目覚めの舞姫
自室で読書をしていると頭が引き裂かれるような痛みが襲ってきた。
「うううっ、ああっ...」
そうして痛みの中で私は忘れていた記憶を思い出した。いや、思い出してしまった。私は何者なのか、どうしてここにいるのか、そして何を成せばいいか。
全身を支配するような負の感情に全てを身を預けてしまいそうになるが、幼い頃に培った精神で耐え忍ぶ。本当はそんなこと全く持って意味がないということは、身体の端から端まで嫌と言うほど理解している。
嫌悪、殺意、悲哀、不安、欲望、軽蔑、憂鬱、後悔、嫉妬、恐怖、絶望、罪悪感。
全ての負情を煮詰めて濃縮したようなものが身体の芯をゆっくりと漂い着実に蹂躙していく。
そして、やらなくてはいけない使命とこれ以上犠牲にしたくないという二つの心がせめぎ合い精神を少し蝕み破壊し尽くしていく。
私はあの日の光景を脳に焼き付けながら、必死の思いで立ち上がり目的の場所へ向かう。部屋着から着替える余裕もなく靴すら履かずに家から出ていく私の姿はきっと他人から見れば異質なことだろう。しかし、そんなことすらどうでもいいと思えるほどに限界が近く、崩れかけの僅かな心が足を引っ張り、進む一歩が病人のようなふらついた足取りになる。
幸運なことなのか誰にも私に会わずに目的地までたどり着いた私はその両扉を片側をゆっくりと開け中に進む。
綺麗に配置された長椅子と奥に聳える女神像は、こちらに歩みを進めろと言わんばかりで自然と足が動く。そして、両手の指を組みゆっくりと左足の膝を地面について目を瞑り祈る。
「誰か、私を助けて...」
無人の空間に微かに響いた嘆きは誰にも届かず消えていった。その静寂は私に誰も味方などいないと突きつけるようで、それを皮切りに私の心は完全に闇に閉ざされた。




