縁を切りたい女
接客業って辛いよねと言う話。
苦手な客がいる。
学業の合間に居酒屋でホールのバイトをしている。
ゼミの先輩からは『お金に困っていないならそんな店辞めれば?』と言われているが就職活動を考えて社会学習程度に考えていた。
居酒屋の客から良いアドバイスができる訳では無いが悩み事を聞く事がある、問題はモラハラ気質の男に目をつけられたらしくよく絡まれるようになった事。
職場で部下にしでかした労基的にアウトじゃないかという事案を自慢気に語る、業務量から多少残業が発生するのは仕方ないとして連日家に帰さないとか駄目だろう。
それ、軟禁って言われないか?
仕事の都合で邪険にできないが非常に胸糞悪い。
解決にならないひたすら胸糞悪い話を聞かされるのは苦痛でしかない。
店長に「あのクズと関わりたくないので辞めたい。」
…と意を決して伝えたのだがクズが来店したらバックヤードに下がって良いから辞めないで欲しいと泣きつかれた。
ちなみにクズは酔っ払って店員が止めるのも聞かずにバックヤードまで乗り込むので解決になってない。
よって、現在アタシの手には辞表がしっかりと握りしめられている。
何時もの通勤ルートの脇に昔からある禁足地がある。
荒神様だから不用意に近寄るなと祖母から言い聞かされているので禁足地の外側から祠があるであろう方向に向かって手を合わせた。
「あのクズが居なくなれば辞めなくて済むのに。」
うっかり願ってしまったのだ、荒神様に。
その後、シフトまで余裕があったので心を落ちつけるためコーヒーを一杯飲んでから辞表片手に出勤してみると常連だったクズが支払うべき従業員の給与を使い込むだけでなく脱税を繰り返していたことがバレて取り調べを受けているらしい話が広まっていた。
従業員が事故で入院したことから何かが発覚したらしい、良く分からないけど。
『良かったね。』と理解できない声がけをされ店長に辞表を出すタイミングを失ってしまった。
…お願いしたのは確かだが展開早いっすよ神様。
行き場を失った辞表を手のなかで握りつぶした。
前の話と共に春チャレンジの短編にするつもりが纏まりませんでした。




