人殺し
心なしか人の動きが活発になったように思う。殺さなければ自分が死ぬ、という危機感から人を殺そうと決意した人たちが動き出したのだろう。
僕たちはまだ公園から出ていなかった。カノジョがまだ自力で歩くのが厳しいということもある。人を殺して生きるぐらいなら、カノジョと一緒に死んだ方がましだ。
「もし、このまま何もしないでいたら私たち殺されるんだよね」
何も返事ができない。「二人で生き残ろう」なんて言えない。何もしないでいれば殺されるのは事実。それはもう見せつけられている。
そして夜。
『がさっ』
足音が聞こえる。誰かが来る。恐怖で泣きそうなカノジョを慰めナイフを手に取る。殺す気は毛頭ない。が、こちらから出る。ナイフを持つ手が少し震えている。
足音の主はおっさんだった。スーツを着ている。家に帰る前にこの殺し合いが始まったのだろう。
「頼む許してくれ!まだやり残したことがたくさんあるんだ!だから・・・だから私のために死んでくれ!」
半泣きで訴えられても困る。すぐにカノジョを抱え逃げる。しかし、おっさんも追いかけてくる。少しでも入り組んでいるところへ逃げたい。幸いにも逃げた先に住宅地があった。テキトーに走る。後ろにおっさんの姿はなかった。
それからも歩き続けまた違う公園に逃げ込んだ。
「もうすぐ十二時だね。」
そういわれて公園に備えつけてある時計を見る。十一時半をとうに回り今は十一時四十八分。
カノジョと向き合う。
「もっといろんなとこ行きたかったね」
これからどこへでも行ける。
「もっと一緒にいたかったね」
これからずっとそばにいる。
「楽しかった?私といることができて。よかった?」
今も楽しいし付き合うことができた良かったと思ってる。だからこれからも一緒だよ。
「私ね、いろいろ考えたんだ。このままだとソラのあしでまといだなぁ。とか。ソラは私といていいのかなぁ。とか。でね、一つ思いついたの」
「私を殺して」
は?
「私ね、怪我、してるじゃん?だから、多分、足引っ張るんだよ。ナイフも持ってないし。生き残る方法がないんだ。だからね、私を殺して生き延びて」
最後の方、カノジョは泣いていた。僕にナイフを持たせる。そしてナイフを持った手を上からカノジョの手が上から包み込む。僕は何もできなかった。
そして――――――――
カノジョは思い切りナイフを突き立てた。
自分の胸に。
僕の手を包み込んでいた手から力が抜ける。
倒れそうになるカノジョを抱える。
するとカノジョに
キスされた。
女の子の唇ってこんなに柔らかかったかな。と一瞬思う。
「ねぇソラ、私のこと好き?」
震える声で尋ねてきた。奥歯をかみしめて声出せない。必死に涙をこらえることしかできない。
「赤くなったってことは肯定だね。今までほんとにありがとう。」
泣きながらそういってカノジョは精一杯の力で僕に抱き着く。それだけで決壊した。
バカみたいに泣いた。回りを気にせず泣き叫んだ。僕が殺したんだ。
そんなことは無視して『かかりいん』が歩み寄る。僕には見向きもせず、動かなくなったカノジョを僕から引きはがす。
そして、カノジョを雑に抱えて元来たほうに帰って行った。