森3
「あ、アルコはどこに……?」
雲が去り、月明かりが再び注ぐようになった広場で、アルコは消えてしまった。
杖もローブも残っていない。まるで最初からそこにいなかったかのように。
「何か物音、アルコの声は聞こえた?」
成宮さんの問いに、直前の状況を思い返すけど、おかしな音なんてまるで聞こえなかった。もちろん、アルコの声も。
「いや、聞こえなかった」
「私も……前兆もなかった気がする。ただ……」
成宮さんが空を見上げる。
大きな塊となった雲がいくつも見える。
風にのって、ひときわ大きな塊が去っていく。さっき月を隠した雲だろう。
「雲……暗闇か」
「ええ、周囲が暗闇に包まれるまで、アルコは側にいたもの。月が陰ったあの瞬間、何かが起きたのよ」
アルコの身に起きた何か。
悪夢の世界で起きることであれば、おそらくアルコはもう……。
「暗い想像をしても仕方がないわ。とにかくアルコを探しましょう」
「探そうと言っても……もう……死、」
「分からないわ」
鼻先に指をつきつけられる。
「もし、アルコがあの時に命を失ったのなら、炎に包まれるはず。私たちは死ぬと悪夢から追放されるんだから」
アルコがいなくなったことで死んだものと思っていたけど、ただ姿を隠した可能性もあるのか。
だとしたら、どうやって、どこに?
「……探さないと」
「ええ」
狭い獣道を抜け、入り口まで戻る。
アルコは見つからない。
広場に点在する獣道のうち、一番右側の獣道を再び進み、暗闇の階段を抜け、木箱まで到着する。
けど、アルコは見つからない。
広場に戻ってきた僕らは無言で佇んでいた。
しばらくして、
「アルコの居場所を探すにしても、私たちには情報が少なすぎるわ」
「まだ、この悪夢に来たばかりだもんね」
「ええ。アルコには申し訳ないけれど、新しい道を進むのと平行するしかなさそう」
これまで通った道にアルコがいないのなら、新しい道を開拓するしかないだろう。
そこにアルコがいるかもしれないし、いないかもしれない。
それでも新しい情報は手に入る。
「それじゃ、次の獣道を進もうか」
「うん。一番右の獣道ははずれ。次は隣の獣道に行きましょう」
右から二番目の獣道を選び、二人で歩き始める。
前が僕、後ろが成宮さんという順だ。
注意深く進むと、一番右の獣道と同様に、地下に続く階段が姿を現した。
「……降りてみよう」
地下の中もそっくり同じように暗闇だった。
とはいえ中身まで同じとは限らない。僕と成宮さんはさっきと同様に、剣で足元を確かめ、両手で壁の幅を確認しながら注意深く進む。
昇り階段にたどり着いた時にはへとへとだった。
「ようやく外に出たわね」
「モンスターとの戦わなくても、この緊張感、すぐに疲れちゃうね」
「そうね……見て」
指差す方向に目をやると、獣道の行き止まりに木箱が置かれていた。
側に寄り調べる。これまで見た木箱と同様だ。鍵穴もついている。開いているといいけど……。
「開けるよ」
そっと蓋に手をかける。
……鍵がかかっていない。
そのままゆっくりと蓋を開ける。
「……どう?」
「見て」
僕の後ろから成宮さんが木箱の中身を覗き見る。
そこには石で作られた目玉が1つ転がっていた。




