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悪夢の塔  作者: 相沢メタル
第一章
22/154

22

「どう? 落ち着いた?」

「うん、もう大丈夫」

「よかった…傷も無いみたいよ」

「そっか…途中で何体か蹴飛ばしたけど、破裂さえしなければ、触れる分には大丈夫なんだね」

「でも、本当にぎりぎりだった」


 走ったことによる心拍数は落ち着いたけど、さっきの恐怖を思い出したら、また心臓がとび跳ねた。

 その割にはあの成果か…。


「曲がり角の先には扉があったよ…鍵のかかった。それだけ、骨折り損って感じだね」

「ん、そんなことないよ。行き止まりじゃないってことは、いずれ調べなきゃいけない候補ってことだもの…ね、鍵穴の見た目は覚えてる?」

「鍵穴か…」


 そういえば、少し意匠が施されてたような。木箱の部屋のような細かいものじゃないけど…ん、どこかで見たような。


「この扉と同じ模様だったりしない?」


 成宮さんがT字路の根本の扉を指差す。

 確かに、こんな感じだった。


「はっきりとは覚えてないけど…似てる、とは思う」

「なるほど、もしかしたらひとつの鍵を見つけたら、二箇所先に進めるかもしれないわね」

「じゃあ、その鍵は重要だ」


 目下のところ、鍵を探す必要がありそうだ。そのためにはスライム通路の反対側、T字路の左を探索する必要がある。


「じゃ…行こうか」


 T字路を左方向に進む。

 相変わらず松明は頼りなく、石造りの通路は薄暗い。

 爆弾スライムが出てこないかと、足下だけでなく天井など周囲を確認しながらゆっくりと進む。すると、右に折れた曲がり角があった。


「ただの曲がり角1つでドキドキするね」

「何があるか分からないものね」

「後ろで弓を構えてもらえるかな、僕が見てくる」


 成宮さんが頷いたのを確認して、曲がり角に向かう。いきなり怪物に遭遇するのはごめんだ。気が付かれないように、そっと先を覗くと…なにもいなかった。


「大丈夫だ」


 手招きすると、成宮さんが側に寄ってくる。


「周りにも何もいないみたい」

「よし…じゃ、このまま行こう」


T字路から見て、突き当りの曲がり角を右に曲がった事になる。図で描くとこんな感じだろうか。


↑←←←T


 曲がり角の先を進むと、また曲がり角があった。ただし、扉もある。

 見たところ、扉に鍵穴はない。これなら開けられそうだ。

 ゆっくりと開けてみる。大丈夫、開く。

 中には木箱が1つ置かれていた。


 前回と同じように、剣の先で注意深く木箱を開けると、中には木の矢が数本入っているだけだった。念のため、部屋の中を調べるが何もない。


「戦力微増か。最初の木箱、あれは特別だったのね」

「そうみたいだね。鍵穴の模様が関係してるのかなあ」


 少しがっかりしながら、木の矢を成宮さんに渡し、部屋を後にする。


 部屋を出たあとは曲がり角の先を道なりに進むことにする。

 図にするとこんな感じだ。



   扉

←←←↑

   ↑

   ↑←←←T


 すると、突き当りに扉を発見する。鍵穴はない。さっきと違い、曲がり角もない。


「ここで行き止まりみたいだね」

「他に扉も通路もなかったから…この扉の先に行くしかないわね」


 新しい鍵も手に入っていないので、スライム通路の先にも、T字路の扉も開けることはできない。

 意を決して、扉に手をかける。


――がちゃり。


 扉は難なく開いた。

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