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「どう? 落ち着いた?」
「うん、もう大丈夫」
「よかった…傷も無いみたいよ」
「そっか…途中で何体か蹴飛ばしたけど、破裂さえしなければ、触れる分には大丈夫なんだね」
「でも、本当にぎりぎりだった」
走ったことによる心拍数は落ち着いたけど、さっきの恐怖を思い出したら、また心臓がとび跳ねた。
その割にはあの成果か…。
「曲がり角の先には扉があったよ…鍵のかかった。それだけ、骨折り損って感じだね」
「ん、そんなことないよ。行き止まりじゃないってことは、いずれ調べなきゃいけない候補ってことだもの…ね、鍵穴の見た目は覚えてる?」
「鍵穴か…」
そういえば、少し意匠が施されてたような。木箱の部屋のような細かいものじゃないけど…ん、どこかで見たような。
「この扉と同じ模様だったりしない?」
成宮さんがT字路の根本の扉を指差す。
確かに、こんな感じだった。
「はっきりとは覚えてないけど…似てる、とは思う」
「なるほど、もしかしたらひとつの鍵を見つけたら、二箇所先に進めるかもしれないわね」
「じゃあ、その鍵は重要だ」
目下のところ、鍵を探す必要がありそうだ。そのためにはスライム通路の反対側、T字路の左を探索する必要がある。
「じゃ…行こうか」
T字路を左方向に進む。
相変わらず松明は頼りなく、石造りの通路は薄暗い。
爆弾スライムが出てこないかと、足下だけでなく天井など周囲を確認しながらゆっくりと進む。すると、右に折れた曲がり角があった。
「ただの曲がり角1つでドキドキするね」
「何があるか分からないものね」
「後ろで弓を構えてもらえるかな、僕が見てくる」
成宮さんが頷いたのを確認して、曲がり角に向かう。いきなり怪物に遭遇するのはごめんだ。気が付かれないように、そっと先を覗くと…なにもいなかった。
「大丈夫だ」
手招きすると、成宮さんが側に寄ってくる。
「周りにも何もいないみたい」
「よし…じゃ、このまま行こう」
T字路から見て、突き当りの曲がり角を右に曲がった事になる。図で描くとこんな感じだろうか。
↑
↑←←←T
曲がり角の先を進むと、また曲がり角があった。ただし、扉もある。
見たところ、扉に鍵穴はない。これなら開けられそうだ。
ゆっくりと開けてみる。大丈夫、開く。
中には木箱が1つ置かれていた。
前回と同じように、剣の先で注意深く木箱を開けると、中には木の矢が数本入っているだけだった。念のため、部屋の中を調べるが何もない。
「戦力微増か。最初の木箱、あれは特別だったのね」
「そうみたいだね。鍵穴の模様が関係してるのかなあ」
少しがっかりしながら、木の矢を成宮さんに渡し、部屋を後にする。
部屋を出たあとは曲がり角の先を道なりに進むことにする。
図にするとこんな感じだ。
扉
←←←↑
↑
↑←←←T
すると、突き当りに扉を発見する。鍵穴はない。さっきと違い、曲がり角もない。
「ここで行き止まりみたいだね」
「他に扉も通路もなかったから…この扉の先に行くしかないわね」
新しい鍵も手に入っていないので、スライム通路の先にも、T字路の扉も開けることはできない。
意を決して、扉に手をかける。
――がちゃり。
扉は難なく開いた。




