消えた風船2
「大丈夫。私に良い考えがあるわ!」
「考え?」
「この前の犬よ。この前の犬を召喚して。」
「犬?なんで?」
「臭いで見つけるのよ。」
「臭いって。そう簡単にはいかないだろ。」
「私達の世界の犬は万能なのよ、鼻だって効くんだから。」
一茶は首を傾げながらも、召喚の体勢に入る。
「いでよ、あん時のメス犬。」
雑な召喚だった。
「お兄ちゃん、何やってるの?」
これは当たり前の反応だろう。知らない人から見れば、一茶はヤバイ奴だ。
「ごめんね、ちょっと目を閉じてくれるかな。」
カノンが言い、女の子は目を閉じる。
『ボワロロロ~ン』
音と共に煙が立ち始める。
一回召喚したディファレントは魔方陣無しで召喚できる。
「ウーワンワン!」
「目開けていいよ。」
目を開ける
「あ~~!犬だぁ~!」
満面の笑みで犬に近寄る。
「この犬ねぇ、まりん っていうんだよ。」
カノンが言う。
えっ、と一茶が驚く
「お前、いつのまに名前なんて。」
「あんたがこの子を召喚した日よ、それから毎日散歩だって行ってるんだから。」
「まりんちゃん、この女の子の臭いを嗅いで。」
マロンは女の子の臭いをクンクンと嗅き始める。
「そしたら、その臭いのする風船を追ってほしいの。まだそう遠くにはいないでしょ。」
一茶は不安そうに
「お前それは無理だろぉ。」
「大丈夫、まりんは風船が大好きだから、風船の臭いも覚えてるの、二つセットの臭いを追えば見つかるわ。心配しないで。」
腕を組み、自信満々な顔をしていた。その姿は、頼もしい親分のようだ。
「ほら一茶、女の子をおんぶして、って、まだ名前聞いてなかったね、名前なんていうのかな!」
「真央だよ。」
「ほら、真央ちゃんをおんぶして、まりん行くよ!」
カノンとまりんが走りだす、遅れて真央をおんぶした一茶も走りだす。
「そう簡単にはいかないだろぉ~。」
はぁ~、とため息をついた。