働きたくない女
何度でも言います。
神様は手加減を知らないし人の都合はお構いなしです。
日差しは暖かいが屋上を吹き抜ける風はまだ寒い。
この近辺で一番高い建物の屋上にある給水塔の上が一番天に近い私の特等席だ。
本来ならバイト先に出勤する時間だが体調不良とバイトをサボっている手前知り合いと顔を合わせるのは気まずい。
そんなくだらない理由で遅めのランチをぼっちで過ごしていた。
「…だっる。」
親戚から卒業したら正社員として勤められるとバイトを紹介してもらったが2日で飽きてその後は仮病を使って出勤せず、なんなら辞めると今からメールしようかと思っている。
昔から習い事も部活も続かない気質だ。
つい、他の楽しいことがあると目移りしてしまう。
学生の間に楽しんでおかないと社会にでたら遊ぶ時間の確保ができなくなりそうで嫌になる。
居酒屋でバイトしている後輩がおかしな客に絡まれて悩んでいたので「お金に困ってないならそんな店辞めちゃえ。」というような内容でアドバイスしたら困った顔をされた。
辛い思いをして働く意味が解らない。
後輩は社会学習を兼ねてバイトしてると言うが限られた貴重な青春の時間を使い潰されていると思わないのだろうか?
大きく伸びをして前方を見ると建物の間から木立が見える、確か神様を祀った祠があるんだっけ。
私は何も考えず足をゆらしながら吸った息を吐き出すように叫んだ。
この叫びがどんな結果を生むか考えずに。
「働きたくなぁーい。」
木立の向こう側で鳥が羽ばたくのが見えた。
スマホの通知音が鳴ったので手元をみるとバイト先からだった。
『今後の雇用について相談したいので連絡を下さい。』
連絡しなくても最初2日だけで欠勤なのだから解雇されるんだと察した、実際解雇されたのだが。
これが始まりだった。
就職活動が始まり周囲が慌ただしくなった。
気が向かないが履歴書を書こうとすると書き上がりそうになると猫が汚れた足で台無しにする。
履歴書用の写真を撮ろうとすると何故か真っ黒な使い物にならない仕上がりになる。
ウェブで登録しようとするとパソコンがフリーズする。
最終的に卒業試験はインフルエンザのA型B型に連続で感染し受ける事ができない、それも留年して試験を受けようとすると必ず病気になり最終的に除籍になった。
そして今、実家で家事手伝いをしているが未だに抜け出せない。




