プロローグ
「いでよ、屈強なる戦士、私の力となりたまえ!」
もなか いっさ
彼 最中 一茶 は自宅の自室にて習慣である召喚を始めた。
『ボワロロロ~~~ン』
音とともに魔方陣の上に煙が立ち始める。
「来い!、来い!、ていうか来て下さい。お願いだからぁ。」
一茶は今とにかく必死だ。
煙が薄くなり、徐々に姿が見え始める。
四つん這いになる人? いや違う。
「もしかして、、、犬?」
ゴクン、 生唾を飲む。すごい緊張感だ。
『ウー、ワンワン。』
一瞬にして緊張感をその鳴き声で打ち消す、、、、犬。
「い、、、、ぬ、、、、だ、、と。」
ひざから崩れ落ちる。 一茶の顔は絶望で真っ青だ。
「ま~た失敗したの?」
銀の鎧を付け、大剣を腰に下げた女が部屋のドアにもたれていた。
「カノン、、、入ってくるなと、、、言っただ、、ろ。」
まだショックから立ち直れていないのだろう。
まるで瀕死の勇者のようだ。
「なによ!あんた今度こそショックで死んじゃうと思って来てあげたのに。あ~あ心配して損した。」
「カノンが、お、俺のことを、そんなに、お前にそんなとこがあったなんて。」
声に少し元気がでてきた。すぐに立ち上がり、涙を滝のように流しながら、カノンに抱き着こうと走る。
「カノ~~~~~ン!」
ドゴッ。
一瞬だった。音だけが聞こえ、一茶はうずくまる。
一発KOだ。カーン、カーン、カーンという音が聞こえそうな光景だった。
「お前、もうちょっと手加減を、、、お前は俺が召喚したんだ、要するに俺はお前のご主人様だぞ。」
「そんなに涙流しながら走ってきたら、そりゃそうなるわよ。」
「お前ほんと優しくねぇ奴だな。」
「またやられたいの。」
睨みをきかせ、拳という名の凶器を見せ付ける。
「申し訳ありませんでした。」
一瞬で土下座完了。
「まあ、とりあえず今回召喚した ディファレント も女、
いや、犬だからメスか。」
「またかぁ。しかも今度は人ですらないし。」
「ここまでくると、もうあんた変態ね。」
「はぁ~。ほんと俺はダメ召喚師だなぁ。」
「ダメダメなあんたに召喚された私っていったいなんなのよ。」
はぁ~ とため息をついた。
「いつになったら俺は男のディファレントを召喚できるんだぁ!。」
怒りのままに拳で床を叩く。
「あんたにはもう無理よ。」
「そんなこと言わないでぇぇぇ。」
声と共に、魂まで抜けていきそうなかんじだった。
いや、もうほとんど抜け殻だ。立ち上がる事すらできそうにない。
ここまでが一茶の習慣だった。
多分一茶の寿命は短いだろう。