苦戦
ここで俺は終わるわけにはいかない。まだ俺は何も成せていない。何も得ていない。だから宣言する。
「ああ、答えはここでお前を倒す、だ。」
その時静寂が訪れた。まるで時間が止まったかのように感じる静けさは自ら動き出すことすら憚れるように感じる。しかし、そんな時間は長く続かなかった。
「フ、フフフ。フハハハハハハハ!!これは傑作だ!!この私を倒す!?実に面白いですね?ハハハハハ!!」
思っていた反応と違って驚いてしまった。が言ってしまった以上引くわけにもいかないし引くつもりもない。内に秘めた恐怖と戦いながら持ってきた刀を構え戦闘の準備をする。その瞬間、吸血鬼の視線は鋭い殺意を持ったものに変わった。
「なるほど本気のようですね。ではいつものように嬲り殺しでいいでしょう。」
その言葉を聞くと同時に背後に凄まじい衝撃があった。俺は地面に数回激突しながら花畑を荒らし、視界を回転させていった。そうして視界が正常になるのを待つ前に何とか体勢を立て直そうとするも、更に追い打ちで腹に蹴りを入れられてしまう。
「ん~、やはりこうも同じようになっては全く面白くりませんね。今度は貴方から攻撃してみてください。」
余裕の表情でそう言ってきたので俺は再び構える。その余裕を崩してやりたい一心だが心を落ち着け相対する。
「一ノ型『三日月』」
相手との距離を詰め凄まじい早さで抜刀する。しかし相手を斬る感触なく虚空を切り裂いてしまう。
「なんですかその攻撃は?そんな遅い攻撃、蚊一匹も切れませんよ?」
そんな煽りに思わず心が乱れてしまい、一心不乱に刀を振り回してしまう。
「ふははは、どうしたのですか先程の覇気は?」
と余裕の笑みで全てを交わしていく。そして後ろの距離を取ろうとしたのを察知し大振りの斬撃を放つ。しかしそれもまた虚空を切り裂き、先程までいた彼は霧のように風に乗って消えてしまった。
「ふむ、悪くない手ですが分かりやすいですね。」
後ろから聞こえた声に反射的に振り返り、再び刀を構える。しかし相手の表情を見た瞬間俺は内に秘めた恐怖が増大していった。先程まで余裕の笑みを見せていた彼はまるで興味を失ったみたいな目をしてこちらを見ていたのだ。それを見た俺は直感で殺されると感じ取った。先程の闘いとも呼べないものは相手にとってはただの暇つぶしで遊びなのだと分かったのだ。
「おや?先程までの闘志はどうしたのですか?ふふ、恐怖をしてしまったのですね。無理もありませんね、こんなに差を見せつけられては。ですが安心してください。ちゃんと楽に殺してさしあげますから。」
その言葉を聞いた瞬間何かが変わった。どうせ何もしなくても殺される。なら一矢報いた方が良いだろう。自暴自棄になった俺は相手がどう出るかなんてお構いなしに突っ込む。
「あああああああああああ!!!!!!」
そうして自分が村雨剣術の流派であるということを忘れた、型にならない突きは吸血鬼の心臓を確実に突き立てた。確実に殺せた。そう思い視線を上げた瞬間、目を疑う光景が俺を待っていた。




