勇者の替わり
無機質なその人のようなものは、灰色の綺麗な長い髪を揺蕩せ、閉じられた瞳は眠っているようにも死んでいるようにも感じる。
「aFに続きcL、eZと失敗作が多かったが、聖霊ホムンクルスiVのおかげで計画は大幅に進んだ。これが勇者の替わりを務めるエメス製聖霊ホムンクルスoXだ。」
「な!?もしかして、純エメスじゃないの!?」
そのメーリスの言葉に疑問符を浮かべながらラミアは返す。
「え?何が?」
「マズいことになったわね。純エメスでないものは一律灰エメス。そしてそれは神殺しの異名を持つ錬金性精製石、じゃなかったかしら?」
「あの、エクシィさん。もしかして伝承伝わってる?」
「ええ、禁書にね。月の惨劇、古代魔法王国を滅ぼした大洪水―――」
その瞬間、眠っていた暴虐の使徒が目を覚ました。ガラスが割れる音と共に容器から水が溢れ出して俺たちの足元を濡らした。そして辺りを見渡して宣言する。
「にん...げん...忘れはしない...その剣...忌まわしき...黄昏の末裔...憎むべき...破滅の強欲.........黒き書を奪回せよ...そして正しき世界を...あるべき世界を取り戻せ........今こそ全てを消し去り...我が存在にて再興を実行す...」
その瞬間、目覚めたその存在の目が紅く光り周囲には金属製の腕が6つ現れた。そしてその腕から放たれた火球はオニキスに狙いを定めた。堂々とした佇まいとはいえ、戦闘経験のない人には避けるしかないはずのオニキスはその攻撃に微動だにせずにいた。もう火球は眼前にまで迫っており助かるはずがないと思っていた。しかし直撃の寸前で透明な障壁に阻まれた。
「え?」
「ふむ、失敗か。戻るぞ。」
「その子、どうするつもりなの?」
「ああ、私は失敗作には興味がない。好きにするといい。もっともここから無事に帰れたの話だが。」
「ふふ、私は彼らがどうするのか見ていたいものですが...巻き込まれそうなどで今回は遠慮しましょう。」
「それじゃメーリスちゃん、私次の研究があるから。」
そう言って箱庭の4人全員が空間の歪みと共に虚空に消えていった。残された俺たちと捨てられた彼女?は互いに見つめ合った。彼女の瞳には怒りと憎しみ、虚無、そして深い悲しみといった奈落に満ちている。
「マズいわね...来るよ!!」
そうして合図に戦いの火蓋は切って落とされた。




