昏い最前線の中で
空から見る大地は無残だった。大火になった住宅街を抜けたとしても、変わらず瓦礫の海が地平線を越えている。そして、ふと遠くを眺めてみると雷鳴や轟音と共に火花が散っている。
「あれは...蟲族の...天災の権能、あれがいたせいで私の国の民は...!」
「メーリス先輩...」
レミフェリアは熾天使の魔王の眷属によって大陸が消滅したというのは知っている。だが、その真相を知っている人は少ない。帰る故郷と民を大勢失った悲しみと憎しみは何にも言い表せないだろう。
俺は再び心を強くする、早く魔王を倒さねばと。
そして暫く、教会に近ずくにつれて身体の芯に纏わりような嫌な感覚が強くなる。味わったことのない感覚に全身が硬直して冷や汗すら流れて来る。
「この辺り、極端に魔力が多いわね。それに奥は...とても言い表せないほど濃密で...うっ!」
「大丈夫、エクシィさん...?」
「ええ、なんとか、ね。ありがと、アルメラさん。」
そのまま10分、一直線に高速で進んだ頃には目前まで教会が迫っていた。
あれほどの揺れだったというのに目立って壊れているところはなく、避難所にも使えそうなほどである。多分、10年前のを経験して補強したのだろう。だが、入口に魔王がいるのでは避難所としては使えないだろう。黒々とした瘴気が教会の入り口から発せられて、風に乗ることなく万遍に散っている。
俺たちは意を決して地面に降りた。不思議なことに戦ったような形跡がなく、敷地も広いので街の大火が影響しないのかいつもと遜色ない。風一つない静寂な空間はこれから始まる激闘を思わせるようだ。神経が今までにないほど深く鋭く研ぎ澄まされ、不思議と恐怖や緊張といったものは抜けていった。
俺たち全員は武器を万全に準備して死地へと歩みを進める、10年前に起こった災厄の因縁にケリを付けるために。
魔王とは何か、何故破壊するのか、眷属とは何か、勇者とは何か、様々な疑念を置き去りにしていく。
しかし、一歩一歩歩みを進めるごとに俺の中で何か懐かしいものを感じていた。日常的でいつも側にいて安心できる、そのような感覚だ。しかし、だからこその些細な変化にも敏感になるのだろう。
俺は魔王を目で捕らえた瞬間、全身が硬直して動けなくなっていた。
「やっときたんだね、兄さん...」




