赤より紅いもの
「俺は!!楓を魔王だなんて思ってないし、傷つけたりしない!楓にとっては10年は長い時間だったかもしれない。でも俺にとってはまだ10年なんだ。確かに友達だって仲間たって出来た。でも、俺と楓にあるはずの本当の家族の時間は失われてるだろ?その分幸せになって欲しいんだ!楓も友達や仲間と一緒に過ごして、いろんな経験して思い出作って青春して欲しいんだよ!だから-ーー」
その瞬間、楓は今までに見たことのないような冷たい目をしながらこちら指指す。今までに見たことのない視線は俺の心を冷やして不動にするには十分過ぎた。そして、彼女の腕が素早く右から左へと腕が動く。
「痛っ」
右腕に切られたような鋭い痛みが突然起こると同時に、右後ろから何かが倒れたような気がする。
直感で見てはいけないと思っても、確かめるようにその場に視線が吸い寄せなれる。
地面を転がる桜色の髪をした頭。そして、小柄な身体には首から上がなく、切り口から赤い鮮血が滴り石畳に赤黒い小さな池ができていく。
「嘘......エクシィ...さん?」
冗談のような光景に思考か鈍くなり、幻覚の魔法か、首と胴体を切り離す魔法なんではないかなんて意味のわからない現実逃避しか頭に思い浮かばない。
「ーーーダメだよ皆、敵を前に後ろを向いてちゃ。」
気付いたときにはもう遅かった。振り返ると同時に肉を抉る生々しい音と共に液体が飛び散る。どうにかしなくてはと分かっていても、漂う死の匂いが頭を白く染め上げて直立不動と化す。
「むらさ...く...早く...!!」
金髪と顔を所々赤黒く染め上げた彼女は、震える両手で貫かれた手を握り、俺は金縛りが解けたように動けるようになった。
普段の鍛錬からか、自然と刀の柄に手が触れるも彼女の背後にいる楓の姿を目に捕らえた瞬間、再び硬直してしまう。血濡れになった楓はどこをどうみても俺の知っている彼女に見えないはずなのに、反射的に武器を向けることを躊躇った。
「楓さん、ごめんなさい!」
「待っ」
俺は楓に銃を向けた空色の髪をした彼女の前に立ち塞がる。が、突如として背後にいたはずの楓の声が前方から聞こえる。それも生徒会長の後ろから。
「さようなら」
「え?」
次の瞬間、彼女は爆発四散した。突風と共に肉片が散らばり、血の霧が漂い肺がむせ返り吐きそうになる。
そして、次に狙いを定めたのは小さき天使だった。楓は獲物を逃がさぬようにゆっくりと一歩ずつ歩みを進める。
「あ...あ...」
俺は本能からなのか仲間を守りたい一心からか、それとも楓にこれ以上罪を重ねて欲しくないからか、小さき天使と楓の間に割って入る。しかし、楓はそれを鬱陶しい蚊でも払うように横腹に蹴りを入れられ、芝生の上を水切り石の如く跳ねていった。
「大丈夫、器を失うだけだよ?」
「やめ...ろ、か...えで...!」
しかし、俺の言葉も虚しく睨まれたカエルのように動かなくなった小さき天使は、手足の先から石のように変質し、最期は恐怖に歪んだ顔を滲ませて砂のように砕けて塵になった。




