運命を分かつ力
彼女が笑みを浮かべながら村雨を指さした。初めて見せたその表情は無機質からかどこか不気味に見え、嘲笑っているようにも死の宣告の様にも思えた。
「村雨君!!」
「ダメ!間に合わない!!」
仲間の声で気が付いたがもう遅い、今自分が囲まれているということに。そう、別に敵は律儀に1対1で戦わなくても良い。弱いものが死に、強いものが生きる。それは例え戦場でなくても当たり前のこと。それはどんなに否定しても覆ることのない事実であり理だった。
取り囲んだ金属製の巨大な腕の掌から鋭い光を放ち、村雨に向かって伸びた複数の白い線は肉体を貫き地面を黒く焦がした。
否定できない死に全員が硬直し、空虚な機械音だけが辺りを支配し、何かが焼けた音が鼻にこびりついて離れない。
「むらさめ... くん...?」
誰もが死んだと感じていたが、ぼやけた視界には彼が移っていた。他でもない村雨だ。その透き通った身体に全員が幽霊ではないのか、と疑問と困惑で満ちている。
ようやくだ。ようやくここまできた。長い長いつまらない退屈な虚無と虚構はようやく終わる。
手を貸したとはいえ自力でここまでたどり着いたのだから賞賛の言葉でも送ろうか。
私の拍手が静寂に木霊して全員がこちらに振り向く、あの子も一緒に。皆々は私を見て困惑と衝撃でいっぱいいっぱいか。まあ今回は記録の回廊に干渉されないようにしてあるから村雨雫にとっても初めましてか。
「貴女はもしかして...シエル、様?」
「ふふ、月の魔法王国の生き残りの末裔サークラリア、久しいね。」
「やっぱり...何故ここへいらしたのですか?」
「ああ、彼がようやく本当の力に目覚めたのだから賞賛の言葉でも送ろうと思ってね。」
「本当の...力?」
彼女ら、主にサークラリアが実験的に村雨雫の力を使わせて、その力が分割や分断といった力ではないかという仮定で終わったのは見ていたから知っている。だが村雨雫の力の本質はそんなものではない。何、多少教えたところで結果は変わらない。
「運命を分かつ力、それが君の力さ村雨雫。」
「運命を分かつ力?それってどういうことなの?」
「村雨雫、君が今そうなっているのは、君が死ぬはずだった運命を分かち、死ぬはずだった運命と生きる運命とを両立させて無理やり世界に固定したのが今の君さ。」
「えっと、つまりどういうことなんだ?」
「今村雨雫は、死んでも生きてもいない。けれどこの世界に存在している。先の攻撃で死んだことにするも無理やり生きたことにするも君の自由だ。それは誰にも覆すことが出来ない村雨雫の権利であり権能なんだよ。」




