そこから大量の体液がほとばしり、僕らに降り注ぐ。


「なにこれ…取れない…!」


 粘着質な体液は、体中にこびりついて容易には取れない。それに次第に固まっているのか、見動きが取れなくなっていく。


「こ、これ…マズい」


 もう遅かった。

 見動きが取れなくなった僕らを、ナメクジはゆっくりと眺める。まるでどちらから食べるか値踏みするように。


「……!」

「……!?」


 僕を襲うことに決めたのか、ゆっくりとナメクジが向きを変え、再び鎌首をもたげ、青色の体内を見せつける。

 その中から黄色い触手が数本伸びてきて――凄まじい勢いで僕の体中を突き破った。

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