1/1
prologue
「いーろーはーにーほーへーとー」
私は詠う。
ただ詠う。
この言葉と音が融合して創り出された『何か』が私の心に染み渡る。
ゆっくり、でも確実に。
私は47文字で構成された、自分の名前と同じ呼び名の歌を唱えるように淡々と詠う。
「あーさーきーゆーめーみーしーよーひーもーせーす」
それを詠い終えると、私はいつも空を見上げる。
この空は『彼女』がいるところまで同じように広がっているのだろうか。
そんなことを空に向かって聞いても、空は声に出して答えてはくれない。
だけれど、それは無言の肯定だということを私は知っていた。
茜色に染まり始めた空は、出会いの色であり、別れの色。
「一緒に帰ろう、夕焼け小焼け」
私は一人呟いた。