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妖猫恋愛記  作者: 雨歌
猫と盲目の人間
1/6

裏路地を抜けた先は猫の世界



「……おや、どうやら不思議な場所に入り込んでしまったようですね」


霧が立ち込める路地裏。

1人の青年が迷い込む。

両目は包帯で隠れていて、手にした剣を杖代わりにしていた。

服装は薄い紫の着物に黒の袴。使い込んだような草履。

髪は肩までの長さの黒。


「そこにいるのはどなたですか? 目は見えずとも、気配を感じる事はできるのですよ?」


誰もいない路地に向かって青年は呼びかける。

静まり返った人気のない路地裏。


「……人、ではないようですね」


霧が揺らめく。

やがてクスクスと言う笑い声が広がり、光り輝く無数の瞳。


「ニンゲン」

「ニンゲンだ」

「クスクス……」


ゴウッと突風が吹き、青年の黒い髪を揺らす。

何かに身体を突き飛ばされ、青年は何かの上に倒れる。

手に触れる感触は木の板。

それが何であるのかはすぐに分かった。

それはものすごい勢いで走り始め、青年はバランスを崩し縁に掴まる。


―随分と……手荒ですね……。


道が悪いのか、ガタガタ揺れる乗り物。

周りからは何やらドンチャン騒ぎ。


―さて、一体どこへ連れていかれるのか……。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




―おやおや……、先程とは随分と扱いが……。


青年は片手に剣、片手に誰かの手の感触。

さらには慣れない道を歩く青年を気遣ってか、ゆっくりとした速度。


「階段を上ります故、お気をつけくださいませ」


と、警告する若い女性の声まで。

その声に従い、青年はゆっくりと階段を上る。

上り終わったのか、足の裏の感触は板から畳の感触に変わる。

爪先が何かに触れ、優しく肩を押され青年は座布団に座る。


「手荒な真似をしてすまんな、人間」


気の好さそうな誰かの声。

青年は自分の正面に誰かがいるらしいと感じた。


「目の見えぬお主には、少々慣れぬ道だったか?」

「いえいえ、旅に慣れぬ道は付き物。それにお美しいお嬢様に手を引かれたので、左程苦労はしませんでしたよ」


誰かはカラカラと笑う。


「なるほど。目は見えぬが、その分違う部分が発達しているようだ。……我らの正体も、気付いておるのか?」

「ええ。貴方方の気配は、猫のそれと同じです」


ザワザワとどよめきが上がり、楽しそうな笑い声に変わる。

誰かも豪快に笑う。


「はっはっは! 確かに、我らは猫だ。だがな、生きた年数はお主よりも遥かに長い」

「……化け猫、とお呼びしても宜しいのですか?」

「我らは猫又と言ってはいるが……、人間には化け猫の方が通りがいいか」

「これは失礼を……」

「いやいや、構わないさ」


深々と頭を下げる青年に構わないと誰かは手を振る。


「ところで……、お主、なぜここへ来たのか分かるか?」


唐突に誰かはそう尋ねる。

青年は首を振る。


「儂がお主を呼んだのだ」

「何故、私などを……?」

「それを語る前に、まずは我らの風習について話さねばならない」


誰かは咳払いを1つすると、猫又に伝わる風習を語り出す。


猫というものは齢100を超えると尾が二又に割れ、人間に化ける事ができる。

猫として世界を生きる事もできるし、人間として人間の世界で生きる事もできる。

しかし、世間は動物に対し過酷で残忍。平気で殺してしまう者もいる。

人として暮らす事でそれを回避する事はできるが、いかんせん人の世と猫の世は似て非なる物。猫の常識は人の世では通用しない。

おまけに人の世は目まぐるしく変わるので、常にその時代ごとの生き方をしなければ不審の目を向けられる。

そこで代々猫の世を統べる者が人と結ばれ、人と暮らし、人の世を学び、猫達に伝えるのだという。


「その人間に……私が選ばれた、と」

「あぁ、迷惑ならば断われば良いだけの話。その際はここでの事は忘れさせてもらうが」

「確かに、私には妻も子供も家族もいない世捨て人ではありますが……」

「ふむ。人との間に子を生す事はできぬが、猫の寿命は永い物。心変わりもしやすい」

「いえ、私はともかく……、お相手の娘さんのお気持ちは……?」

「その点は心配せずとも、4人ともお主の事を気に入ったようだ」

「……4人?」


誰かは奥に控える者に手招きをする。

静々と4人の娘が部屋に入ってくる。

1人は黒髪に勝気そうな金の瞳。

1人は白髪にお淑やかそうな青の瞳。

1人は金髪に茶が混じった緑の瞳。

1人は黒と白が疎らな髪に茶色の瞳。


「これが儂の……、猫の世を統べる猫王の自慢の娘達だ」


猫王と名乗った初老の銀の髪の男性は言った。

初投稿です。

何分使い勝手も分からず、戸惑う事ばかりですが宜しくお願いします。

更新も遅めですが、ご容赦ください。

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