嘘憑き
「なんでここに楓がいるんだ?ほら、こんなところにいたら危ないぞ?だから―――」
「兄さん、もう分かってるんでしょ?私を見れば誰でもこう言うよ、魔王って。」
「違う!!!!!今までずっと一緒に居たんだ!そんなはずない!!!」
そう、俺たち兄妹は10年前両親を失ってから一緒に暮らしている。その事実に嘘はない。
そもそも楓が魔王だったとして...だったとして、今まで何もなかったのはおかしい。影響が少ない故に生き残り、隠れ住んだ魔王の眷属全員が何かしらの事件を起こしているのに魔王自身が何も影響しない理由はない。
今になってこんな災厄が降りかかったのも偶然で、他に魔王がいるはずだ。
しかし、全てを否定するが如く、楓は自嘲したような表情で話し出した。
「ごめんね兄さん、私嘘を付いてたの。私はね、村雨楓は10年前に死んでるの。」
「...え?」
「兄さんは覚えてるでしょ?あの日も今日と同じ、大きな揺れで家は倒壊してお母さんは下敷きになって焼かれて死んだ。私と兄さんはお母さんをなんとかして助けようとしたけど、寄ってきた魔物に襲われてお父さんが死んだ。そこからどうやって助かったの、兄さん?」
「それは...」
と記憶を探ってみてもその後どうしたのか思い出せない。たまに夢にも鮮明に映るほど覚えているのに切り取られたようにそこだけ思い出せない。
「うん、そうだよね。思い出せないよね。だって私が兄さんの記憶、そこだけ消したんだもん。都合が悪かったからね。」
「じゃあそのあとどうなったんだ...?」
「とっても兄さんらしい行動だったよ。『楓を守る!』って自分の何倍もある魔物に襲いかった。でも所詮は子供だった。一撃も入れられずに殴り飛ばされてしまった。
私は恐怖で動けなかったけど、兄さんはボロボロになりながらも戦おうとした。それを見て私は勇者だと思ったよ。小さい勇者だって。
それで私も感化されたんじゃないかな?兄さんを守らないとって。遊びで使ってた小さい木刀を片手に見よう見まねに戦おうとした。それが最期だったよ。」
「そんな...」
「でも、おかげて自分が魔王だって気が付いた。殺されても死ななかったんだから。それで理解してしまった。その世界の有り様を。救わないとって。」
「楓...?」
「でもね、もう少し兄さんと過ごしたいなって思って、力を使って私と兄さんの記憶を消した。そこからは兄さんも知っての通り。
もう10年も幸せに過ごせたし、兄さんには友達も仲間も出来てもう思い残すことはないよ。だからね、もう終わりにしよう、兄さん...?」
「楓さん...短い間だったけど楽しかったわ。友達として撃たせて貰うわよ。」
「初めてあったときから楓は私の好敵手よ。」
「お世話になった分返させてもらいます!」
「生徒会長として、生徒を罪人にさせる訳にはいかないわね。」
そうして俺以外、全員武器を構える。




