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3 パーテイへ

朝日がレースのカーテン越しに差し込んでいる。

目の前にはエメラルドグリーンのドレス。

このドレスはただのドレスじゃない。私にとって戦場に向かう為の鎧だ。


今日は聖女ソフィア覚醒お祝いパーテイの日。


「よし」


深呼吸をして気持ちを整える。

ラフィスを排除できる唯一のパーテイ。

それが今日だった。


「絶対に成功させなきゃ」


侍女達が集まり、あっという間に髪を巻かれていく。

その手際のよさに意外と簡単なのね。と思ったが、


「お嬢様、グッと息を止めてくださいね」


「ん?」


そこから地獄だった。


ギュッと腰を絞められる。痛いなんてものじゃない。死!死を感じた。


「痛い!ギブ!!キブキブ!」

「耐えてくださいお嬢様」

 

ドレスに、香水、アクセサリー。


息も出来ない程絞められたコルセットに恨みを吐いている間に、私は完璧なご令嬢に仕上がっていた。

少し地味なのは私がモブキャラだから仕方ない事だろう。


「では、お嬢様、行ってらっしゃいませ」


「あ、はい」


あれよあれよという間に馬車に放り込まれ、カタコトと車輪が回る。

向かう先は推しがいるであろう王城。


―――推しがいる王城!?


「いや、待って、心の準備が…」


今から私、推しに会うの?

そんなの、心臓止まっても仕方ないじゃん!


バクバクと上がる心音。

推しに会う前だというのに既に私のライフはゼロになりそうだ。


「落ち着け私。やるべき事を考えるの」


私がこのパーティーで目指す事は一つ。


パーティーが中盤に差し掛かったころに聖女ソフィアの大事なネックレスが盗まれる事件が起きる。

犯人は、ラフィス。


彼はソフィアのネックレスが聖力を宿していると勘違いしているのだ。


勿論、周囲は真っ先に元罪人であるラフィスを疑う。

即座に調べられて事件解決と言いたいところが、ずる賢いラフィスは二重構造のポケットを用意しており、普通に調べても証拠であるネックレスは出てこない。


結果、証拠不十分で釈放されるんだけれど、問題はこの後。


見つからないネックレスに徐々に騒然とするパーティー会場。

普段から素行に問題があるとされるラフィスのへ疑いの目は収まらなかった。

そこで彼はネックレスの事件を誤魔化す為にこっそり魔物を放つ。


だから私はネックレス事件が起きたら真っ先にラフィスを指差し、「こいつが盗みましたー!!」と二重ポケットから盗まれたネックレスを取り返す。


ラフィスは聖女からネックレスを盗んだ罪で投獄される。

もっと調べれば、魔物を放とうとしていた証拠だって揃うだろう。


そうなれば私の天敵であり推しの死亡フラグはぽっきりと折れる。

全てが丸く収まる。


そうすれば秒で推し活終了。

まあ、なんて簡単なんでしょう。


以降は推しの顔を愛でながら優雅に生きよう。


そう決心した所で馬車が止まる。


「着きましたよー」


乗り込むときと同じようにぽーいと外に出される。


え、ちょっと私の扱い雑過ぎない?


なんて小言を吐いたが、目の前に広がる壮大な白亜の城のその規模に唖然とする。


「凄い…」


画面越しに見る動かない城とは迫力がまるで違っていた。


そびえ建つ壁は要塞の様に高く厚い。

幾つもの棟が空を削る様に並び建ち、あの高いテラスから下を見下ろせば、人が蟻みたいに小さく見えるだろう。


晴天の中、はためく旗が微かに見える。


続々とパーティーの参列者が集まってきているのか、石畳に響く沢山の蹄の音。

周囲に溢れる香水と花の香り。

遠くの方でケルト音楽の様な軽快な演奏が響いて、思わず踊り出したいような気分にさせられる。


(なんか、ワクワクする)


ここで推しが働いていて。

推しの吐いた空気がここにある訳で。

もしかしなくても推しに会えるわけで…。


つまりこのお城は私にとって聖地である訳で…。


思わずその場に座り込んだ。

供給が多すぎて心臓発作を起こしそうだ。


(落ち着いて、エリザベス。我慢我慢よ)


大きく息を吐いて立ち上がろうとしたその時、すっと前に手が差し出される。


「大丈夫ですか?」


俯いていても分かる。柔らかなテノールの声。

セリフ全部覚える位聞いた愛しの声。


ぎこちない動作で顔を上げるとそこには――――


「お、お、お…」


(推し―――――!!!!????)


目に飛び込んできたのは、親の顔より眺めた尊いお顔。

さらっさらの茶色い髪に優しい茶色の瞳。


その麗しさはまさに神が作りたもう芸術品。


神の後光が背後に輝く彼は、心配そうに私の顔色を窺っていた。


え!なに?なんで!?

という気持ちより先に、

はぁ!?尊すぎるんだが!!

というオタク特有の怒りにも似た感情が胸を刺す。


推しが……推しが目の前にいる──



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