消えた風船
拙い文章ですが、優しい目で見ていただけるとうれしいです。
夏。梅雨が明け、世の学生が夏休みを意識し始める頃だ。
高校一年生の 最中 一茶 は土曜日だったが、ある用事のためカノンと共に住宅街を歩き、学校へ向かっていた。
「暑いなぁ~。」
つい口に出てしまうような暑さだった。今日の気温は39度。今年一番の暑さだった。
「ほんとねぇ~、もう汗かいてきちゃった。」
隣を歩くカノン。首からしたたる汗が鎖骨を通り、胸の谷間に潜り込む。一茶はカノンにくぎづけだった。
「どこ見てんのよ。」
低めのトーンで言う。すごい威圧感だ。
「ごめん、、な、、さい。」
恐怖で声が震えている。
「まぁ、いいわ。変態君。」
予想外の返答だったのだろう。一茶はカノンを珍しいものを見るような目で見ていた。
「な、なによ。」
少し恥ずかしいのか、顔を赤らめる。
「いやぁ、別に。」
嫌な笑みを浮かべながら言った。
「うぁぁ~ん、ぐすっ、うぇ~ん、、」
カノンが電柱のあたりを指さす。
「一茶、あそこ。」
そこには小学館低学年ぐらいの女の子が泣いていた。二人は急いで駆け寄った。
「どうしたの、大丈夫?」
一茶が心配そうに声をかけた。
女の子の涙が少しずつ止まっていく。
「何があったの?教えて?」
続いてカノンも声をかけた。
「ぅぅうぇぇぇぇん、え~~ん。」
止まりかけていた涙が再びふきだす。カノンの顔や雰囲気が怖かったのだろう。
「あ~あ、泣かせちゃったよカノンちゃ~ん。」
馬鹿にした顔でカノンを見る。
「な、なんで、なんでこうなるの、ねえどうしたの、ねえ何があったの。」
カノンは必死になっていた。その分どんどん怖い顔になっていく。
「えぇぇぇえん、うぇぇえぇぇんえんえんえん。」
当然のように激しくなっていく。カノンが声をかければかけるほど逆効果である事は間違いない。
一茶がカノンを手で制す。
「やめとけよ、これじゃあ埒があかない。」
最高にかっこつけて言った。一茶には一生似合わないであろう様だった。
「なによ、偉そうに。」
そう言いながらも、カノンは一歩下がった。
「ねぇ何があったの?よかったらお兄さん達に教えてくれないかな。」
一茶が声をかける。その姿は優しさの塊だった。
「うっ、ぐすっ、あどで、わだしの風船を、誰がが取っていっぢゃっだの。」
えずきながらも、一茶の問いにちゃんと答えた。
一茶は疑問に感じたのだろう
「取られた?飛んでいったんじゃないの?」
「ううん、ほんとに取られたの。」
彼女の言葉に嘘はなさそうだった。
「よし!」
そう言ってカノンが前に出る。
「私達が、その風船を取り戻してあげる!」
ねっ、と言って女の子の手を取る。
女の子の顔少しずつ笑顔に変わる。
「ありがとう、お姉ちゃん、お兄ちゃん。」
「取り戻すって言ったって、風船だぞ、どうするつもりだよ。」
不安そうかつ心配そうに一茶が言う。
「大丈夫。私に良い考えがあるわ!」
自信ありげな顔だった。