第16話 『僕らは再び悪夢を始める』
「こんばんは」
「やあ」
眠りにつくと、石の祭壇の前で座っていた。
案内人に声をかけても無視され続けてきたけど、成宮さんが到着すると顔をあげた。
「よし、そろったか」
「ごめんね、少し遅れちゃった」
「問題ないよ」
なんだか映画の待ち合わせみたいな会話だ。
「さて、もうすぐあちらの世界への扉が開くわけだが……質問がありそうだな?」
「ええ」
成宮さんがにやりとする。
「今度から、この祭壇へは毎回訪れるということでいいのかしら」
「そうだな」
「どういうこと?」
「祝福の力は可能性の力ということだから……悪夢の世界とセット、それも探索の前に授けないと意味がないもの」
「死んだあとの祝福は意味がないからな。死ぬ前に祝福だ」
「前回は死んだ後だったけど」
「ふん、初回は仕方があるまい。課題を乗り越えることが前提だからな」
なるほど。これからは、まず石の祭壇から始まるらしい。
「それに、ろうそくの数も先に確認する必要があるものね」
「そうだ。毎回の探索の心持ちが変わるだろう?」
「で…28本か」
28本。そのうち2本を今日消費することになる。
つまり、2週間以内に目的を終えないと……そうだ、目的って?
「結局、僕らは何をすればいいんです?」
「そうだな。それが重要だ……と言っても単純な話だ。お前たちが毎夜訪れる世界……そのどこかに主がいる。そいつを倒せばいい」
「主……ですか?」
「看守よりも強いとなると、相当厄介ね」
「主がどこにいるかは?」
「さてな。俺は知らん。探すのもお前たちの役目だ」
悪夢の世界に行って、2週間以内にどこかにいる主を倒す……どうやらこれが当面の目的になりそうだ。
「質問はもうないか?」
「今回のところは私は無いわ。あなたは?」
「大丈夫」
案内人は満足そうに頷く。
「よかろう。ならば行くがよい。無駄な死より、意味のある死を求めよ」
案内人が呟いたあと、目の前の空間が歪んだと思ったら、僕らは吸いこまれていた。




