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扉の向こうは南北に分かれていた。
南側は、今までと同じような通路が続いているようだった。
北側は…暗い。いや、暗いどころではなかった。
「松明が…付いてない?」
「いえ、付いてはいるみたい。火が灯ってないのね」
一寸先は闇、とはこのことか。
松明の火が消えただけで、通路の奥はおろか、足下すら見えない。ただの暗闇ではなく、不思議な力で闇が作られているようだった。
「松明の火は…だめね、燃え移らない…」
成宮さんがほかの松明から火を移そうとしたが、うまく点火できないようだった。
やはり、超常的な力が働いているのか。
「松明の火を持ちながら進むか、明るい南側に進むかだね。南側が妥当だと思う」
「そうね…あ、松明の火が消えた」
不思議なことに、闇に松明を近づけると、火が突然消えてしまった。
闇から遠ざけても消灯したままだったけど、他の火に接触させることで、再び灯り始めた。
「そもそも、今までの通路の松明が燃え続けてる時点で不思議なのよね」
「燃料が無くても、いつまでも燃え続ける松明に、火を消す闇か…」
「闇の中に爆弾スライムがいないとも限らないし、他の脅威も考えられる」
「よし、南に進もう」
踵を返し、南に向かって進む。
こちらは通路の奥は伺いしれないものの、ほどほどに明るく安心して進めた。もちろん、周囲への注意は怠らない。
しばらく進むと、曲がり角が見えた。右に折れている。
頭の中で経路を整理する。
闇
↑
↑ 扉
・扉←←←↑
↓ ↑
↓ ↑←←←T
↓
↓
↓
↓
←
暗闇通路からは少し離れた位置にいる。
看守の部屋からはだいぶ離れた。嫌な記憶しかないけど、それでも見慣れた場所から遠くまで来たことを意識して心許なくなる。
「どうしたの?」
「いや、なんでもない。先を覗こう」
いつもの配置になり、曲がり角の先を覗く。
「どう?」
「しっ…!」
曲がり角の先には、巨大な怪物がゆっくりと動いていた。




