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悪夢の塔  作者: 相沢メタル
第三章
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森1

 異形の像だった。

 少女の像は体のそこかしこに目玉が埋め込まれており、苦悶の表情を浮かべるその顔にも、頬や額に目玉が埋め込まれている。

 見ること自体が禁忌であるような、あるいはグロテスクな見た目を怖気づいて、僕は少女の像から目をそらした。

 成宮さんたちも同様に像から背を向けて、沈痛な面持ちだ。


「何か意味があるのかしら……それにしても、酷い姿」

「これが拷問だって言うなら、アタシなら死を選ぶね」


 少女の像をできるだけ無視するようにし、広場の周囲に目をやると、いくつかの獣道に気がついた。


「結構な数の道があるな。けど、どれが正解だって言うんだ?」

「ヒントなしじゃ、適当に選ぶしかなさそうね」


 木々の隙間に覗く、人一人がやっと通れそうな獣道。どれも薄暗く、どこに続いているのか伺いしれない。


「たとえハズレの道だったとして、最悪なのは同じ道を繰り返すことね」

「確かに、一見して違いがわからないから、何度か繰り返すうちに同じ道に入っちゃうかも」

「じゃあ、左か右か、端から選んでいけばいいんじゃねーか?」

「そうね……左も右も、違いはなさそうだから……多数決でもとりましょうか」

「それじゃ、せーので右か左か宣言しようか」


 すう、と呼吸を溜め込む。


「せーの……」

「右!」「右!」「左!」


 成宮さんだけが左を宣言していた。


「何か理由があったり?」

「いえ、何も。右からあたってみましょう」

「怒ってたりしねーよね?」

「あのね……本当に根拠はないの。たまたまあなたたちと違っただけ。一切不服はないわ」

「やっぱり、左からにしようかなあ……」

「アルコ、それって多数決の意味がないじゃない」

「けどさ、ヒカリの直感のほうが、自分の直感よりも信じられるんだよな」

「こう考えてみたら? 三人のうち二人の意見が一致した右のほうが正しいって」

「そうだなあ……たはは、根拠がないと不安だな、こういうのって」


少しまごついたものの、多数決の結果を重要視して、右側の獣道から確認していくことになった。

 近づくと、さっきまで通ってきた獣道と大して違いがない。狭くて、先が見通せない、かろうじて通れる道だ。

 注意しながら、ゆっくりと進む。

 ダンジョンと異なり、頭上には開放感があるはずなのに、逆にどこからでも襲われそうな不安に襲われる。天井があるほうが、まだ安心だった。


「……これは」


 獣道をしばらく進むと、地下へと続く階段が現れた。まるで――


「墓……みたいだよな」

「そう思ったけど……口に出さないでくれよ」

「どうする? 広場に戻る? 私は、進んでみたい。何かあるかもしれないし」

「さーんせい。怖いけど、行くしかねーな」


 恐る恐る、階段を降りていく。

 洞窟やダンジョンに潜っていくのと同じはずなのに、最初からダンジョンの中にいるのと、これから向かうのとでは恐怖が全然違う。

 壁に手を添えながら階段を降りていく。

 月明かりのか細い光すら届かなくなり、暗闇の中に身投じて行く。


「な、なあ。これっていきなり階段がなくなったりしないよな?」

「だから、口に出さないでってば」

「剣で足元を確認しながら進んでもらってもいいかしら?」

「了解」


 歩みは遅くなるものの、いきなり奈落に真っ逆さまよりはマシだ。

 剣がカツンと石でできた床を打つ音が響き渡る。

 しばらくして――、


「おわっ」

「ど、どうした!?」

「階段が……底についたみたいだ」


 試しに剣を周辺に打ってみるけど、反射音が返ってくるだけで、落とし穴はなさそうだった。

 後ろを振り返る。

 二人の息遣いが聞こえる。

 遠くの方に、少しだけ階段の入り口が見えている。

 戻ろうと思えば、戻れそうだけど……。


「暗すぎる。戻るべきかな?」

「ちょっと待って……壁は途切れていないわよね?

「うん。階段は終わったけど、壁はそのまま。横幅も変わってないんじゃないかな」

「両腕を伸ばしたら、左右どちらの手も壁につくわね……このまま進んでみていいかしら」

「い、いいけどよ。何も見えないぜ。迷路になってたらどうすんだ?」

「だから、私が両手を壁につけて横幅の変化を確認する。両手がついているうちは、変わっていないということだから。あなたは剣で床を調べて進んで。そうすれば、暗闇の中でも進めると思う」

「わ、わかった……」


 めちゃくちゃ不安だけど、ここまで来て戻るのも成果がなくて後悔しそうだ。先に進もう。

 成宮さんを信じて、しばらく進むと、剣が何かにぶつかってカツンと音を立てた。


「なんだろう……何か硬いものが……」

「もう少し探ってみて」


 剣を高さを変えつつ打ち付ける。どうやらこれは……


「階段みたいだ」

「やったわね。昇りましょう」


 剣で確認しつつ、階段を昇っていく。

 少しずつ、頭上が明るくなってきた。

 出口だ。

 月明かりがこぼれてきている。

 階段を昇りきり、穴蔵から出る。

 振り返ると、疲労した様子の二人と、穴蔵の入り口が見えた。

 最初に入ってきた穴蔵と同じ見た目だ。


「これ、本当に別の出口だよな? 実は戻ってたり……」

「いえ、ちゃんと別の出口みたいよ」


 成宮さんが指差す方を見ると、獣道の行き止まりに、木箱が置かれていた。

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