揺れる大地と昏い夜
シエルの言葉と同時に大地は大きく揺れた。
立って入れらないほどの揺れは俺たちを地面に這いつくばらせ、四肢で身体を支えることしかできない。幸い、空を飛べるフィーとエクシィは無事なようだ。
「わあああああ」
「きゃあああ」
「皆、大丈夫!?」
「ここにいたら建物の下敷きになるわよ!」
「そんなこと言ったって...」
「私に任せなさい、ウィンド!」
エクシィから発せられた魔法の風は全員を包み込んで建物の一口を目指した。倉庫のような大きな出入口は不規則に揺られ金属が擦れあう不快な音を響かせ、綺麗なコンクリートの床はひび割れていく。そんな光景を後に建物を出ると衝撃的な景色が俺たちを出迎えた。
昼頃だというのに空は夕焼けのように朱く染まり遠くは昏く、太陽も血が滲んだように赤黒く変色していく。そして世界が紅く染まるように青い月も暗くなっていき、太陽に吸い寄せられるように軌道を変えていた。
「あ...あ...」
月と太陽が接する頃には当たりは夜が完全に支配して、赤黒い太陽は闇に染まった月に少しずつ浸食されていく。そして完全に重なった時、月に後光が射すように紅い光が環となって昏い夜を支配した。
「あれはあの時の...」
「本当に..魔王が...」
あの日見た光景と重なって衝撃で思考が停止していた俺に後ろから声をかけられる。
「村雨雫、貴方には選択肢がある。このまま仲間と共に別の大陸に逃げるか―――」
「逃げるわけないだろ」
始めから選択肢なんてない。魔王を倒す、それだけだ。他に何があるという。何のために己の技術を高めてきたのか。
俺は妹を守りたい。仲間を守りたい。皆助けたい。ただそれだけのために生きてきた。だから、逃げるなんて選択肢はない、あってはならない。それは自分自身を否定するのと同じだから。
「そう、なら教会に行きなさい。そこで貴方を待っているわ。」
そう言いながら不敵な笑顔を見せて来るが、本能的に何かを感じ取ったのか背筋が寒くなった。
「エクシィ、とりあえず俺の家にそのまま飛んで行ってくれ。」
「仕方ないわね、まだ揺れも治まってないし。少し飛ばすわよ。」
その瞬間、身体が引き裂かれそうなほどの負荷が身体を襲った。だが、俺は魔王を早く倒さないとという焦燥感から自身を鼓舞して耐えた。




