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「こんなところでいいか」

 水上は話し終えて一息つき、水滴のついたジョッキに入っているビールを飲み干した。

 冬休みの初日、隣の市まで写真部の五人で出かけた。その帰りに、唯一の未成年が先に別れたのと、翌日水上と夏川が実家に帰るので、忘年会みたいなことをすることになった。

 いつも四人が使う駅のすぐ近くにあるチェーン店の居酒屋に入った。四人とも、入るのは初めてだった。

 注文をして、年末年始のバイトはどうするのか、という話になった。その後、夏川が水上のバイトの話を聞きたがり、水上が古本屋でのバイトを始めたときの話をした。

「そういえば、このメンバーでこういう店に来るのって初めてですよね」

 水上がビールを飲み干すのを見て夏川が言った。水上が「とりあえず、『とりあえずビール』で」と言って注文した中ジョッキだった。夏川の前には強そうな名前のカクテルがある。

「そだね。古泉とはともかく、水上君ともなかったね」

 そう言った天水は、かっこいい名前のカクテルを注文した。彼女は酒が苦手なはずだが、まだあまり飲んでいないので平静を保っているようだ。

「家で飲む方が安上がりだからな。そもそもあまり飲まないと思うし」

「思う?」

「比べる相手がいない」

「なるほど。それに夏川君は先月二十歳になったばかりだし」

「そのときはだいぶ飲まされた気がします。覚えてませんが」

「無理してまで飲むものでもないだろ」

「ですね」

 アルコールのせいかはわからないが、水上はいつもよりよくしゃべる。というより、機嫌がいいようだ。

「大学のサークルというと、たくさん飲まされるイメージがあったんですが、そういうのもないですよね」

「新入生の歓迎会とかもしないよな、そういえば」

 夏川と水上が続けざまに言った。天水は手に持ったグラスを置いた。

「ウチの歓迎会はハイキングだからね。言ってなかったっけ」

「こないだ行ったやつですね」

「そう、それ」

 一ヶ月ほど前に、写真部の五人で市内の山へ行った。水上が入部する前にも登った山だった。

 水上は先ほどから古泉が話していないことに気付いて、正面に座っている彼女に目を向けた。古泉は、半分ほどになった梅酒を注視していて、微動だにしない。

「おーい」

 水上が古泉の目の前で手を振ると、はっとして顔をあげた。

「どうしたんだ、しばらくまばたきしてなかったぞ」

 指摘されて、古泉は何度かまばたきをした。

「水上の話を聞いて、バイトを始めたときのことを思い出してた」

「それじゃあ次は古泉の番だね」

 少し顔が赤くなっている天水が言った。

「何が?」

「バイトの話」

「よかろう」

「即決だな」

 アルコールが入っていなくても、古泉の受け答えはこんな感じだ。

 料理が運ばれてきて、古泉はすぐにからあげに手を出した。天水が促すと、古泉は少しずつ話しだした。

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