勝利
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
我が国空軍の唯一の戦闘機F-15は、大阪国が劣勢という情報を聞いてから直ぐに、京都国へ向かった。
しかし我が空軍が京都に着く前に、奈良国空軍の戦闘機と思われる航空機が京都国に到着し、京都国空軍と共に制空権を握り、既に警備体制を整えていた。
俺は滋賀国軍部本部の中でその情報を聞いたが、周りには30人程の混合師団通信幹部達が様々な作業をしており、同時にそれを聞いた。
そしてその情報は直ぐに彼らの手によって、京都へ飛び立った戦闘機搭乗員へと伝えられた。
混合師団通信幹部隊隊長の池亀 慎吾が俺の前に立ち、皆もこちらを向いて立ち上がった。
「閣下!もう存じ上げていただいているとは思いますが、我が国陸軍は京都国国境防衛隊を無事突破し、総員で京都国内閣総理官邸となったかつての京都府庁を目指し前進しております。しかし、奈良国空軍と思われる戦闘機が京都国上空を京都国空軍と共に制空しています。このまま京都国上空で空戦をした場合、空軍は8機対30機で数の論理で敵機は22機残ります。そして、それらの戦闘機は陸軍を攻撃するでしょう。更にどの程度の勢力かは推測出来かねますが、奈良陸軍が攻撃を仕掛けて来ないとも限りません。我々の敗戦は確実です。いざ、御下知を!」
俺も立ち上がり、皆に聞こえる様に、そして我が国のF-15 8機との通信機のスイッチを入れた。
「空軍総員撤退せよ!……空軍総員撤退せよ!」
皆、静かにゆっくりと、体をこちらに向けたまま座った。
8機同時通信の為、向こうから返答は来ない。
そんな時、陸軍との通信機が光った。
「閣下!戦馬で御座います。我々陸軍は、京都国南方国境で国境防衛隊との交戦を制した別動隊と合流致しました事を報告致します。」
「良くやった、官邸を目指し前進を続けてくれ。」
「はっ!承知致しました。」
丁度陸軍との通信を切った時だった。
一人の混合師団通信幹部が京都国側の窓を二度見して隣にいる別の幹部に叫んだ。
「お……おい!…ちょっと見ろ!」
「あ?なんだよ?……おい!あれって…戦ってるよな……」
その声は皆に聞こえ、皆が窓の外を見た。俺は自分の目を疑った。
そして、空嵐との通信を開始した。
「おい!どういう事だ!俺は直接奴らに撤退命令を下した筈だぞ!」
一瞬の間が空いた。
「申し訳ございません!我々も彼らとの通信を試みているところで御座います。確かに閣下の御命令は伝わったと思いますが、我々にもどうしようも……」
「そうか…分かった。」
通信を切った。
俺達にも訳が分からなかった。
俺が戦うことを命令したら、彼らは戦うしか無いかも知れないが、普通なら帰還命令が下っているにも関わらず、味方が8機と分かっていながら戦闘なんてしないだろう。
しかも、彼らは政府から派遣された空軍の操縦士であるから、俺の命令には確実に従う筈だ。
そんな中、再び戦馬から連絡が入った。
「閣下!この上空は……」
「あぁ、何故か彼らは俺の命令を無視し、戦闘を開始した様だ。」
今度はしっかりした声だった。
「いえ、我が国空軍の戦闘機は全て青塗りで御座いますか?」
「え…あ、あぁ。そうだ。」
「確かに、我が国空軍が到着した時には三ヶ国の戦闘機が飛び交っていました。しかし、我々が先を急いでいるいつの間にか、上空には青塗りの戦闘機のみになっていました。更に、彼らは既に大阪国陸軍への支援に当たっている模様で御座います。」
「何!どういう事だ?」
「申し訳ございません。先を急いでいましたので。」「そうか、まぁ良かった。」
軍部本部室内が歓喜に沸いた。
「閣下!おめでとう御座います!」
皆が立ち上がり、頭を下げた。
俺は皆を静めた。
「いや、まだ勝利したわけでは無い!油断をするな!」
「はっ!」
再び、皆が先程よりも軽く頭を下げた。
一時間後、戦馬から連絡が入った。
「閣下!我々陸軍は無事、京都国内閣総理官邸を占拠致しました。交渉の末、京都国軍は降伏するとのことで御座います。また先程、大阪国陸軍からこちらに向かうと連絡がありました。滋賀国空軍の働きに感謝するとのことでした。閣下!おめでとう御座います!」
本部室内の皆が立ち上がり、さっきとは余程大きな歓声が上がった。
「大儀であったぞ!良くやった!」
「恐悦に存じます!!私は大阪国陸軍が到着し次第、簡単に官邸内、国内の処理を指示後、争田らの一部幹部を連れて帰還致します。宜しいでしょうか?」
「分かった。では、その様にしてくれ。全中将が帰還、大阪国の準備が整い次第、戦後処理会議を四ヶ国の大将、中将で始めたいので、疲労は労うが準備を願う。」
「承知致しました。では、失礼します。」
そしてしばらくして、空嵐からも連絡があった。
「閣下!F-15 8機が無事、帰還致しました。私と搭乗員、閣下との話し合いの場を設けましょうか?」
「当たり前だ!何があったのか詳しく聞かねばならないからな。一時的に処理が終わる迄にはまだ時間があるだろうからな。」
そして、明日彼らに事情を聴く事が決まった。
はじめまして、初の小説投稿となります。非常に無茶な設定で、色々と不細工な部分がございますが、何卒暖かい目でお付き合いください。感想、意見等がございましたら、どうぞ気兼ねなく発言下さい。出来るだけ多くのコメントに返信を行うつもりです。